Super Smash Bros. - Cross × Tale -

3:合流せし戦士達【2】


(全く、どうして私が探さなくてはならないのだ)

 いつにも増してご機嫌斜めなサムスは(前日に引き続きパワードスーツを装着したまま)城の廊下を進む。
 不機嫌な理由は、今し方退室した『システム管理室』での出来事にあった。


「夜もその姿で休んだのか?」

 すでに作業を始めていたマスターに、だから何だと無言の圧をかける。

「今日も昨日と同じ光景になると思うが、見ていくか?」
『……いや、やめておく。私が聞いてもいないのに、あれはなんだこれはなんだと説明されたくないからな』

 小さく笑みをこぼしたマスターは「それは残念だ」と、再びモニターへと目を向ける。

「ところで……ピカチュウは一緒ではないのか?」

 立ち去ろうとしたサムスはその言葉に足を止める。

『見ていない』
「そうか。今朝から姿が見えなくてな。もしだったら探しておいてくれ」


 現状に至るまでを想起そうきしていたサムスは――視界の端に映り込んだ鮮やかな黄色の物体に動きを止めた。
 城の回廊かいろうから見えたのは、城郭じょうかくの近くでうずくまるピカチュウの姿。こんなところにいたのかと呆れながら近づく。

『何をして……』

 見下ろしたサムスだったが、はたと言葉を詰まらす。
 小さな体の至る箇所から滲む血の跡。息を弾ませるピカチュウは、それでも起きあがろうと手足に力を入れる。

『どうした』
「ピッ……ぴかぁ……」

 傍らで片膝をついたサムスを見上げ、片方の手で必死に空を示す。
 そちらを見上げれば――城郭の先にズラリと並ぶ針と針の間に、風船にも似たピンク色の物体が挟まっている。身動いているのが目視でき、サムスはピカチュウの行為に納得した。

『そこにいろ。私が行く』
「プリッ⁉︎」

 壁を登ろうとしたサムスを、ピンクの風船は怯えた様子で体を震わせる。

『私はお前を助けようと……』
「プリリー! プリッ……プリ……」

 その瞳から大粒の涙を流されては、流石のサムスも狼狽えて。

『……仕方がないな』

 と、サムスはパワードスーツを『脱ぎ捨てた』。
 さらりとなびく艶やかなブロンドヘアーの髪を束ね、勇ましく柳眉りゅうびを釣り上げる姿はまさしく『美』という言葉に相応しい。
 彼女の素顔にピカチュウやピンクの風船が見惚れているうちに――難なく城郭を駆け上がったサムスは丁寧に助け出した。

「お前も一緒に行くぞ。傷の手当てをしないとな」

 そうピカチュウも抱えたサムス。城へときびすを返そうとしたところに。

「「……」」

 呆然とこちらを見つめるマリオとフォックスに出会した。

「何を突っ立っている。邪魔だ退け」
「あ、ああ、悪い」

 左右に避けた二人の間を通り、サムスは平然と回廊を進む。
 彼女の後ろに並んだ二人は、ピカチュウらが怪我をしていることにも気付く。

「医務室が何処にあるか知ってるのか?」
「知るわけないだろう。ここからなら『システム管理室』が近い。宰相に案内させればいい」

 マリオとフォックスは共に口元をひくつかせるが、ピカチュウとピンクの風船は嬉しそうに微笑みあっていた。

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