Super Smash Bros. - Cross × Tale -

5:穢れなき真実と穢れた王子【4】


 ヴィルヘルムが休養する中。【乱闘部隊】(仮)のメンバーは全員招集をかけられ、『システム管理室』に集合していた。
 集めた当人のマスターは一同と向き合い、目元を緩める。

「皆を集めたのは他でもない。いよいよ本題である『大乱闘』の日程が決定した」

 言いながら背後に並ぶパネルを操作。モニターの画面を切り替える。

「開催は明後日の昼過ぎから順次行う」
「マスター。質問していいか?」
「ん? ああ、どうぞ」

 軽く挙手したのはフォックス。話の腰を折ってしまったことを申し訳なさげにしつつ、質問を行う。

「『大乱闘』は日程を決める必要があるのか? その言い方だと、自由に出来ない認識になるが……」

 マスターは指の腹を顎に添え、ふむ、と目を丸くした。

「『大乱闘システム』は大規模なものでな、私一人で操作をするには限界がある。補佐をしてくれるスタッフが必要となるのだ」

 それに――続け様に放たれた言葉が、彼らに激震を走らせた。

「『大乱闘』は王国民も観戦に来る。これから先、一大競技として大々的に売り出すつもりだ」
『……』
「……おや?」

 静寂に包まれた空間で、二分された温度差。
 向けられる数多の白眼視に小首を傾げたマスターは思案し、やがて結論へと至る。

「ああ。言ってなかったか」
『『『言ってない‼︎』』』

 数人のツッコミが耳朶を打つ。「すまないすまない」と宥められたことで静かになったが、向けられる視線は痛々しい。

「そうか。ヴィルもその事については説明していなかったのか」
「人に見られながら戦うの……?」

 不安げなルイージの言葉を、いいやと首を振って否定。

「観客の姿や声は、試合中は見れないようになっている。まあ……試合前と後は別だがな」
「良かったじゃんルイージ」
「そ、そうかなぁ……」

 さて、の掛け声で話を元の軸へと戻す。

「明後日に開催される『大乱闘』だが、トーナメントとする。初陣はやはり、1on1が好ましいからな」

 切り替わった画面にトーナメント表が映し出される。トーナメント表は、A〜Dの四つのグループに振り分けられていた。
 一同はそれぞれ初戦の相手と言葉を交わす。

「マリオさん。初戦宜しくお願いします」
「ロイとだったか。こっちこそ宜しくな」
「ミュウツーとだ〜! わ〜い!」
『……』

 『Aグループ』のマリオはロイと、『Bグループ』のカービィはミュウツーが初戦の相手となった。

(ガノンドロフ……お前だけは、絶対僕が……)

 薄笑いを浮かべるガノンドロフを横目に、彼とは異なる『Dグループ』始まりのリンクは密かに闘気を滾らせた。

「――最後に、一つだけ伝えておこう」

 マスターの声が響き、一同は一斉にそちらを見遣る。

「今回の『大乱闘トーナメント』を制した勝者には、ぜひとも【乱闘部隊】のリーダーを任せたい」

 眉を顰める者も少なからずいるのを目に、小さく点頭して。

「もちろん断ってくれて構わない。期間も決めてもらっていい。だが、『リーダー』という立ち位置を必要としているのは覚えてほしい」

 にこりと笑い、マスターは話を終えた。

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