Super Smash Bros. - Cross × Tale -
「あれ、カービィ。体調悪い? ご飯いつもより少ないね」
「えっ」
夕食時、同じ大食い仲間のヨッシーにそう話しかけられたカービィは「ええっと」と目を泳がせる。咄嗟に上手い言い回しが思いつかないピンク玉に、ヨッシーは不思議がるばかり。
「何かあるならヴィルかマスターに……」
「だ、大丈夫だよっ! お腹いっぱいなだけだから」
「そう? ボクがいうのもあれだけど、つまみ食いもほどほどにね」
「う、うん。ありがとう……ご馳走様でしたっ!」
食べ終えた食器を料理人達に返し、カービィは逃げるように食堂をあとにする、寸前。
「うわわわわわわ」
突然の浮遊感に襲われ、世界が反転。
――実際には、捕まえたマリオがカービィの足を掴んで持ち上げていただけだが。
「あれれ? どーしてマリオ逆さまになってるの?」
「お前が逆さまなの」
そのまま乱雑に赤い帽子の上にカービィを乗せ、マリオは歩き出す。
行く当てもなく月光が照らす回廊を歩くごとに離れていく喧騒。
乗せられるがままのカービィはやがて、独りごちる。
「……ぼく、なにも知らなくて。なにも気づいてあげられなかった」
立ち止まり軽く見上げたマリオは、大きな白い軍手でカービィをぽんぽんと軽く叩いた。
「誰だって始めはそんなもんさ。だろ? 悪いと思ってんなら謝ればいい、何度でもな」
「……マリオって悩みなさそうー」
「お前に『だけ』は言われたくねぇ!」
わなわなと拳を震わせるマリオに、カービィはようやくいつもの笑みを浮かべる。
「ありがとう」
「おう」
くすくすと笑い合った、その時。
二人のすぐ近く――正解には、回廊の『外』に落下する人影が見えた。
すぐさま柵から下を覗けば、土埃が立ち昇る中に倒れ込む人物達。
「ネス! ヴィル!」
庇うようにヴィルヘルムがネスを抱きしめている。この高さからでは無事か否か判別ができない。
マリオの頭を蹴り飛ばし急降下するカービィのあとを、頭を振りかぶりフラつきを解除したマリオも壁を伝い降りていく。
「ゔ……ゔゔゔゔ〜……」
「ネス……? ネス、大丈夫⁉︎」
ヴィルに抱き抱えられたままのネスが苦しげに唸る。カービィの叫びに――それまで意識を失っていたヴィルヘルムはかっと目を開き、ネスを抱え起こす。
「ヴィル! ネスどうしちゃったの⁉︎」
「それが僕にも分からないんだ。突然苦しみ出して……」
「前後で変なことがなかったか?」
遅れて参上したマリオに問われ、ヴィルヘルムはネスとの会話を想起した。