想イノ終着点

6:想イノ終着点【8】


 第2試合、Dチーム――マルスvsサムス。


 カァンッ! と甲高い金属音と火花が視界を彩る。
 神剣の刃は堅吾なスーツによって弾かれ、アームに搭載された銃口のチャージ弾がマルスを襲う。
 体を捻りその場で回避した王子に肉薄するサムス。攻撃範囲ギリギリまで追撃を引き付ければ、持ち前のカウンターで反撃した。
 マルスにとって、サムスが装備するパワードスーツは未知の物体。繰り出される数々の飛び道具が『魔法』の特性と異なり、始めこそ苦戦したものの、秒刻みで対応していく。

「うっ」

 一体どんな仕組みなのかは不明だが、サムスの体が急激に縮小。ポンッと投げ出された爆弾に視界を奪われる。うめき、たじろぐマルスだったが、思考を巡らす。
 マルスはカウンターではなく、後ろへの退避を選んだ。一方のサムスは腕を引き強烈な右ストレートで勝敗を決しようとしていたが――カウンターで対応してくるという予想は見事に外れ、空振り。
 攻撃不発の硬直時間を利用し、剣を片腹に構えたマルスによる真向斬りがサムスに直撃。この一撃がサムスの蓄積ダメージに響き、バーストした。


 Game Set!


『Dチーム二回戦目を制したのは、マルス選手〜!』

 湧き上がる歓声を耳にして始めて勝利の実感を得たマルスは、息を吐くと同時に肩から力を抜いた。
 非常に接戦であり、もしサムスのスマッシュ攻撃がヒットしていたなら――バーストしていたのは自分だ。
 鞘にファルシオンを納め、観客らに微笑をこぼす。

『まさか読み違えるとは悔しいな。だが、久しぶりに肝が冷えたな』

 ステージ上に戻ってきたサムスはスーツ越しに声を掛ける。

「嬉しいです。あなたのような方にそう言ってもらえるのは」
『……癪だが、この「大乱闘」の良さを感じたな。次こそリベンジする』
「こちらこそ。お待ちしています」


☆★☆


「手に汗握る戦いでしたね、クッパさん!」
「ウ、ウム」

 『システム制御室』。
 興奮気味のロイに、クッパはしぶしぶといった具合に頷く。どうであれ敗者組も楽しんだ様子。
 しかしながら。マルスとサムスの試合に震える人物がひとり。

(ああああああんな凄い人と戦うの⁉︎)
「よっすルイージ」
「ぎゃああああああああ⁉︎」

 耳を劈く本気の絶叫。兄マリオは弟ルイージの反応に「なんだなんだ」と目を細める。

「に、兄さんじゃないか! びっくりさせないでよ!」
「いやしてねーし……」

 呆れるマリオを前に我に返ったルイージは、あれ、と首をかしげる。

「兄さんもう試合終わったの?」

 ルイージはいわゆるシード権者であり、二回戦目がスキップになった。
 対してマリオはついさっき二回戦目を始めたばかり。眉を曲げた兄は「まあな」と返す。

「兄さんが勝ったの?」
「おう」
「すごいや! 兄さんなら優勝も夢じゃないね」
「お前もだろ、ルイージ」

 勝者はマリオ。が、どこか腑に落ちない勝利だった。

(ガノンドロフが手を抜いたように思うんだよなぁ。単に試合がつまんないのか理由はわかんねぇけど)

 首筋を手で撫でるマリオはルイージに心配され、「なんでもない」と返す。理由はどうであれ勝ちは勝ちだ。

「んじゃ、応援してるぞ。ルイージ」
「えぇぇぇ……うー、行ってくるよ……」

 気が進まない弟を優しく見送り、マリオは次なる戦いに備えて体を休めることに。

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