Super Smash Bros. - Cross × Tale -
「さぁて〜話してもらおうかリンクさんよぉ」
手をボキボキと鳴らすマリオに、リンクはケッとそっぽを向く。
「ヒゲのおっさんは何にもしてないだろ」
「マリオだ! それと、まだ二十代前半だぞ!」
「……それで?」
「それでとは何だそれでとは!」
「もう〜マリオうるさいよ〜」
我に返ったマリオはわざとらしく咳払い。聞き手の態勢を取る。
ややあってリンクは、当時を回想しながら語り始めた。
「……友達を探しているんだ」
ある日突然、ぼくの元に現れた小さな妖精。
困った時には手を貸してくれて、落ち込んだ時には励ましてくれて。僕の冒険を、ずっと見守ってくれていた相棒。
「何も言わずにどこかに行ってしまって、元の世界でもずっと探していた」
けれど。君の姿は世界のどこにも無くて。
「どこにいるの『ナビィ』……僕は、僕はここにいるよ……」
「リンク……」
「会いたい……会いたいよ……」
目尻に溜まる涙が、我慢出来ずに氾濫する。
嗚咽混じりに泣くその姿は――迷子の幼子のようで。
「きっと会えるよリンク!」
「探せば見つかるさ」
「――勝手なことを言うな! 城を出てからずっと探しているけど見つからないんだ! もう……もうナビィとは……」
「お前こそ勝手なことを言うんじゃない!」
所謂逆ギレしたリンクに声を張り上げたマリオは、腕を組みふんぞり返る。
「頭がキノコな住人は? 喋る亀は? 移動できる土管は? 渡れる虹は? 全部お前見たことないだろ‼︎」
「だっだからなんだよ! 関係ないだろ!」
「世界はな、ボクやお前の物差しではかれるように小さくない。……分かるだろ」
こちらを見据える眼差しは真剣そのもので。マリオが何を伝えたいのかを、リンクは察すると口を閉ざす。
「横から失礼します」
続けて、それまで傍観していたヴィルヘルムが口を挟む。
「マリオさんのおっしゃる通り、世界の大半は皆様の故郷で形成されております。現時点ではそれぞれのエリアごとで独自の営みがなされておりますが、少しずつ他エリアとの交流が始まっております」
「……何が言いたい」
「要約しますと、リンク様がお探しのナビィさんはすでに『ハイラルエリア』を去り、別のエリアに行かれた可能性があるということです」
「!」
もしもそうだとしたら、このエリアで見つけられないのも頷ける。
リンクの心が、再び希望と結ばれた瞬間だった。
「なら、いつか絶対会えるね!」
足元で微笑むカービィに――リンクも頬を緩めた。
「……そうだね。きっと会えるよね」
「んじゃ帰るか。どっちが出口なんだ?」
マリオの問いに、リンクでさえも皆一様に口を閉ざす。
「お、おいおい……まさか誰も出口分からないのか⁉︎」
「そういうマリオだってわからないくせにー」
頬を膨らませるカービィに、「困りましたね」とヴィルヘルムも眉根を寄せる。
「いっその事燃やしちまうか」
「やめろ」
ガチトーンのリンクに冷や汗がたらり。今にも抜剣しかねない彼を、冗談だってと宥める。
そこに、ヴィルヘルムの《スマデバイス》宛に着信が届く。
「はい。こちらヴィルヘルムです」
(電波あるんだな……)
応答したヴィルヘルムは、僅かに目を見開く。
「キャプテン・ファルコン……様?」
『ああ、ファルコンでいい。マスターからあらかた事情は聞いている』
電話の主はキャプテン・ファルコンと名乗る男。彼もまた招待状を受け『アルスハイル王国』に『具現化』された戦士であり、城に向かったところ宰相のマスターから説明を受けたと話した。
『それで、地上に君達らしき姿が見えて連絡している』
「地上……?」
徐に上空を見上げれば、青い機体が森の上空を旋回していた。
『無事に見つかったみたいだな。森の出口まで案内してやろう。俺のマシンについてこい』
「ありがとうございます」
「助かったぜ」
安堵した三人とヴィルヘルムは、上空を徐行運転するマシンに合わせて森の出口を目指す。
無事に草原へと辿り着いた一行を、ファルコンはパイロット席から満足げに見下ろす。
『またあとで会おう!』
と、瞬く間にマシンは城の方向へと姿を消した。
「かっこいい……」
思わず呟いたリンクは口元を抑えるが遅く、マリオとカービィはにやけていた。
「〜〜っさっさと帰るよ!」
「帰るってどこに?」
「城に決まってるでしょ。『僕達』が暮らす城に」
ずんずんと先行するリンクの耳は赤く色づいており、マリオとカービィは嬉しそうに笑いあった。
「みんな喜ぶよ!」
「どうだか」
「もうっリンクったら〜!」
追いついたカービィが肩に飛びつき、リンクと共に一歩先を歩く中。マリオはヴィルヘルムの隣に並ぶ。
「さっきは、助けてくれてありがとな。凄かったよお前の動き」
「当然のことをしたまでです」
変わらずクールな反応のヴィルヘルムに苦笑しつつ、マリオは無遠慮に頭を撫で上げる。
「これからもよろしくな!」
そのままリンクの元に駆け寄り、背中を叩いたマリオは案の定叱られる。
尚も歯を見せて笑う横顔に――手にしていた長杖をぐっと握りしめた。
(眩しくて、強い輝き……僕には持てなかったもの)
ヴィルヘルムは長杖を一度消すと、《スマデバイス》を耳に充てる。
「……マスター様。これより『ポータル』経由で帰還致します」
「分かった。気をつけて帰ってくるんだよ」
王城の一室。照明一つ灯されていない薄暗い部屋に響くマスターの声。
通話を終わらせた彼は、床に横たわる子供を抱き上げた。
縞模様のシャツに赤い野球帽。
その瞳は、固く閉ざされていた。
「……すまないが、この部屋の秘密は守らなければならない」
白い
「『あの子』の為にも――この部屋の記憶は、忘れてくれ」
遂に全員集合した『乱闘部隊』。
そしていよいよ、彼らは『大乱闘』のステージに立つこととなる――。