想イノ終着点

6:想イノ終着点【9】


 第2試合、Cチーム――ネスvsフォックス。


「よーし、ネス! 子供であろうがここに立っている以上は同じファイター! 手加減なしで行くぞッ!」
「う、うんっ」

 腕を軽く回し前後に体を揺らしつつ構えるフォックスに対し、ネスはガッチガチに緊張していた。

「なんだネス、随分と固いじゃないか。ほら、リラックスリラックス」

 今この時ばかりは何も知らないフォックスを恨めしくさえ思う。
 だが、フォックスの言う通り肩に力が入り過ぎては動けるものも動けない。
 前回の試合相手――体格差が然程変わらないピチューならともかく、今回は倍以上にある。少しの油断が敗退に繋がるのだ。
 心を鎮め、よし、と目を開ければ。好戦的なフォックスの眼差しと混ざり合う。


 Ready Go!


「うわぁ⁉︎」

 開幕早々。フォックスの姿が掻き消え、自身をすり抜けたかと思ったときには既にダメージを受けていた。

「まだまだ行くぞ!」

 と、宣言通り連続しての【フォックスイリュージョン】。もはやボールの如く飛び跳ねていたネスはキリッ眉を釣り上げ、空中回避。再発しようとするフォックスに、腕を大きく引いては。

「【PKファイヤー】!」
「あっち!」

 小さな炎を投げれば、技の発動中で無防備だったフォックスに見事直撃。技をキャンセルされ動けない隙に間合いを詰め、バットを構える。

「やあっ!」

 カキーンッ、とスイングをもろに受けたフォックスの体が宙に浮く。すぐに体制を整えたフォックスは、「なるほどな」と頷く。
 ――シード権者を除く勝者同士は、互いの技や攻撃の癖を知らない。いかに適切な対処を出来るかが鍵となる。
 フォックスは腰のホルダーから慣れた手つきで銃を構え、赤色の攻線をネスに向けて発射する。
 初撃を食らったネスは怯むほどの威力はないと知るも、ダメージであることに変わりはない。速射される攻線に、ネスは両手を前後へ。

「【サイマグネット】!」

 自身を中心に展開された青の障壁が攻線を吸収。ネスのダメージが僅かに回復する。
 フォックスは目を見開くとすぐにブラスターを戻し、接近する。【サイマグネット】を解除したネスは再び【PKファイヤー】を放つも。

「――そうだろうな!」
「うわっ! あちっあちっ」

 急停止したフォックスが六角形の障壁を発動。【PKファイヤー】は跳ね返され、発動者であるネスに直撃。

「なかなか面白い技だが、俺も負けてないぜ!」

 ステージを縦横無尽に駆け回るフォックスに終始劣勢を強いられたネスは――


 Game Set!


『Cチーム二回戦目を制したのは、フォックス選手〜!』
「よし!」

 場外へとぶっ飛ばされたネスはフォックス勝利のアナウンスに、ずぅーん、と首が取れる勢いで俯いたままステージに帰還。

「お。お疲れネス!」
「お、お疲れ様……」

 爽やかなフォックスの笑顔がさらにネスを追い込む。

(ま、負けちゃった……これじゃあマスターさんとの約束が……)
「楽しかったぜ、ネス。また勝負しような!」

 そうフォックスがネスに拳を差し向ける。
 少年は変わらず気を落としていたが、純粋に楽しんでいる様子のフォックスに微笑をこぼした。

「また……必ず!」

9/9ページ