想イノ終着点
第2試合、Dチーム――マルスvsサムス。
カァンッ! と甲高い金属音と火花が視界を彩る。
神剣の刃は堅吾なスーツによって弾かれ、アームに搭載された銃口のチャージ弾がマルスを襲う。
体を捻りその場で回避した王子に肉薄するサムス。攻撃範囲ギリギリまで追撃を引き付ければ、持ち前のカウンターで反撃した。
マルスにとって、サムスが装備するパワードスーツは未知の物体。繰り出される数々の飛び道具が『魔法』の特性と異なり、始めこそ苦戦したものの、秒刻みで対応していく。
「うっ」
一体どんな仕組みなのかは不明だが、サムスの体が急激に縮小。ポンッと投げ出された爆弾に視界を奪われる。うめき、たじろぐマルスだったが、思考を巡らす。
マルスはカウンターではなく、後ろへの退避を選んだ。一方のサムスは腕を引き強烈な右ストレートで勝敗を決しようとしていたが――カウンターで対応してくるという予想は見事に外れ、空振り。
攻撃不発の硬直時間を利用し、剣を片腹に構えたマルスによる真向斬りがサムスに直撃。この一撃がサムスの蓄積ダメージに響き、バーストした。
Game Set!
『Dチーム二回戦目を制したのは、マルス選手〜!』
湧き上がる歓声を耳にして始めて勝利の実感を得たマルスは、息を吐くと同時に肩から力を抜いた。
非常に接戦であり、もしサムスのスマッシュ攻撃がヒットしていたなら――バーストしていたのは自分だ。
鞘にファルシオンを納め、観客らに微笑をこぼす。
『まさか読み違えるとは悔しいな。だが、久しぶりに肝が冷えたな』
ステージ上に戻ってきたサムスはスーツ越しに声を掛ける。
「嬉しいです。あなたのような方にそう言ってもらえるのは」
『……癪だが、この「大乱闘」の良さを感じたな。次こそリベンジする』
「こちらこそ。お待ちしています」
「手に汗握る戦いでしたね、クッパさん!」
「ウ、ウム」
『システム制御室』。
興奮気味のロイに、クッパはしぶしぶといった具合に頷く。どうであれ敗者組も楽しんだ様子。
しかしながら。マルスとサムスの試合に震える人物がひとり。
(ああああああんな凄い人と戦うの⁉︎)
「よっすルイージ」
「ぎゃああああああああ⁉︎」
耳を劈く本気の絶叫。兄マリオは弟ルイージの反応に「なんだなんだ」と目を細める。
「に、兄さんじゃないか! びっくりさせないでよ!」
「いやしてねーし……」
呆れるマリオを前に我に返ったルイージは、あれ、と首をかしげる。
「兄さんもう試合終わったの?」
ルイージはいわゆるシード権者であり、二回戦目がスキップになった。
対してマリオはついさっき二回戦目を始めたばかり。眉を曲げた兄は「まあな」と返す。
「兄さんが勝ったの?」
「おう」
「すごいや! 兄さんなら優勝も夢じゃないね」
「お前もだろ、ルイージ」
勝者はマリオ。が、どこか腑に落ちない勝利だった。
(ガノンドロフが手を抜いたように思うんだよなぁ。単に試合がつまんないのか理由はわかんねぇけど)
首筋を手で撫でるマリオはルイージに心配され、「なんでもない」と返す。理由はどうであれ勝ちは勝ちだ。
「んじゃ、応援してるぞ。ルイージ」
「えぇぇぇ……うー、行ってくるよ……」
気が進まない弟を優しく見送り、マリオは次なる戦いに備えて体を休めることに。