Super Smash Bros. - Cross × Tale -
「――お初にお目にかかります。カービィ様」
澄み渡る蒼き瞳をぱちぱちと
「僕の名前はヴィルヘルム・クロイツ。これからカービィ様が所属する【乱闘部隊】のマネージャーを務めさせていただきます」
呆けていたピンクの丸い生物――もとい、プププランドのヒーロー『カービィ』に少年は腰を折る。
「……あの、カービィ様?」
がしかし。あまりにも反応がないカービィに、ヴィルヘルムは眉をひそめる。
ややあって彼方へ飛ばした意識を引き寄せたカービィは、無防備なヴィルヘルムの胸に飛び込んだ。
「ぼくのおともだちになってくれる?」
お人好しで食いしん坊な正義のヒーロー。
いつからだったのかな。
――僕、カービィが美味しそうにご飯を食べてる姿を見るの好きなんだ。
いつの間にか『本心』を口にしてしまうほど、彼らに心を許したのは。
「ダメーーーーーーー!!!!!!!」
「うぐ」
自らの
躊躇のない『頭突き』をかましたカービィはヴィルヘルムを巻き込んで後方へと転がり、彼らを攻撃範囲内に捉えていた男の左手は宙を切り地面へ。衝撃で廊下の床が大きく抉れた。
「……あーあ、『また』邪魔されちまった」
ぐわんぐわんと揺れる視界を首を振ることで平時に戻す。
座り込み俯くヴィルヘルムの前に立ったカービィは勇ましく眦を釣り上げる。
「ぼくのともだちをイジメるな!」
「……友達ィだって? ソイツと?」
「そうだよ! ともだちだよ‼︎」
それの何が悪いのさと口を尖らせる小さき生き物に――男は哄笑した。
「だったら尚更邪魔すンなよなぁ? コッチは、ソイツの願いを叶えてやろうとしてンのに」
「ねがい……?」
「そ」
男は頭の後ろで両手を組み、ひとつふたつと靴音を響かせる。
「しっかしアンタも物好きだよなぁ。『死体も同然』の男を友達だなンてよぉ」
「え……」
思わず振り向くも目と目が合わさることはない。
沈黙――それが意味することを、カービィも理解してしまった。
死にたい、という願い。
死体も同然、という事実。
「というわけで」
「うわっ」
ひょいっと男に摘まれたカービィは軽く投げ飛ばされる。持ち前の柔らかさでダメージはほとんどないが、ヴィルヘルムの前から引き剥がされてしまう。
ハッとして戻ろうとするも。
――グチャッ。
果物を握りつぶしたかのような音に、鮮血が爆ぜる。
糸の切れたマリオネットの如く――心の臓を抜き取られたヴィルヘルムの体が床に落ちる。
口元から笑みを消した男は――血に塗れた左手を見つめ、嘆息。
「これでもまだ、死なねーのかよ」
脳内を白く染め上げるカービィは次の瞬間。ありえない光景を目の当たりにする。
ぼとぼとと男の手のひらから溢れる心の臓が――生き物のようにびちびちと動き始めたのだ。
向かうはヴィルヘルムの身体。
飛び散った肉片と共に、空いた穴に自ら飛び込んでゆく。
そうして少年の身体は――何事もなくむくりと起き上がる。
「ほら、言った通りだったろ」
瞳から光が消え失せた少年を親指で指す男は、戦慄するカービィにそう嗤ってみせた。
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