Super Smash Bros. - Cross × Tale -
部屋から部屋へと続く扉を、勘頼りに進む。
とある扉を開ければ――寝衣姿のヴィルヘルムが目を皿にした。
「カービィ……? どうしてここに?」
「ご飯食べるかな〜って……えへへ」
空笑いを浮かべるカービィに、少年は目尻を落とす。
「ありがとう。でもそれはカービィが食べ――」
ぎゅるるるる。
台詞を遮るかのように鳴り響いたのは腹の虫の音。カービィではなく、ヴィルヘルムから聞こえてきた。
腹部を抑えた少年に、ピンクの生物はぱあっと破顔。
「やっぱりお腹空いてたんだね! あったかいうちに食べてよ!」
「いや、でも……」
「いいからいいから」
尚も渋るヴィルヘルムに迫り、カービィは強引に匙を取らせた。
ややあって抵抗を諦めたヴィルヘルムは、ベッドの縁に腰掛け膝の上におぼんを置く。
「……ひとくちだけね」
と、スープをひとくち分掬い、口に運ぶ。
傍らで「美味しいよね⁉︎」と嬉々として反応を求めるカービィに、「そうだね」と軽く頷いた――直後。
「ゔっ」
「ヴィル⁉︎」
突如として口元を覆い色を失うヴィルヘルム。衝撃で朝食の数々が床に散らばるのに目もくれず、カービィはヴィルヘルムに飛びつく。
「ご飯美味しくなかった⁉︎」
口元から手を離せずにいるヴィルヘルムは涙を目に浮かべながら首を横に振る。心当たりが全くないカービィがただただ困惑していれば――とうとう逆流してきた胃液が勢いよく放たれた。
「え……?」
放たれた吐瀉物が『甲高い音』を響かせ、床を転がる。
ヴィルヘルムの口から吐き出されたのは――まとまりのない『金属』。
驚愕し言葉を失うカービィの視界に、動揺を隠せないヴィルヘルムの姿が映る。
「……いて」
「ヴィル……⁇」
「出て行ってッッ‼︎」
彼らしからぬ強い口調に、カービィは思わず体をびくりと震わせた。
はーっはーっと獣の如く荒い呼吸を紡ぐ彼を前にして言葉をかける余裕はなく――小さな手足を動かして退室する。
「……ごめんね」
呟かれた懺悔の言葉が届くことはない。