Super Smash Bros. - Cross × Tale -
「兄さん、これちょっと見てよ」
「んあ〜?」
大魔王に攫われた姫を取り戻す冒険から――自宅へと帰ってきたひとりの男は、冒険を終えた反動で酷くだらけていた。
テーブルに突っ伏していた顔を上げる兄の姿に、弟は呆れながらブラシを手に取る。
「もう兄さん、大変だったのはわかるけれど寝癖ぐらいはちゃんとしてよね。キノピオ達が見たらびっくりしちゃうよ」
「あ〜はいはい……」
半分夢の世界に浸っている男『マリオ』のだらしない姿を、スーパースターやら何やらと慕うキノピオ達が見ればびっくりすることだろう。いっその事姫に見せてやろうかと、弟の『ルイージ』は兄の寝癖を直しながら考える。
「……はい、できたよ。あ、そうだそうだ」
ルイージは思い出したように一枚の封筒を差し出した。真っ白な封筒を、赤い蝋印で封をしているものだ。
「それボクら宛なんだけど、差出人の人知ってる?」
マリオは『マリオブラザーズ様へ』と記された表面を裏返し、差出人の名前に目を細める。
「『マスター・H・ドロワット』……うん」
「えっ知り合い?」
「知らないな」
「思わせぶりな反応しないでよ」
すっかり眠気が取れたマリオは、首をひねって考えても仕方ないと封を開いた。後ろでルイージが「呪われない? 大丈夫?」と怯えているが無視。
「……」
「に、兄さん……?」
「ルイージこれ……招待状だ」
「招待? お、お化け屋敷に……?」
「どんな思考回路してんだよ」
マリオはルイージに招待状を渡すと、にやりと笑った。
「なかなか面白そうだと思わないか?」
「え〜……兄さんはそうかもしれないけど、ボクは戦うの苦手だし遠慮しと――あっ」
手の中から消えた招待状の行方を追い、マリオに目を向ける。
ルイージから招待状を奪い取ったマリオは、近くに転がっていたペンでさらさらと『了承』の意思を書き込んだ。
「ちょっと兄さん‼︎ よく読んでからにしないとなにがあるか」
ルイージの制止も虚しく。なんの変哲もない招待状から突如として光が溢れた。あまりの眩しさに腕を目に翳すも、光の強さは増していき――……やがて晴れた。
「……んあ?」
テーブルに突っ伏していたマリオは、ぱちっと顔を上げた。しかし意識はうつらうつらしており、再び額をテーブルにくっつける。
「もう兄さん、大変だったのはわかるけれど寝癖ぐらいはちゃんとしてよね。キノピオ達が見たらびっくりしちゃうよ。あと、もうご飯できるから起きてよね」
「あ〜はいはい……」
呆れながらも自身の寝癖を解かしてくれる弟に、生返事を返した。