不器用な恋
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『此処にリボーンが?』
「あぁ、今はボンゴレ十代目の家庭教師をしてるからな」
『ふ~ん』
長いフライトを終え、空港から車に乗り換えマリア達は目的地である並盛にある一軒家の前に居た。
リボーンが日本に滞在しているのは知っていたが、何のために滞在しているかを聞いた事が無かったマリアはディーノの言葉を軽く聞き流す。
そう言えば弟弟子が出来たとか言っていた気がするが、それがきっと今リボーンが家庭教師をしている子の事だろうとマリアは思いながら表札に書かれている“沢田”と言う文字を見ていた。
普段イタリア語や英語に馴染はあるものの、漢字となると物珍しく感じる。
(学生の時に習った位だから結構経つわね…)
マフィア候補生ばかりが集められた学校で、一通りの語学の勉強はしたもののこうして目にすると懐かしい気持ちにかられる。
写真や映像でなら見た事はあるが実際に日本に来て見る物は新鮮で、子供の様にきょろきょろと辺りを見渡してしまう。
そんなマリアを見ながら、ディーノはくすりと笑い手慣れた手つきでインターホンを鳴らせば、「は~い」と女性の声と共に玄関の戸が開く。
優しい雰囲気で、ディーノの顔を見れば笑顔でその人は言葉を紡いだ。
「あら、ディーノ君いらっしゃい。つー君ならまだ帰ってないんだけど…」
「あ、今日はツナじゃなくてリボーンの方に用事が合って」
「そうなの?リボーンちゃんならつー君の部屋に居ると思うわよ。所で…後ろの方は?」
不思議そうにマリアを見ながら女性は…沢田奈々は首を傾げる。
『初めまして、此処に居るディーノの幼馴染のマリアです。あたしの方がリボーンに用事が合って…今回ディーノと一緒に訪ねさせていただいてます』
「じゃあゆっくりしていってね!」
『はい、お気遣いありがとうございます』
にこりと互いに笑いかけあい、ディーノに導かれるままマリアは家の中に入っていった。
流石にディーノの部下全員を中に入れるわけにはいかず、何時もの様にロマーリオだけを連れる。
ニ階に上がり、ディーノに案内された部屋を開けるとそこは子供部屋だった。
内装からして男の子の部屋だろうと、マリアは思っていると見慣れた黒いスーツを着た赤ん坊がマリアの瞳に映った。
「ちゃおっス」
『久しぶりね、リボーン』
「そっちも相変わらずだな、マリア」
リボーンはにっと笑い唇の端を上げる。
最後に会った時と何も変わらない、赤ん坊の姿のままのリボーン。
黒いスーツとは似つかわない、黄色のおしゃぶりがきらりと光る。
帽子には彼にとってペットにして相棒でもあるカメレオンのレオンが乗っていた。
何ら変わらないリボーンの姿に、マリアは自然と顔がほころぶ。
着ている白衣の懐から小瓶を取り出し、マリアはリボーンへと差し出す。
透明な小瓶の中にはピンク色の液体が入っており、懐から出した弾みで左右に揺れる。
『とりあえずはい、コレ。頼まれてたやつ』
「相変わらず仕事がはえーな」
そう言いながらリボーンはマリアから小瓶を受け取り、自分の懐へとしまう。
事情を知らないディーノは不思議そうにマリアが渡した小瓶に首を傾げた。
「なぁ、マリア…あれ何だよ?」
『リボーンに頼まれて作った薬。…ディーノも身に覚え有るんじゃない?』
「いやどれだよ?!」
マリアの言葉にディーノは思わずツッコミを入れる。
“ディーノも身に覚えあるんじゃない?”
その言葉の意味をディーノ自身分からないわけではない。
ディーノにも試された事が有る薬と言うわけだ…が、ディーノ自身何年もマリアの実験台に強制的にされてきたのだ。
どの薬かなんて分かるわけもなく、ただただ恨めしそうにこの部屋の持ち主である誰かのベッドに腰掛けマリアへと視線を向ける。
『…あたしが停学処分くらいそうになった時の薬』
「ま…まさかそれ…惚れ薬か」
マリアの言葉に、ディーノは目を見開き、身震いをする。
当時を知らないロマーリオは「お嬢が停学処分?」と首を傾げながらマリアの方へと視線を向けた。
学生時代の話をマリアはロマーリオにした事はほとんどなかったが、どうやらディーノもロマーリオには話していなかったらしい。
青ざめたまま身震いするディーノをよそに、マリアが代わりにロマーリオに説明をする。
『学生時代に惚れ薬作ったんだけど、作ったら試したくなるじゃない?ちゃんと成功してるのかとか効き目具合とか』
「言わんとしてる事は分からんでもないが…」
『ディーノ達に協力してもらったんだけど効き目が強すぎてね~…学校中の生徒巻き込んじゃったのよね~』
あははと笑いながら説明するマリアに、青ざめたまま(協力じゃなくて強制だっただろ?!)とディーノは心の中でツッコむ。
口に出してツッコミを入れたかったが、当時の恐怖を思い出し、ディーノは口に出来ずにただ震えた。
惚れ薬と言うぐらいだから基本は異性が反応する物…と言う認識だったがマリアが作った惚れ薬は異性だけでなく老若男女問わずにその効果を発揮した。
その結果モルモットとして惚れ薬を使われたディーノとスクアーロのニ人に学校中の生徒が群がった。
ある者は熱烈な愛を囁き、またある者は邪魔者を消そうと殺し合いをしかける等、学校の中とは言えないほど血生臭い事になりかねた。
生徒だけでなく教員すら巻き込んだのだ、いくらマフィア候補生を集めた学校と言えど流石にマリアがした事は度が過ぎていたのだ。
「…それで停学処分は結局くらわなかったのか…?」
『くらわなかったわよ?記憶消す薬ばら撒いて無かったことにしたもの』
にこっと笑いながら話すマリアに、好奇心は猫を殺すと言う言葉がロマーリオの脳内を駆け巡る。
哀れんだ目でディーノへと視線を向け、ロマーリオはポンとディーノの肩に無言で手を置いた。
記憶を消す薬をばら撒いた辺り覚えているのはマリアとリボーン…そして青ざめているディーノと同級生であるスクアーロの四人。
昔懐かしい思い出に充分浸り、マリアは『さてと…』と言いながらプライベート用の携帯を取り出す。
リボーンに頼まれていた物を渡し、思い出話にも浸った所でマリアの用事は終わったのだ。
これ以上日本に長居する用事もなければ予定もなく、とんぼ返りになるのも気にせずに次のフライトの時間を調べようとする。
そんなマリアの行動をまるで見透かしたように、「帰るなよマリア」とリボーンは釘を指す。
『な、何でよ…』
「マリアにはもう一個やって欲しいことがあるんだ」
『聞いてないんだけど?!』
「今言ったからな」
悪びれもせず、リボーンは言葉を続ける
「マリアも見てけ、俺の生徒をな」
そう言って、またにっと笑った。
2024/08/30
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