不器用な恋
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扉を開け中に入って来たロマーリオはマリアとディーノの姿を見るなり開口一番に言葉を紡いだ。
「何だ?ようやくボスとお嬢は両想いになったのか?」
『「なっ?!」』
ロマーリオの言葉に、マリアもディーノも顔を赤く染まる。
時刻は朝の七時、お互い想いを告げたのはつい数時間前の事だ。
勿論その事を知っているのはマリアとディーノの二人のみである。
時間も時間だったのだ、自分達以外知らないはずの事を何故か直ぐ気づき言葉にしたロマーリオに驚いてしまうのも仕方がない。
何で、どうしてと言葉にしようとするそんな二人を見ながら「いやー、めでてぇーな」とニヤニヤとロマーリオは笑った。
「何でロマーリオ知ってんだよ…俺まだ何もお前に言ってねぇーのに?」
「そりゃあ見りゃ分かるだろ。何年ボスとお嬢を近くで見て来たと思ってんだ…それに」
『それに…?』
「無意識なのかもしれねぇーが手繋いでるの見たらそりゃ進展したんだなと思っても何一つおかしくないだろ」
指摘されれば思わずマリアもディーノも繋いでいた手を離す。
言われてみれば確かにマリアとディーノが手を繋いでいるなんて事は滅多にない。
どちらかの意識がなければお互い黙って手を繋ぐ事はあれど、どちらの意識もあり起きているのだ。
病気で心寂しいわけでもない状況で手を繋いでいると言う事は、お互いの気持ちがようやく通じ合ったのだと察することが出来る。
何より部屋に入って来た時に感じたマリアとディーノの雰囲気が変わっていたのだ。
今までも傍から見ればバレバレだったのだ、想いが通じ合ったのなら余計周りで見ていた人間が気付かないなんて事はないだろう。
ロマーリオはマリア達の居る部屋の中に入ろうとした扉から大声で「おーい、ボスとお嬢ようやくくっついたってよ」と廊下に言い放つ。
「お、おいロマーリオ?!」
『ちょっとロマーリオ?!』
思わずロマーリオの行動に声をかけるが時は既に遅かった。
廊下の方からはロマーリオの言葉を聞いたディーノの部下がマリアとディーノが居る部屋へと押し寄せる。
「ようやくボスとお嬢くっついたのか!」
「いやー、長かったなぁ…もう少しかかると思ったが読みが外れたな」
「後十年くらいは平行線かと思ってたのに…俺街の人間にもこの事伝えてくるわ」
「俺達だけじゃなくて街の住人も皆ボスとお嬢の事心配してたもんな~」
マリアとディーノが居てもお構いなしに、ディーノの部下は口を揃えて思い思いに発言する。
皆古参故に小さい頃からマリアとディーノの事を見て来たのだ。
当然と言えば当然の発言だが、一応ディーノはキャバッローネ・ファミリーのボスだ。
ボスの前でそんな話をするなと思うが…こればかりは仕方がなくディーノは呆れたように言葉を紡ぐ。
「お前らな…」
「いいじゃねぇーかボス。今日はめでてぇー日なんだから大目に見てくれよ」
「こっちは何十年もやきもきしながら二人を見て来たんだ…うぅ、あんなに小さかったボスとお嬢がようやく結ばれたんだ…感慨深くなっちまうな」
「保護者としては少し物悲しいが…こっからが始まりだもんな」
「式はいつ上げる予定なんだボス?」
「それより入籍が先じゃねぇーか?」
次から次へと話題が移り、収拾がつかなくなってきたせいかディーノは呆れたままそんな部下を見る。
マリアに至っては現実逃避をするかのように『今日は晴れてるわね…』と、耳を塞ぎながら窓の外へと視線を向けていた。
何処か死んだ魚のような目をしているが今のマリアには関係ない。
この現実から少しでも目を背けられるならとディーノを置いて一人現実逃避に徹する。
当事者である本人達よりも、キャバッローネ・ファミリーの方が盛り上がっているのだからここで口を挟んだところで今はこの話題で持ちきりなのだから仕方がない。
「ボスとお嬢がくっついたって本当ですか!!!!」
ドタドタと足音を立てながら、キャバッローネ・ファミリーの中でも超が付くほどマリアとディーノの事が大好きなトマゾは満面の笑みで勢いよく部屋の中へ駈け込んで来た。
その後ろを追うようにアベーレが「トマゾ先輩仕事してくださいっ!」と息を切らせて入ってくる。
ディーノの記憶が正しければトマゾとアベーレは朝から街の見回りに行っていたはずなのに…と思うが深く考えるのを止めた。
「おいトマゾ、どっから湧いて出て来た…お前確か街の見回りに行ってなかったか?」
ディーノが考えていた事を代弁するかのようにロマーリオがトマゾに声をかければ、トマゾは「私の直感が早く屋敷に帰りなさいと告げていたので」と悪びれもなくロマーリオに話す。
要するに早めに見回りを終えたか…あるいは見回りの途中でトマゾはキャバッローネ・ファミリーの屋敷に戻って来たのだろう。
巻き込まれたアベーレを可哀そうな子を見るような目でロマーリオはつい見てしまう。
「ボスとお嬢がくっついたのはおめでたいですが…仕事してくださいトマゾ先輩!」
「アベーレ…仕事等後でも出来ますよ?今はそれよりもボスとお嬢が結ばれた事を祝う方が先決です」
「こうなっちまったトマゾはアベーレでも止めるのは無理か」
「もとはと言えば先輩方が僕に押し付けてきたからでしょ!!!」
ディーノの部下達が周りが盛り上がっている中、ロマーリオはマリアが居るベッドへと近づけば「お嬢」と声をかけた。
先程からマリアは窓の外へと視線を向け現実逃避していたが、現実へとあっけなく引き戻されてしまう。
『…何よ、ロマーリオ…』
「急で悪いんだが今日の夕方にボンゴレ側からお嬢と話がしたいと面会が来てるぜ」
「…ボンゴレからか?」
「あぁ、ボンゴレ九代目と…ヴァリアーのメンツも連れてくるらしいがな」
『ボンゴレ九代目が…何でわざわざ?』
ロマーリオの言葉に死んだ魚のような目を止め、マリアは思わず目を見開く。
事情を知るためにマリアと話す事は免れられない事だと思っていたが、まさかボンゴレ九代目であるティモッテオが直々に出向いてくるとは思わなかったのだ。
「さぁーな、俺も聞き返したが九代目が来るの一点張りだったからな」
「まぁ、傍から見ればマリアは一般人だしな…それも少なからず関係しているのかもしれねぇーな」
ディーノがロマーリオの言葉から憶測するが、その可能性が大きいだろうと眉を顰める。
マフィアの問題の一般人を巻き込んでしまったのだ。
いくらキャバッローネ・ファミリーのボスディーノの幼馴染と言えど、アレッシオが名ばかりの父親ではあったものの、マリアは傍から見ればただの一般人である。
マフィアとは何ら関係のない事には間違いが無いのだ…いくら仕事でマフィアの依頼を引き受けていてもマリア自身はマフィアではないのだから。
「大丈夫そうかマリア?」
不意にディーノがマリアの方へと視線を向け心配そうにマリアを見る。
血色のいい顔色に左足をのぞけばマリアは至って健康なのだ。
血を流し過ぎた事もあったがそれは輸血をし、今は落ち着いている。
左足だけ怪我をしていると言えど、それでもマリアはまだ目が覚めたばかりの病み上がりだ。
今日じゃなくても別の日にしたほうがいいのではないかとディーノは思うが、流石に同盟ファミリーではあるがティモッテオ直々に出向いてくるとなれば話は別である。
『大丈夫よ…それに、そう言うのは早い方があたしとしても助かるしね』
ディーノの言葉にマリアはそう答えながら、力なく笑った。
2024/11/21
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