Super Smash Bros. - Cross × Tale -

3:合流せし戦士達【4】


 すっかり日も暮れ、夜の蒼みがかかり始める頃。
 城中をバラバラに行動していた戦士と、城外に出ていた戦士達が食堂で合流した。

「オネットから来たネスです。よろしくね!」
「なんだまだ子供じゃねーか、戦えんのか……でぇっ!」

 ネスの掌から放たれた眩い閃光がドンキーの目の前で小さく弾ける。うぐぐ、と目を抑えるドンキーにネスはふふんと胸を張った。

「わーいっ! ごはんだ〜!」

 ヴィルヘルムの腕から飛び降りたカービィは一目散にカウンターへと急ぐ。

「ヴィルヘルム」
「サムス様、ですよね……?」

 そこに入れ替わるように声を掛けたのは、パワードスーツを脱いで過ごすサムス。その両肩にはそれぞれ、黄色とピンクのポケモンがちょこんと乗っている。

「ああ。それで、この子についてだが……」
「はい。マスター様からご連絡いただいております。プリン様ですよね」

 呼ばれたピンクの風船、プリンは小さく鳴いた。
 このプリンもピカチュウ同様、【乱闘部署】として招かれた戦士である。

「ご対応いただきありがとうございます。サムス様」
「成り行きだ。そんな感謝されるほどじゃない」

 サムスのクールな対応とは反対に、ピカチュウもプリンも随分懐いている様子。それを邪険に扱わない彼女も、心優しい性格であることが窺える。

「やーい遊ばれてやんのー」
「あぁ⁉︎ テメェだってアイテムがなきゃ弱いまんまのくせによぉ‼︎」
「やんのかゴリラ⁉︎」

 食堂内に響き渡る喧騒にサムスは嘆息する。

「にににに兄さん⁉︎」
「止めるなルイージ。これはプライドをかけた男の――」
「そんなことより手! 自分の手を見てよ兄さん!」

 そんなことより扱いに若干哀しみつつ――マリオはルイージの言う通りに掌を見遣ると。

「火が出てる⁉︎」
「火だな」
「火だね」
「どうかんがえても火〜」

 フォックス、ネス、カービィが口々に真顔で発言する中、驚愕している『キノコエリア』関係者。

「マリオっていつから自力でファイアーボールが出せるようになったの?」
「初めてだが⁉︎」
「ねえ、これってどういうこと?」

 一同の視線がヴィルヘルムへと集まる。
 黙考していた彼は、やがて眉を顰めたまま推測を口にする。

「恐らくは……『統一処理』の影響かも知れません」
「『統一処理』?」
「はい。皆様がこちらに初めていらした際に、マスター様から元の世界の記憶を上書きできない旨をお聞きになられたと思いますが――」

 ――要となる存在……君達を『具現化』すれば解決はするものの、君達の記憶までは他の住民同様に上書きすることができない。

「それは記憶だけでなく、個人の能力にも影響します。皆様がこれまでに得た経験はそのままに、別の能力へと置き換わっている……と、考えられるかと思います」
「ぼくがPSIを発動出来なかったのは、そういうことなんだ」

 嬉しいような悲しいような。それでもきっと、使えなくなったわけじゃない。

「ケッ、玉っころが使えるようになったからってなんだ。オレのこの筋肉には負けるだろうがよ!」
「頭まで筋肉で出来てる猿が何言ってんだか」
「……もうアイツらはほっといて飯食うか」
「さんせーい」

 ようやく食事の時間が始まろうとしたのを機に、ヴィルヘルムは密かに食堂を後にした。


「ではこれで失礼します」
「ああ。おやすみ」

 報告書を提出しにマスターの自室を訪れたヴィルヘルムが、会釈して扉を閉める。

「あっヴィルさん!」

 それを今か今かと待ちかねていた――食堂帰りのネスは、ヴィルヘルムに駆け寄った。

「ネス、どうしたの?」
「お礼を言いたくって。今日は助けてくれてありがとう」

 ヴィルヘルムは困ったように笑っていた。

「ヴィルさんの力があれば、あの霧もどうにか出来そうだよね」
「……僕の力は何の役にも立たないから。持ってるだけ無駄なんだ」

 月明かりが照らす回廊に響く冷えた声。
 最後ににこりと微笑んだヴィルヘルムは、「おやすみなさい」とネスの前をあとにした。

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