想イノ終着点
初戦、Aチーム2班――マリオvsロイ。
「はあっ!」
相手の懐に潜り込み大胆な振る舞いで剣を振るう少年。対する相手も『よく来てくれた』と言わんばかりに少年の太刀を回避、弱攻撃によるコンボを撃ち込んでいった。
「イ〜ヤッ‼︎」
「うぐっ」
最後には強烈な一撃――スマッシュ攻撃をもろに受け、若き獅子ロイは蓄積ダメージ量が多かったのも相まって場外へ。
Game Set!
『Aチーム2班を制したのは、マリオ選手〜!』
マスターが外部からお招きしたという司会のアナウンスと、観客席からの歓声が耳朶に響き渡る。
「ふぅ、なかなか強かったぜ」
「ありがとうございました、マリオさん」
「おっ、ロイ。こちらこそ良い試合だった」
帽子を外し汗を拭うマリオのもとへ、ステージに復帰したロイが合流。
今し方帽子を被り直したマリオはロイと固い握手を交わし、観客らに向け『ありがとう』と手を振る。
キリのいいところでステージを退場。二人は『システム制御室』へと帰ってきた。
「お疲れ様でした。マリオさん、ロイ様」
「おう」「はい」
出迎えたヴィルヘルムに笑みを返す。
「『大乱闘』はいかがでしたか?」
「とても貴重な経験でした。自分の至らぬ部分を深く感じましたが、それ以上に楽しい時間でしたね」
ロイの向上心が高い意見にマリオは感嘆する。
「すげーなぁ。ボクはそこまで考えずに楽しんじまった」
「ええ、ハッキリと感じました。あなたと楽しめて良かったです」
「こちらこそ」
互いに讃えあう二人の間を、失礼ながらとヴィルヘルムが割って入る。
「お二人ともありがとうございます。後ほどまた、詳しくお聞かせください」
「すみません。ではマリオさん、次の試合も頑張ってください」
「ありがとな〜」
『システム制御室』から立ち去るロイにひらひらと手を振るマリオ。
手元の《スマパッド》を確認していたヴィルヘルムは、「マリオさん」と名を呼ぶ。
「次の試合は――」
第2試合、Aチーム――マリオvsガノンドロフ。
(……リンク、悪りぃ。先に謝っとくわ)
「なにをジロジロと見ておる」
「いや。何も。」
マリオより先にステージで待ち構えていたガノンドロフは、フンと鼻で笑う。
「――マスターとの口約束のことか?」
「!」
瞠目したマリオをしたり顔で見下すガノンドロフ。
目付きを鋭くさせた彼を背に、男は指定された位置につく。
何も語らない、何も追求されないことに違和感。
(……いや、今は試合に集中だ。ボクは勝たなきゃいけないんだから)
頭を振って今ひとたびガノンドロフと対峙する様は、さながら勇者のよう。
Ready Go!
開戦の合図が高らかに鳴り響き、脇目も降らず発走するマリオを前にガノンドロフは拳にパワーを凝縮。
全てが初見だが大体察したマリオは足を踏み締め、空中回避。ガノンドロフは勢いよく走り込みアッパーカットするも、空中回避されたことで不発。通常の回避であれば無傷でなかっただろう。
ふう、と一息つくマリオと忌々しげなガノンドロフの視線が交差する。
(白熱な試合の予感……!)
そんな彼らの事情を存じぬロイは瞳を輝かせ、『システム制御室』から二人の試合を観戦していた。
「フン……なかなかやるじゃないか」
「クッパさん」
ドスドスと地を鳴らし隣に並んだ、亀の大魔王クッパを見上げる。
「クッパさんも敗退ですか?」
「勘違いするな! 今回はあのペラペラなヤツに勝ちを譲ってやっただけだ」
「ああ、ゲムヲが相手でしたか」
クッパが割り振られたのはCチーム。ゲムヲ、と名付けられた彼の攻撃は予測できないものが多く、対応出来なかったのだろう。
苦笑を浮かべるロイを見ることなく、クッパは腕を組み眉間にシワを寄せる。
「キサマと仲が良い男はどうだ」
「マルスさんのことですか? 彼なら今、サムスさんとの二回戦目に突入していますよ――」