Super Smash Bros. - Cross × Tale -
ピーチ、クッパ、ファルコを皮切りに。新たな参戦者達が続々と『アルスハイル王国』に降り立つ。
「ピッカ!」
「ピヂュ〜!」
「ぼくはポポ!」
「あたしはナナ!」
「「よろしくね!」」
顔見知りの者もいれば、初めましての者まで。
無機質な『ポータルルーム』が活気に包まれる中、ひとり白けていたリンクは我が眼を疑う。
「ぜ、ゼルダ……⁉︎」
眩い金色の御髪にローズピンクのドレス。品のある立ち振る舞いから、高貴な王族であることが窺える。
「……久しぶりですね、リンク」
「うん、そうだね……」
己の前に立ったリンクはどこか気まずくぎこちない。そんな彼にゼルダも静かに顔を背けてしまう。
「なぁ、これで全員か?」
一歩離れた先でマリオがそうマスターに問う。
「いや、あと一人来るはずだが……」
首を緩く振ったマスターが噂をすれば何とやら。一つの『ポータル』が一際強く瞬き、最後の一人が現れる。
「――ッ⁉︎」
シルエットが剥がれた時、リンクはゼルダを自身の背後へと追いやり、あろうことか剣を抜いた。
『その男』は向けられる殺気に目を細め、愉快げに口元を怪しく歪める。
「ほう……貴様らがここにいようとは」
「お前こそどうしてここに……!」
「どうして、だと? 愚問だな」
怒りに身を任せ足を踏み込んだリンクに、ヴィルヘルムが待ったをかけた。
「お待ちくださいリンク様。ここで剣を抜くのは危険です」
「うるさい! 部外者は黙っていろ‼︎」
「――その通りだ小僧」
『真後ろ』から響く声に、ヴィルヘルムは振り返る。
刹那、誰かの叫び声が部屋に響く。
男は鍛え上げられた右手でヴィルヘルムの首を捕え、あろうことか握りつぶさんとしていた。
「っ……」
「貴様か? こんなふざけた催しを企てたのは」
声音に込められた憤りに、誰しもが膠着する。
ぐぐっと指が食い込む様を前に剣を振り翳したリンクと、ヴィルヘルムが解放されたのはほぼ同時。
スパンッ――と男の腕が易々と叩き落とされ、衝撃でヴィルヘルムの首から手を離した。
「リンク」
咳き込むヴィルヘルムの背を摩りながら、仲裁したマスターは静かに名を呼ぶ。
ゆっくりとリンクが剣を下ろしたのを背に、マスターはヴィルヘルムの肩を支える。
「ヴィル、大丈夫かい?」
「はいっ……すみません……」
呼吸を落ち着かせるヴィルヘルムを尻目に。男は『ポータルルーム』から姿を消す。
「マスター様、こちらは大丈夫ですのでどうぞ向かってください」
「……分かった。皆すまない、この後はヴィルの指示に従ってくれ」
眉を曲げたマスターは男の背を追っていく。
「……巻き込んでしまってごめんなさい」
最後に深く息を吸い込み呼吸を整えたヴィルヘルムに、ゼルダが歩み寄る。
「ゼルダが謝ることじゃないよ。僕のせいでもある。……ごめん」
幾分か頭を冷やしたリンクが素直に謝罪するのを、ヴィルヘルムは「いえ」と軽く首を振る。
「こちらはお気になさらず。それよりも、お騒がせして申し訳ございません。ではこれからについてお話させていただきます」
何事も無かったかの如く。ヴィルヘルムは《スマパッド》片手に説明を始め、彼らも耳を傾ける。
「本日の午前についてですが、新しくいらした方々にこれから必要となる様々な設定を行っていただきますので、こちらで少々お待ちを。既にお済みの方はご自由にお過ごし下さい。昼食後、皆様全員にお集まりいただき、別館にて『大乱闘』の試験運転を行う予定です」
それは、『大乱闘システム』のメンテナンス明けの知らせでもあった。
「それでは皆様、ご移動をお願いいたします」
その一言でファイターは二手に分かれる。
「マリオ、せっかくなら一緒にいましょ。ね?」
ピーチに引き留められたマリオは「あー」と後頭部に手を添えながら、ちらりと出入口――足早に『ポータルルーム』を去っていったリンクを見遣る。
「ごめん。ボクやることがあるから」
「あらそう? ならまたあとでね」
手を振り返し、一歩部屋の外に出たマリオ――の背に強い衝撃がひとつ。
思わぬ衝撃にうつ伏せで倒れたマリオの上には、カービィが鎮座していた。
「いっくよマリオー……ってあれれ⁇ なにしてるの?」
「いいからすぐに退け……!」