想イノ終着点
Game Set!
『Bチーム二回戦目を制したのは、リンク選手〜!』
湧き上がる歓声が雑音に聞こえ、勝者であるはずのリンクは眉を顰めた。
早々にステージから立ち去ったリンクを、二回戦目相手だったゼルダが追いかける。
「リンク!」
「……僕、次の試合があるんだけど」
「何をそこまで焦っているのですか」
リンクは小さく息を呑み、沈黙する。
「……別に」
やがて飛び出した返答にゼルダは胸元をグッと握り締めた。
「私では……力になれませんか?」
「……」
「やはり恨んでいるのですね。……あのときのこと」
「関係ない」
ゼルダに顔を向けたリンクは、いっそ攻撃的なまでに鋭い眼差しを向ける。
殺伐とした雰囲気の中、「リンク〜」と能天気な声が響く。
小さな手足を動かして走ってきたのはカービィだ。
「何。今取り込み中……」
「もう試合はじまるよ!」
と、リンクの頭に飛びついたカービィに思わず「うおっ」とよろめく。
「し、試合……?」
「うん! ぼくとリンクの試合!」
「……は?」
第3試合、Bチーム――リンクvsカービィ。
「やったやった! リンクと試合だ〜!」
開始前だというのにステージ上で踊り跳ねるカービィに苛立ちが募る。ただでさえ、先のゼルダの指摘がリンクの気を逆撫でているというのに。
「あーもう、うざったいなぁ! もっと真剣になりなよ桃玉!」
「だって嬉しいんだもん! 『前』はそんな雰囲気じゃなかったし!」
『前』と言われ、リンクはハッと思い出す。
故郷――ハイラルを投影したエリアで、カービィ、マリオ、ヴィルヘルムの三人が自分を探しにきた頃のことを。
(改めて思うと……僕はこんな馬鹿みたいな奴に負けたんだ……)
思い返せば返すほど、怒りのゲージがみるみるうちに上昇。
「……カービィ」
「うん?」
俯いていたリンクは顔を上げ、叫ぶ。
「今回は僕が勝つッ!」
鬼気迫るリンクの表情に目を丸くしながらも、カービィは満面の笑顔で頷いた。
「ぼくだって負けないよ〜!」
Ready Go!
「ふっ!」
開戦直後。リンクは、取り出した爆弾の導火線に火をつけ投げる。
ダッシュしていたカービィは素早く停止。口を大きく開け、爆弾を吸い込んだ。
「な、え⁉︎」
口の中で爆発しないかという心配も杞憂に過ぎず、吸い込まれた爆弾は星型の弾になってカービィの口から吐き出された。
星型弾を構えた盾でガードしたリンクだったが、相変わらず無茶苦茶なカービィの戦法にはぐぬぬと舌を巻く。
「せいやっ!」
「わあっ!」
地を蹴り疾走しながらの叩き割り。小さく飛び跳ねたカービィはすぐに体制を整え、「やあっ!」と飛び蹴り。
体術と剣術による攻防戦が長引く最中。リンクの攻撃を回避したカービィは口いっぱいに空気を含み、空中に退避。
逃すか、とリンクは腰を低く落とし、横一文に構えた剣を高速で回転させる大技――【回転斬り】で空中に上昇するも。
「えいっ」
もちもちな見た目をしたカービィが突如鋼鉄な岩へと変化。真下にいるリンク目掛けて落石する。
「ぐあっ!」
技直後の硬直からリンクは回避することも出来ず、直撃。
ズドンッ! と地面を揺らしたカービィがストーン状態を回避するや否や怒号を飛ばす。
「危ないだろその技‼︎」
「へっへ〜ん! なんでもありだよ〜!」
煽られ耐性のないリンクはこめかみに青筋を浮かべては「へぇ〜?」と笑う。
「そんなこと言っていいのかな⁉︎」
「ぎゃっ」
取り出したのは以前の野良試合でも使用したフックショット。鎖のついた鉤爪でカービィを捕らえたリンクは引き寄せるとともに、地面に打ちつけヒジ打ち。
「でやあああああああ‼︎」
「うわあ⁉︎」
軽く宙に浮いたカービィに今度こそ【回転斬り】で追い討ちをかける。
最早リンクの意地とも思える猛攻にカービィは劣勢を強いられ――勝負の結果は。
Game Set!
『Bチーム三回戦目を制したのは、リンク選手〜!』
「はあ……はあ……」
カービィが軽くて良かったと、肩で息をするリンクは切に思う。やはりカービィは性格やファイターとしても苦手だ。
「おめでとうリンク〜!」
ステージに復帰したカービィが笑顔で拍手を送る。
全く悔しがる素振りもないカービィに呆れるも。傍らに膝を立てて。
「ありがとう」
初めて、感謝の言葉を送った。
カービィはぽかんと呆けていたが、やがて目を輝かせて破顔。
「うんっうん! リンク、だいすきー!」
「うわっ⁉︎ くっつくなあっちいけよ!」
突き放そうとするリンクに「やだね〜」と頬を寄せるカービィ。
かくして、マスターに挑む権利を与えられた四人のファイターのひとり、リンクは準決勝へと進む。