不器用な恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『つ、疲れた…』
そう言ってマリアはリビングにあるソファーに身体を沈めた。
ロマーリオの言った条件付きでの一週間を終えれば、マリアは本格的に自分の家に引きこもり仕事の依頼をこなしたのだ。
当初は軽く見積もって一ヶ月半はかかるだろうと踏んでいたのだが、全ての依頼を終えた時には既に二ヶ月と言う月日が流れてしまった。
徹夜をし無理をしてでも仕事を進めていたのだが、流石に限界が来てしまい合間合間できちんと睡眠時間を取りながら仕事をしたせいかかかった時間が二ヶ月だ。
勿論この二ヶ月は趣味の実験や研究に手を付ける事が出来なかったのは言うまでもない。
先程ようやく全ての依頼に片を付け依頼主に送ってしまえば、マリアはようやく一息つける状況になったのだ。
「お疲れ、マリア」
『……ありがと』
そう言ってマリアが身体を沈めたソファーの隣に座って居たディーノがマリアに話しかける。
依頼主に依頼品を出し、帰ろうとした時に丁度街を見回っていたディーノ達に会えばそのままマリアを家に送ってくてたのだ。
「俺らそこらへんでコーヒーでも飲んでるから…お嬢はボスと一緒に居てやってくれ」
と、一緒に居たロマーリオとトマゾ、アベーレはそんな二人に気を利かせ、今は近くのカフェでコーヒーを飲んでいる。
トマゾだけは私も行きたい!と言わんばかりの表情で見ていたが、アベーレがそれを制してカフェへと連れて行ったのはつい数分前の事。
ソファーに身体を沈めたまま一息つけば、物珍しそうにディーノはマリアを見ている。
『何よディーノ…そんなじろじろ見て…』
「いやー…普段みねぇー表情してるなと思って」
二ヶ月振りに会ったディーノにそう言われてしまえば、マリアは何も言えなかった。
普段であれば仕事を溜め込むことも無ければこんな疲れ切るまで依頼だけをする事はないのだ。
合間合間で息抜きと称しては実験や研究をし、それを楽しむからこそマリアは徹夜しようが基本は疲れ切るような表情はしない。
だが今回は依頼優先で息抜きもしていなければ追い込みの為何徹したか分からないほどだ。
顔に疲れが出ても何らおかしくない状況でしかない。
『……今度はもう絶対溜め込まない…』
好き好んで溜め込んでいたわけではないのだが、マリアはそう胸に誓った。
そんなマリアを見ながらディーノは苦笑し、再びマリアに声をかける。
「なぁマリア」
『どうしたの…ディーノ?』
「急で悪いんだが…明日位からまとまった休みって取れるか?」
『そりゃ取れるけど?』
マリアは先程ようやく溜め込んでいた仕事を消化しきったばかりなのだ。
そうそうすぐに依頼が来る事はないが、流石に身体が持たなと思いひと月程は依頼を停止している。
あれからもう二ヶ月も経ったのだ、病み上がりと言う程ではないがそれでも仕事の疲れが溜まっているのできちんと休もうとマリアは決めていた。
まとまった休みが取れるのかと聞くのだから何かあるのだろうとマリアは思うが、一体何があるのかもマリアは見当がつかない。
「リボーンが時間がある時にまた日本に来いって…“ちゃんと無事かどうかこの目で見ねぇーとマリアの事は信用ならねぇ”って言ってたぞ?」
『…メール送ったのに…』
ディーノのリボーンからの言葉に、マリアはソファーに身体を沈めたまま項垂れる。
マリアが目を覚まし数日してから療養中の間に、マリアはリボーンとヴェルデには既に無事を知らせるメールを出していた。
ヴァルッセファミリーに連れて行かれた事を知っているのは、キャバッローネ・ファミリーとヴァリアーのスクアーロとルッスーリアを除けばリボーンとヴェルデだけなのだ。
ヴェルデに至っては一度電話で話したが、勿論心配された上にマリアは怒られ説教さてしまったのは言うまでもない。
今回は運よくヴァリアーの情報を得ていたのもあるが、もしそうでなければマリアはきっと危ない状態だっただろう。
幾らイタリアから、キャバッローネ・ファミリーのシマから出ないと言えど今回はマリアの家の方まで探しに来たとヴェルデは何処からかその情報を得ていた。
だからこそマリアに対し「マリアが無事で良かった…」とヴェルデは言葉を零さずにはいられなかった。
会った回数は勿論両手で数えられる程度。
それでも時折連絡をよこしてはマリアを気にかけてくれるヴェルデ。
リボーンとは違いマリアとヴェルデは波長がよく合い、そして同じ科学者でもある。
勿論話は合うしなんなら会った時は可愛がってもらったのだ。
フィネスが病気を患い、それこそ自分に残された時間が限られたものであると悟れば師であるヴェルデにマリアを託そうともした。
勿論フィネスの提案にヴェルデ自身も珍しく承諾するほどだ。
何よりも実験を優先するヴェルデを知っている人間からすれば想像もつかないだろう。
ヴェルデにとってマリアは自分の良き理解者でもあり、弟子であるフィネスの忘れ形見だ。
血が繋がって居なくても、直接の指定関係がなくても…ヴェルデにとってかけがえのない大事な存在であることに変わりはない。
電話を切る際に「今後は何かあれば私を頼るくらいしろ…」と言われてしまえば、マリアもそれに頷く事しか出来なかったのだ。
リボーンに関してはその後返信が無かったためマリア自身把握してもらえて居ればと言う認識だったが…まさか信用されていないとは思わなかったのだ。
ディーノの発したリボーンの言葉に、マリアの背中には冷や汗が流れる。
『ねぇディーノ…』
「何だよ?」
『……リボーンに怒られるのと説教されるの…どっちだと思う?』
「そんなもん両方だろ」
『…はぁ…』
答えたディーノの言葉にマリアは思わず肩を落とした。
マリア自身分かっている、ヴェルデに先に怒られ説教もされてしまったのだから。
リボーンならワンチャンどちらかだけで終わるかなと淡い期待を抱いたが、リボーンは甘くない。
それはディーノ自身知っているし、ディーノが怒られ説教されている姿をマリアだって学生時代よく目にしていた。
マリアも十分理解していたはずが何故そんな淡い期待を抱いたのだろう、と愚かな自分自身に溜息を零し…マリアは死んだ魚のような目で天井を見上げる。
自分の家の…ましてや見慣れた天井だ。
それすらも遠く感じるのは気のせいだと、マリアは思いたい。
『行かないって言う選択肢はないしなぁ…』
そうマリアが発した言葉の通り、行かないという選択肢はないのだ。
選択肢があるとすれば行くか、行かせていただきますのどちらかだけだろう。
どちらも行く事に変わりはない、寧ろ行く以外の選択肢なんて何処にもない。
行かなければリボーンの事だ、何をしでかすか分からないのだから。
「行かなかったらマリアお前リボーンにキレられるぞ?」
『分かってるわよ…それ位…』
腹をくくるしかないと思い、マリアは諦めて『で、いつ行けばいいのよ?』とディーノに問う。
一応マリアの依頼の事を気にしてメールや電話も控えてはくれたのだろう。
ディーノの方に連絡をよこしたのだから、つまりそう言う事に違いない。
リボーンの都合のいい日ぐらいはディーノでも知っているだろうと思いディーノに問いかけれたにもかかわらず、ディーノは目を丸くして不思議そうにマリアを見ていた。
「…マリアお前まさか一人で行く気じゃないだろうな…?」
『だって呼び出されたのはあたしだけでしょ?無理にディーノまで来なくていいわよ?仕事だってあるだろうし』
溜め込んでいた仕事はないにしろ、ディーノはキャバッローネ・ファミリーの十代目ボスなのだ。
他にも仕事があるのだからそう易々と日本に用事もなく行く事はないはずだ。
幾らリボーンの頼みでイタリアと日本を行き来していようが、今回の事に関してはディーノには関係が無いのだから―――…
「あのなマリア…お前ルーナ・ブルって自覚あるのか?」
『あるわよ?でも誰もあたしをルーナとして見ないわよ…知ってる人間以外』
「俺は知っちまったから…マリア一人国外に行かせるなんて出来るわけねぇーだろ…」
溜息を付きながらソファーに身体を沈めるマリアをぎゅっとディーノは抱きしめる。
久々のディーノの抱擁にマリアは顔を赤くするものの、マリアは思わず『でも…』と言葉が零れた。
『今回はあたしの問題だし…』
「俺はマリアの彼氏だろ?」
『そう…だけど』
「ならマリアと一緒に行っても良いだろ?…それともまた…俺を一人にする気か?」
抱きしめる腕に力を込められディーノに言われてしまえば、マリアはどうする事も出来なかった。
マリア自身ディーノを一人にする気はないし、離れる気もさらさらない。
これまでだってそうだ、どんなに幼くてもマリアがディーノの傍を自分の意思で離れようとなんて微塵も思っていないのだから。
だがそれはマリアが思うだけであって、周りの…ルーナを欲しがる人間からしたら知った事ではないのだ。
ディーノが言わんとしている事を理解してしまえば、マリアはディーノに対し『付いてこなくていい』なんて言葉は言えなかった。
黙っているマリアに「心配だからちゃんと俺がマリアを連れて行く」とディーノが言ってしまえば、マリアは『分かったわよ』と答えるしかないのだから。
マリアの言葉を聞きほっとすれば、ディーノはゆっくりとマリアを抱きしめていた腕を離す。
「なるべく早いほうがいいだろ?」
『まぁ…後回しにするくらいならサクッと怒られる方がいいかしらね…』
「それもあるけどよ…」
『あるけど?』
言葉を噤むディーノに、マリアは思わず首を傾げる。
他に一体何があるのだろうかと、マリアは思わず考えるが思い当たる物がほとんどないのだ。
一つ思い当たるとすれば、中間考査中だったツナのテストの結果の事だろうか?
結果を聞く事もテスト二日目の出来栄えを聞く事も出来なかったのだ。
はたまた、連れて行かれる時にその場に残して来たフゥ太や子供達のことだろうかとマリアは考える。
だがディーノが出した言葉はマリアが考えていた物のどれでもなかった。
「…博物館、行きたがってただろ?」
『そう、だけど…』
「リボーンがまだチケット取ってなかったから…次来た時に報酬として払うって言ってたぞ」
『……行く』
ディーノの言葉に、マリアは考えるよりも先に言葉が出た。
忙しさのあまり忘れていたが、マリアは後並盛町が誇る科学博物館に連れ行ってくれることと引き換えにツナの家庭教師を引き受けたのだ。
一度は諦めたものの、博物館の事を言われてしまえばマリアは心の底から行きたいと思ってしまう。
(博物館に行けるなら、リボーンに怒られようが説教されようがどうでもいいわっつ…!)
怒られる事も説教されるのも嫌だと思っていたはずが…己の好きな物をちらつかせられればマリアに行く以外の選択肢はないのだ。
目を輝かせ子供の様に『博物館…!』と呟くそんなマリアを見て、ディーノは自然と頬を緩めた。
2024/12/02
83/92ページ