Super Smash Bros. - Cross × Tale -
強者と相見え、己が力量を図り、更なる高みへと至る。
――片腹痛いわ。
俺に求められるのは『力』。全てを支配し、蹂躙し、恐怖が入り混じる純粋な『力』!
城の廊下を『前進』するガノンドロフは苛立ちを隠さなかった。
煉瓦造りの床は足の形に合わせて陥没し、悪戯に壁を叩いてやれば破壊される。口元に弧を描くと、周囲の者は色を失う。
「ガノンドロフ」
ガノンドロフは歩みを止めた。行く手を、宰相マスターが阻んでいたからだ。
マスターの合図で使用人達は、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「すまないが、城を壊すのはやめてほしいな。いくら『すぐに直せる』といっても、無駄な労力は割きたくないのでな」
マスターの言葉に背後を見遣ると、自身が破壊した箇所は跡形もなく元通りとなっていた。
ほう、とガノンドロフは笑みを浮かべる。
「――まずは貴様から地獄へ叩き落としてやろう」
前動作もない不意打ち。
紫炎を纏う右手を繰り出したガノンドロフだったが――マスターは、白の手套を嵌める右手で易々と受け止めていた。
手套に宿る魔法円が放つ白き光に照らされながら、マスターは目を細める。
「これ以上、無駄な抵抗はしないでくれ。君達が勝てる見込みは万が一にも『ない』」
「なに……?」
「そのように、プログラムされているからな」
衝撃波を受けたガノンドロフの体が仰反る。
自身の右手から一筋の血が流れ落ちるのを目に、不敵に笑う。
「面白そうだな」
「ガノンドロフッ‼︎」
怒気含む叫びが耳朶に響く。
鬱陶しげに振り向けば、鬼の形相のリンクがこちらを睥睨している。その拳は怒りに震え、必死に抜剣するのを耐えているようにも見えた。
「喜べ小僧。戦いの舞台で俺と見えることを」
瞠目するリンクとすれ違い、ガノンドロフは哄笑を上げながら踵を返していく。
マリオとカービィが――ガノンドロフを尻目に――リンクらと合流したのは直後のこと。
「とても楽しみだ」
と、微笑むマスターに、リンクは奥歯を噛み締めその場から立ち去った。