名探偵コナン
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「名無し?」
『あれ……聖?』
八幡坂大学の食堂でレポートの下書きを纏めて書いている名無しに、違う学部に通う福城 聖と言う男は声をかけた。
垂れ目に特徴的な眉、甘く端正な顔立ちのせいか聖は女性によくモテる。
若竹色の綺麗な色の瞳に見つめられてしまえば誰だってドキッと胸が高鳴るし、甘い言葉を囁かれてしまえば簡単に堕とされるだろう。
居合道の大会で何度も優勝している達人であり、聖目当てに大会の会場に行くファンも少なくない。
袴を着て刀を振るう姿は名無しから見ても確かに見惚れるほどかっこいいのだ。
そんな八幡坂大学でもトップクラスに人気のある男が何故こんな所に居るのだろうと名無しは不思議そうに首を傾げる。
今日は平日の金曜日。
名無しは元々金曜日は講義を取っていないため、金曜日は大学に来るものの食堂にて課題やレポートをこなす事が多々ある。
金曜日は講義を取っていない名無しと違い、聖は講義を取っていたはずだ。
それなのに何故講義に参加せずにこんな所に居るのだろうと名無しからすれば不思議で仕方がない。
『あれ、講義出なくていいの?』
「教授に急用が出来て講義が無くなっちゃったみたいでね」
『あー…それはお疲れ様?次講義入ってるんだっけ?』
「うん、だから時間潰しに食堂にね」
そう言いながら聖はしれっと名無しの目の前の空いている席に腰を下ろす。
許可もなく目の前に座った聖に、名無しは何も言わずに溜息を付いた。
せめて一言言って欲しいと思うものの、名無しが拒否した所で聖は居座るのだ。
(まぁ…いっか…今は人少ないし)
ちらりと食堂内を見渡せば、時間も昼時ではないためまだ人は少ない。
それに加え名無しが座っている席は死角になっているためそうそう誰かに見られることはないのだ。
人気者である聖と二人でこんな所に居るのを見られてしまえば、学部問わず名無しは女子生徒に睨まれ陰口を言われてしまう事は目に見えて分かる。
学部は違えど、名無しと聖は所謂恋人同士だ。
公にしていないのは聖がモテる上に人気者であるからこそ、名無しは公にしたくないのだ。
無論聖は口では「公にしなくてもいいよ」と言ってくれているが…目がそうは言っていない。
隙あらば公言しようとしている目をしているので、名無しは常に大学内で聖と関わろうとはしなかった。
「名無しは相変わらずレポート作成?」
『うん、来週までに提出のやつ。…家だとどうしても身が入らないからね』
そう言って名無しは先程まで纏めていたノートを見ながら背伸びをする。
最終的にパソコンのワードを使って仕上げるのだが、名無しは下書きをある程度纏めておかなければワードで打ち出す時に纏まりのない文章になったり同じことを書いたりしてしまう為、こうして面倒だがノートにある程度書き出していた。
だがそれもここ数時間時間を費やしたため、ある程度は形になっている。
もう少し煮詰めてからパソコンで仕上げようと思うがその前に…と、名無しは椅子の上に置いていたビニール袋の中からガサゴソと今朝買ったばかりのチョコを取り出した。
無論、ビニール袋の中には名無しが取り出したチョコ以外にも別のメーカーのチョコが幾つか入っている。
「……チョコレート?」
『うん、見てたら美味しそうだな~って』
箱を開け、中に入っているチョコを1つ取る。
表面にココアパウダーがついており、名無しの手にもカカオパウダーが付くが気にせずにチョコ口の中に入れた。
コク深い芳醇なミルクの味わい、ココアパウダーのかかっていた生チョコがとろける様に名無しの口内に甘さが広がり溶けていく。
甘い物好きである名無しは1つ食べてしまえば、自然と頬が緩んではまた1つと手を伸ばしチョコレートを口の中へと運ぶ。
幸せそうに食べる名無しを見ながら、聖も釣られて頬を緩めた。
『そう言えば何で冬ってチョコレート菓子が多いんだろ?』
ふと、名無しは今食べているチョコを味わいながら疑問を呟く。
冬場になると冬季限定でチョコレート菓子が多いなと名無しは思うものの、何故冬場にチョコレート菓子が多いのか理由までは知らなかった。
季節的にバレンタインも少なからず関係しているのではないかと思うものの、それにしたって早すぎるのだ。
バレンタイン用のチョコレートがお店に並ぶのは早くても1月中旬辺りからだろう。
「冬だから多いんだと思うよ」
『どういう事?』
聖の言葉に名無しは首を傾げる。
「冬場は寒いから、体温維持のためかな?代謝が活発になるから通常時に比べて約10%多くのエネルギーを消費するんだよ。チョコレートは炭水化物や脂質が高く、少量でも必要エネルギーを補うことが出来るからね」
『へぇ〜』
「日照時間が少なくて分泌量が低下するため、気分が落ち込みやすいって言うのもあるかな」
『それは…なんとなく分かるかも』
「チョコレートに限ったわけじゃないけど、冬は季節性感情障害の一種として冬鬱になりやすいからね。それを防ぐために多幸感をもたらすモルヒネに似た脳内物質の“β-エンドルフィン”を出そうとする」
『…つまり?』
「手っ取り早く“β-エンドルフィン”を分泌させるなら甘いもの…になるわけだよ」
『ひぇ…お菓子会社の陰謀にまんまと乗せられてるってわけね』
聖の説明を聞けば、名無しは次のチョコを食べようとした手が一瞬止まる。
甘い物を食べれば確かに幸せな気持ちになるが、聖の話を聞いた後だと次を食べようとする気持ちが薄れてしまう。
先程開けたばかりなのだ。
箱の中にはまだチョコが7つ程残っている。
『…と言うか聖はよくそんな事知ってるね?』
「講義の雑学として教授がそう言う話もするからね」
苦笑しながら聖はチョコを取ろうとして手の止まっている名無しをじっと見つめる。
「名無し」
『なぁに?』
「僕にもチョコ一つ頂戴」
『いいよ?今出てる生チョコのにする?』
そう言いながら名無しは机の上に置いてあるチョコの箱を聖の方へと差し出した。
上からたっぷりとココアパウダーがかかっているせいか1つ手に取ればココアパウダーは指についてしまう。
その事も考えて『ココアパウダーかかっていないのもあるよ?』と、言えば名無しはビニール袋の方へと目を向ける。
ビニール袋の中には勿論ココアパウダーのかかっていないチョコレートもあるのだ。
甘いチョコから甘くない苦味のあるチョコレートまで、新作であれば名無しは買っているのだから。
沢山買ってあるのだ、どれでも好きなものを食べてくれればと名無しは聖を見る。
これでも恋人同士なのだ、惜しむことなく聖になら自分が買ったチョコを好きなだけ食べてほしいと思う。
だが聖は机に置かれてるチョコへ手を伸ばそうとはせず、名無しの手に触れる。
温かく名無しの手よりも大きい手に思わず首を傾げる。
『聖…?』
「…僕はこれで十分だよ」
名無しの手に触れたまま、聖はココアパウダーが付いた名無しの指を自身の口元へと持って行った。
『ち、ちょっと聖…?!』
思わず声を上げようとする名無しを気にせずに、聖はパクリと名無しの指を咥えこむ。
生暖かい聖の舌が名無しの指に触れ、触れたと思えば聖の舌が指を舐めては絡みつく。
聖が舌で触れた名無しの指は熱く、そんな聖の行為を名無しは目を見開きながら見る事しか出来なかった。
ただ聖が名無しの指を舐めている、たったそれだけの行動のはずなのに名無しの胸は先程からドクンと高鳴り自分自身でも体温が高くなったのが分かるほどだ。
客観的に見たら名無しの頬は赤く染まり、聖に物申したいはずなのに頭の中が真っ白になっているせいか何も言葉が思い浮かばない。
もう名無しの指にココアパウダーは付いていないはずなのに、それでも聖は丁寧に名無しの指を舌で舐める。
生暖かい聖の舌が、味わうよに指を舐めゆっくりと名無しの指から離れようとする。
『……っつ』
離れる瞬間、愛おしそうに名無しの指にちゅっと音を立てて口を離せば満足そうに聖は「ご馳走様」と呟いた。
まるで先程の行為など無かったかのように平静に振舞う。
「疲れた時には甘いものだね」
聖の言葉にはっと我に返り『ひ、聖っ…?!あ、アンタね…!』と名無しは言葉を紡ごうとするが「大丈夫、誰も見てないから」と聖は悪びれもなく名無しに言葉を返した。
そう言う問題じゃないと言いたいが言った所で名無しの目の前に居る男は気にしないのだ。
福城 聖とはそう言う人間だ。
名無しだって分かっている、言った所で意味のない事位名無しが一番分かっているのだ。
耳の先まで赤く染め言葉を紡ぎたいのに何も言い出せない名無しを、聖はただにこにこと笑みを浮かべながら名無しを見つめた―――…
疲れた時には甘い物を
(名無し苺みたいに真っ赤だね)
(誰のせいだと思ってんのよ?!誰の?!)
(さぁ…誰だろうね?)
(〜〜〜〜っつ、この野郎っつ!!!)
2024/12/06
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