不器用な恋
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「マリアさん…!?」
『……久しぶりね…ツナ』
ガチャリと音を立て、ツナが自室に入れば床に座って居るマリアを見て驚いた。
先程リボーンの長い説教を終え、マリアは一人ツナの部屋にて動けずにその場に座って居たのだ。
慣れない正座を長時間していたせいか、マリアの足は痺れ立ち上がる事が出来ずただただ一人ツナの部屋にて足の痺れが取れるのを待っていた。
だがそうこうしているうちに学校から帰って来たツナが自分の部屋に入れば、二ヶ月振りに見るマリアの姿に驚くのも仕方がない。
ツナ自身どういう状況なのか全く分からなかったが、マリアの足を見ればおろおろと近づき、マリアに手を差し伸べた。
「マリアさん大丈夫ですか…?」
『……大丈夫よ、ツナ…ちょっと痺れただけだから…』
差し出された手に手を重ね、立ち上がるもののやはりまだ足が痺れているせいかマリアは立てずにそのままツナのベッドの上へと腰を下ろした。
『ごめんツナ…ベッド借りるわね』
「それは全然いいんですけど…どうしたんですか…?」
『……ちょっとリボーンの説教喰らっちゃって…』
(マリアさんでもリボーンの説教喰らう事なんてあるんだ…)
と、ツナは物珍し気にマリアを見てしまう。
自分や兄弟子であるディーノが怒られたり説教を喰らう事は珍しくないのだが…マリアが説教を喰らうとはいったい何をしたんだろうと思ってしまうが、流石のツナもその事は聞く事が出来ず言葉を飲み込む。
「珍しいですね?」
『あたしがいけなかったんだけどね、怒られたり説教されるのは仕方ないとしても…正座させられるとは思わなかったわ』
苦笑しながらマリアがそう言えば、ようやく何故マリアが床に座ったままだったのかをツナはようやく理解した。
日本人ですら正座をすれば痺れてしまうのに、イタリア人のマリアからしたら足が痺れもするし何より慣れない座り方の為足への負担も大きかったのだろう。
『そう言えばツナ、中間テストはどうだったの…?』
「あ…えっと…」
マリアにそう話題を振られてしまえば、ツナは無意識に眉を下げ荷物を置いては自分の机の方へと足を向ける。
机の引き出しを開け、ツナはファイルを取り出しマリアの方へとファイルを差し出した。
差し出されたファイルに何だろうと思いファイルを受け取り中を見てみれば、中間考査の時のテスト問題と解答用紙が科目ごとにまとめられファイルされている。
一番上にはそれぞれの科目のテストの平均点が表記されている紙を見れば、マリアのためにツナなりに分かりやすくまとめてくれたのだろう。
解答用紙の方へと視線を移し、マリアは黙ったまま解答用紙に書かれている点数がマリアの目に映る。
数学以外は全て平均点か、平均点を超える点数を取っていたが…数学だけは平均点よりも点数が下回ってしまったようだ。
数学だけ問題用紙と解答用紙を取り出し問題を見ていると、「あの…マリアさん…ごめんなさい」とツナはマリアに放つ。
『どうしてツナが謝るの?』
ツナの言葉に、マリアはきょとんと首を傾げる。
ツナに謝られる事などマリアには何一つないのだ。
強いて言うならば、謝るのはマリアの方である。
最後の最後に…ツナにもきっと仕事でイタリアに帰る事になったと説明したとディーノから聞いている。
テスト最終日に『寄り道せずに早く帰って来なさいよ』と言ったのに、言った本人がその場に居なかったのだから。
マリアはそんな事を思っているとツナはゆっくりと唇を開き言葉を紡ぐ。
「だって俺あんなにマリアさんに付きっきりで教えてもらったのに…」
ツナは俯き、申し訳なさそうに唇を噛み締めた。
マリアはその言葉を聞き、何故ツナが謝ったのか…その理由がようやく分かったのだ。
きっかけはリボーンのひょんな一言から始まった物だが、それでも忙しい身であろうマリアは出会ったばかりのツナの家庭教師として面倒を見た。
一週間と言う長いようで短い時間。
学校の授業が終われば、決まってマリアは沢田家に居りそこから家庭教師としてツナの為に時間を割いてくれた。
リボーンがマリアにちらつかせた報酬の事もあるだろうが…それでもマリアはツナを見捨てずにツナのペースに合わせて教えてくれたのだ。
ツナ専用の問題用紙や教材を作り、日本に居る間は家庭教師としてマリアはツナに勉強を教えてくれた。
そんなマリアに報いたいと、ツナだって普段はやらない勉強をマリアが帰った後も一人していたのだ。
学校では教師に問い、獄寺や山本にだって分からなければ問う。
少しでも自分の為に時間を割いてくれた、マリアの為に。
そして巡り巡ってそれはツナ自身の為に…だ。
他の教科は何とか平均点か、それよりも上の点数を取る事が出来たが…数学だけはどうしようもない点数を取ってしまったのだ。
勿論ツナが今まで取って来た中では遥かに良い点数ではある。
今までの自分に比べたら、果てしなく良い点数ではあるはずなのに…ツナはちっとも嬉しくなかった。
テスト期間中も数学に一番力を入れていたはずなのに…と、ツナは悔しくて仕方がないようだ。
そんなツナに、マリアは笑いながら口を開く。
『ツナはよくやったわよ?』
「お世辞は別に…」
情けないなと、ツナは今にも泣きたい気持ちでいっぱいだ。
やっぱり自分はダメツナだ…そう思わずにいられなかったツナに対し、マリアは『お世辞じゃないわよ?』とツナの言葉を否定する。
「……どうして…マリアさんはそう言うんですか…?」
『どうしてって…そうね…』
少し考えた後、マリアは数学のテスト問題と、ツナの回答をツナの方へと見せる。
そしてある部分にトンっと指を当てれば、『此処』っとマリアがツナに見て欲しい所に指を指す。
マリアが指さす部分を見てみればそこは最終問題であり、その問題はツナが一番時間をかけて解いた所だ。
どうしてもその問題を解きたく、試験時間の大半をその問題に当てたおかげか解答自体は奇跡的に合っている。
点数配分は他の所に比べれば確かに大きいが、全体の合計点を見てしまえばそこが解けたところで合計点は低いのだ。
だからこそツナはその問題が合っていても気に留めることなく落ち込んだのは言うまでもない。
『いい、ツナ?ここが解けてるならそれだけで充分よ』
「……どうして…ですか?」
不思議な物を見るような目で、ツナはマリアを見た。
一体どういう事だろうと、ツナはただただ訳が分からない。
合っている事は確かに喜ばしいことかもしれないが、それでも何故その問題が解けていれば充分なのかとツナにはその理由が分らなかった。
きょとんとした表情をしているそんなツナに、マリアはにっと口角を上げては満足そうに口を開く。
『だってこの問題が、このテストの中で一番難しい問題なんだもの』
そうマリアに言われれば、ツナは「あ…」っと無意識に声を漏らした。
マリアが指をさしている問題は、授業中教師による解説の際に…確かに正答率が低かったとは言っていたのを思い出す。
クラスでも解けているのは十名未満だと言っていたような気がするが、正直な所ツナはそこが合っていたとしても合計点数が平均点に届かなくその事にショックを受けていたため気にする余裕すらなかったのだ。
『ツナはここの問題どうしても解きたかったのね…何度も書いては消しって自分で解き直してるから、だから答えもちゃんとあってるもの』
マリアが見た所、ツナの数学のテストの問題の解答はほとんどケアレスミスが多かった。
まだツナは中学生だ。
一つ一つの問題よりも、どうしても合計点数がその結果になってしまうと思っているだろう。
だがもう少し落ち着いて解いていれば、十分クラスの平均点には届いていたはずなのだ。
今後の課題はもう少し落ち着きを持ち、ケアレスミスのないようにしていく事がツナにとっての目標になるだろうとマリアは思う。
解き方自体は全て合っているのだ。
ほんの些細なケアレスミスさえ直していけば、点数なんてどうにでも跳ね上がる。
ゆっくりと満面の笑みを浮かべながら『よくできました』っと、マリアはそう言ってツナの頭を撫でた―――…
2024/12/04
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