Super Smash Bros. - Cross × Tale -
遠方より数多の輝きを連れた宵闇が、暁と混じり合う頃合い。
暖色のランプが灯る食堂では、ファイター達に夕食が振舞われていた。
喧騒と食器の音が満ちる空間で口々に交わされる話題は、やはり『大乱闘』の話。急用を済ませ合流したマスターが食事の乗ったトレーを手に椅子を引くと、周りを囲うファイターに声を掛けられる。
「「マスター(さん)お疲れ様」」
「ああ。ありがとう」
マスターの隣――一際座高が高い特別仕様の椅子に座る――ポポとナナは仲良く温かな食事を頬張る。二人とも防寒着は身につけていない。
ナスやカブ、ニンジンやキャベツといった野菜メインの食事に舌鼓を打っている様子。
「マスターさん、今日の『大乱闘』おもしろかった!」
「たのしかったー!」
「それなら良かった。これから、もっと楽しくしていこう」
微笑みを返したマスターが食事を口にしようとした時、今度は別方向より声を掛けられる。
「マスター、お疲れさん」
「餓鬼のほうはどこ行った?」
フォックスとファルコのペアだ。ファルコの問いにマスターは「自室に戻ったはずだ」と返答。
「食事を摂るのが苦手な子だから」
「フーン……。にしてもまるで、自分の子のように言うんだな。隠し子か?」
「おいファルコ」
「ははは、そんな歳に見えるかい?」
「「「「……。」」」」
「黙らないでくれ」
ポポとナナの二人も食事の手を止め沈黙。気まずい雰囲気にマスターは困り顔を浮かべた。
「訳あって面倒を見ていてね。それなりに長い付き合いだよ」
「義父というところか」
「そうなるのかな。父と呼ばれたことも、呼べと言ったこともないけれど」
優しく眦を下げるマスターが皆の視線を受けつつ、スープを掬う。――その時。
「マスター助けて‼︎‼︎」
食堂の出入口から桃色の物体――カービィが悲鳴にも似た叫び声を口に、血相を変えて転がり込んだ。
騒然とする食堂。助けを求められたマスターはすぐさま駆け寄る。
「どうしたんだカービィ」
「ヴィルが……」
「ヴィル? ヴィルがどうした?」
「ヴィルが『死んじゃう』!」
轟いた言葉にマスターが瞠目する中、食堂を飛び出したのはリンクだった。
「リンク! 待ってください!」
遅れてゼルダもその後を追い、駆け出す。
自分達も。と正義感の強い彼らが離席しようとした時、ぱんっと手の平を叩く音が彼らの動きを止めた。
「……すまないが、皆はここで待機してくれ。後ほど連絡する」
両手を合わせた状態で告げたマスターは、服の裾を翻し足早に立ち去る。
高い身体能力とフックショットを巧みに駆使しながら、リンクは城の地下へと向かう。
鼻腔につく鉄の匂い。辿ればそこは、厳格な雰囲気の教会。地下でありながらも地上の光が差し込み、聖女が形どられたステンドグラスは筆舌に尽くし難いほどの美しさ。
そして中央には、とても大きな十字架が――。
「……っ⁉︎」
両開きの扉を開け放ったリンクはあらん限りに双眸を見開く。
そこに在ったのは――十字架を背に、銀の光沢を放つ剣に心臓をひと突きされた――ヴィルヘルムの成れの果てだったのだ。