名探偵コナン
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『じゃあお先失礼します、店長!』
「おぉ、今日はまじ助かった。来年もよろしくな、よいお年を」
『店長も良いお年を~!』
そう言って、名無しはパタパタと慌ただしく仕事着から着替え荷物を持っては店の外へと駆け出した。
普段であれば行き交う人がちらほらと居るはずなのに、今日に限っては誰ともすれ違う事が無く名無しは空いた道をただ走る。
冷たい風が名無しの頬に触れれば『さむっ』と身震いをしながらも名無しは走る速度を落とす事はなかった。
今日は12月31日。
今年も残す所後数時間で今年が終わろうとしていた。
本来であれば今日名無しはバイトのシフトに入っておらず、恋人である聖とゆっくり年を越す予定だった。
だがシフトに穴が開いたためバイト先の店長から「申し訳ないが出勤してもらえないか?」と言われてしまえば名無しは断る事が出来ず急遽出勤したのだ。
正月三が日は休みの為、いくら時短営業していたと言えどお店に来る客の人数は何時もの土日よりも多かった。
流石年末と思う程の余裕もなく、名無しは出勤してから先ほどまで店内を駆け回っていたのだ。
(聖途中まで来てるかな…)
白い息を吐きながら、名無しは走る速さをさらに上げる。
バイトの終了時間は伝えてあると言えど、流石に20分も早く切り上げたのだ。
普段であれば名無しのバイト終了時間に合わせて店前まで迎えに来てくれるが、流石に20分も早く切り上げたせいか聖の姿はまだ店前にはなかった。
だが帰る前に「今から迎えに行くね」と、聖からメッセージが来ていたのだ。
慌てて電話をしようとするも、名無しのスマホの充電が切れてしまい連絡する事すら出来なかった。
(何で充電してなかったんだろ…私の馬鹿…)
連絡が出来ないもどかしさに、名無しはぎゅっとショルダーストラップを握りしめる。
名無しの家から名無しのバイト先まで遠回りさえしなければこの道しか通らないのだ。
ちらほらと光る街灯の光の下に、名無しは人影を見つけた。
垂れ目に特徴的な眉をした、甘く端正な顔立ちの男性。
温かいコートを羽織り、白い息を吐きながら冬の寒空を見上げながら歩いている。
先日クリスマスプレゼントとして渡した、見覚えのある紺色のマフラーを首に巻き白い息を吐きながら歩いていた。
それが誰なのか、名無しには一目瞭然だった。
『聖!!!』
名無しが会いたくて仕方がなかったと聖の姿を見つけては、満面の笑みを浮かべる。
不意に名前を呼ばれた聖は歩く足を止め、ゆっくりと視線を声のする方へと向けた。
どうして此処に?と言わんばりに目を見開き、「名無し」と呟く。
聖に名前を呼ばれた、それだけで嬉しくなり名無しは思わず地面を勢いよく蹴り聖に抱き着いた。
名無しの行動に聖は思わず目を見開くものの、咄嗟に抱き着いてきた名無しの身体を受け止める。
「バイトお疲れ様、名無し」
『ごめんね、聖遅くなっちゃって』
申し訳なさそうに項垂れるが、そんな名無しを見て聖は「大丈夫だよ、名無し」と優しく声をかけた。
名無しに急遽バイト先から電話が合った時、勿論聖もその場に居たのだ。
困っている人が居たら放っておけない名無しだと言う事を、聖だって十分理解している。
長い付き合い…と言うわけではないのだが、それでも半年名無しと恋人で居るのだ。
名無しがどういう人物で、どういった性格をしているのかを知るには十分すぎる半年間だった。
だからこそ連絡が来た時に聖は「準備は僕がやっておくから、名無しは行っておいで」と言ったのだ。
きっと聖との予定がなければ名無しは即答していただろう。
だが今日は先約があるため即答する事が出来ずどうしようと悩んでいた名無し。
そんな名無しを聖はただ背中を後押ししたに過ぎない。
それが今朝の出来事だったのだから。
『早く帰って年越しそば茹でなきゃだね』
「名無し楽しみにしてたしね」
『そりゃそうだよ~!だって聖が年越しそばに合う様に天麩羅だって作ってくれたんだよ?』
「名無しが好きって言ってたからついね」
『聖の作る天麩羅凄く美味しいもん!や、天麩羅だけじゃなくてほんと肉じゃがとか魚の煮つけとかも美味しいから聖の作るご飯全部好き!』
そう聖の料理について熱弁する名無しに、聖は思わず苦笑してしまう。
聖は父親と2人で住んでいたのだ。
料理は一通り出来るものの、名無しにそこまで言われるとは聖自身思いもしていなかった。
初めて手料理を振舞った時から、名無しは聖の料理を気に入りどれだけ美味しいかをよく聖に力説する。
「じゃあ早く帰ろうか。…ほら、名無し」
『うん!!!』
そう言って聖が手を差し出せば、名無しはぱっと花が咲いたような笑顔を向けてはそっと聖の手に自分の手を重ねた。
先程まで走っていたと言えど、手袋をはめていなかったせいか名無しの手はやけに冷たい。
そんな名無しの手とは違い、聖の手はとても温かかった。
重ねた手を名無しはぎゅっと握っては聖の体温をその手に感じながら、二人は寒空の下、帰路に着いた―――…
貴方の手の温もり
(美味しかった~!聖が作ってくれた天麩羅すっごく美味しかった)
(名無しの作った出汁も凄く美味しかったよ)
(聖には敵わないけどね~…あ、もう今年も5分もないね)
(本当だ…あっという間だったね今年も)
(今年もお世話になりました!来年もよろしく聖!)
(それは勿論。僕の方こそよろしくね、名無し)
202/01/01
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