想イノ終着点
「遂に決勝……き、緊張するね」
選手から観客になったファイターらでごった返す『システム制御室』を抜け出したネス、マルス、リンクの三人。
まだ開始前だというのに舞台裏まで轟く歓声を耳朶に、少年の心臓は激しく波打つばかり。
「うん、そうだね。もしもマリオが負けたら……マスターに事情を聞くことも出来なくなる」
そうとなれば自分達の存在も危ういと、マルスは暗に伝える。
「マリオには頑張ってもらわないと……!」
「大丈夫。きっと勝てるよ」
ね、とマルスは廊下の壁に背を凭れるリンクを見遣る。
リンクはちらりと横目で流したのち、顔を逸らして。
「……ま。おっさんにしてはやるよ、あいつ」
いつもの調子で答えたのだった。
決勝――マリオvsフォックス。
「いや〜まさか俺がここに立つとは思わなかった!」
「奇遇だな、ボクもだ!」
ステージ上に転送されたマリオとフォックスは、そう互いに笑い合う。
「終わったら打ち上げでもするか! 全員でパーっと祝おうぜ!」
「う、打ち上げ⁉︎ それって
「マスター辺りに相談したら出してくれるだろ。知らんけど」
「おいおい」
半眼で突っ込むフォックスに、にししと歯を見せる。
(……そのためにも、まずはマスターと腹を割って話をしないとな)
刹那の間、表情に影を落としたマリオを――フォックスは見て見ぬふりをした。
マルスにも伝えた通り、どのような事情があれど真っ向からぶつかるだけ。
(手を抜いて負けたところで、向こうも納得しないだろうしな!)
顔を上げたマリオと互いに不敵な笑みを浮かべる。
これまで以上に最高な戦いの予感を、ひしひしと感じながら。
Ready Go!
「ほっ!」
開始直後、マリオは手のひらから生み出したファイアーボールで牽制。フォックスは宙に向かって後転。回避しながらも着地と同時に、開脚攻撃。マリオも攻撃をシールドでしっかりと防御しては、後ろ蹴りをフォックスに決める。
「ぐっ……」
呻き怯んだフォックスは一度間合いを取り、ホルダーからブラスターを抜き構える。
カタチから飛び道具だと判断し、さっと懐からスーパーマントを取り出したマリオは、赤の攻線をマントで跳ね返すも。直撃したフォックスは怯むことなく、
着実にダメージを受ける今の状況を打破すべく――マリオは間合いを詰め、スライディング攻撃。華麗に宙へと避けたフォックスは着地後、キックからの両手を地面につけた反動を利用した回転攻撃をマリオにお見舞いする。ふらりとよろめいたのを見計らい、首元を掴んではステージの床に叩きつけ、ブラスターの追加攻撃。
「いってぇ……」
なんとか猛攻を振り切ったマリオだったが、与えられたダメージ数は痛い。
「どうしたマリオ! 俺はまだまだいけるぞ!」
「ボクだってまだまださ!」
したり顔で構えるフォックスに、歯を見せて返す。
試合開始から僅か30秒。白熱する勝負に、彼らが知らぬところで観客席は大いに沸く。
それは無論、試合を見守るファイター達も例外ではない。