想イノ終着点
「ヴィル! ヴィル〜!」
カービィはそのまん丸な手で扉を叩くも、部屋の主たるヴィルヘルムの返答はない。
募る焦燥に駆られるがままドアノブに飛びつき無断入室。彼の姿を探して回る。
「……カービィ? ど、どうしたの?」
先に見つけたのはヴィルヘルムのほうだった。
僅かに声を上擦らせ、小さな来客者に目を丸くしている。
「あのねっ、ヴィルに聞きたいことがあるの」
「待っ――ゔ」
か細く息を紡いでいたヴィルヘルムが突然、自身の口元を掌で覆う。
力を失い膝から崩れ落ちた少年は必死に耐え忍び、カービィはバケツのようなものがないかを探し始めるが。
「だ、大丈夫……それで?」
逆流したそれらを無理に戻したヴィルヘルムは笑みを繕い、カービィに促す。
「あ、……」
カービィは――問いかけを躊躇った。この弱り切っている少年の心に負担をかけるような問答を投げてもいいのか。
躊躇した末。一挙一動を見逃さぬよう気を遣いながら、問う。
「ほんとうに昨日のこと覚えてないの……?」
「何が?」
「その、ヴィルが……ヴィルが……」
――殺された、なんて。
(言っていいのかな……)
やはり口篭ってしまう。
俯いたまま口を閉ざしたカービィを、ヴィルヘルムは立ち上がるがてら両の手で、自身の顔の高さにまで持ち上げた。
「大丈夫。心配してくれてありがとう」
そのまま腕に抱えたヴィルヘルムは自室を後にし、カービィを床にそっと降ろす。
「僕、そろそろ行かないと。明日の準備もあるしね」
じゃあね、と手をひらりと翻し。ヴィルヘルムはカービィを置いて先へと進む。
遠ざかる背に、カービィは足を踏み込み力一杯叫んだ。
「明日! 明日の大乱闘! ぜぇ〜〜〜ったい成功させようね‼︎」
振り返ったヴィルヘルムは思わぬ声量に瞠目。ややあって、それがカービィなりの“気遣い”であると気づき、目尻を落とす。
「ありがとう、本当に。……君達には、助けられてばっかりだね」