不器用な恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※【ディーノside】
「…こ…こは…?」
ゆっくりと閉じていた瞳を開ければ、ディーノの視界には見慣れた天井が映る。
身体を起こし、辺りをきょろきょろと見渡してみればやはりディーノが今居る場所はディーノ自身の部屋だった。
「あれ…何で俺自分の部屋に居るんだ…?」
寝起きのせいかまだうまく頭が回らず、ディーノはそんな事を思いながら今の自分の姿を見下ろした。
普段寝る時に着ている白いTシャツに、下は黒いズボン。
マリアを助けに行った時の服装と違う事は一目見ればディーノ自身理解する。
窓へと視線を向ければ、太陽が高い位置に登っている。
時間帯的にお昼頃だろうと、そんな呑気な事をぼんやり思っているとふいにガチャリと音がディーノの耳に聞こえた。
扉の開かれる音につられ、ディーノは視線を扉の方へと向けるとそこには部下であり自分自身の右腕でもあるロマーリオの姿がディーノの目に映る。
「あれ、ロマーリオ…?」
ディーノが起きているとは思わなかったのだろう。
ロマーリオは一瞬驚いた表情をするものの「気がついたのか、ボス」と慌ててディーノの居るベッドへと駆け寄る。
「俺死んだはずじゃあ…え、もしかしてロマーリオお前も死んだのか…?」
そんなロマーリオに、ディーノはまだ上手く回っていない頭でそうロマーリオへと問いかける。
自分は心臓ではなく胸を撃たれたが、出血が酷かったはずだ。
流石にヴァルッセファミリーの屋敷から医者の居る場所まではどれだけ医療の心得があるロマーリオでも、ヴァリアー幹部であるスクアーロやルッスーリアが居ても手遅れになっていたことには変わりない。
それなのに何故傷を負っていないはずのロマーリオがディーノの傍に居るのか、ディーノは不思議でならなかった。
アレッシオ以外のヴァルッセファミリーは全員潰したはずだ。
まさか全員潰したと思っていたがヴァルッセファミリーの生き残りが居て運悪く射殺されてしまったのだろうかとも考えたがその可能性は低いだろう。
では何故ロマーリオがディーノと同じ場所に居るのだと考えるが、考えてもその理由が分からない。
一体何が起きているんだと、思いながらディーノはロマーリオを凝視してしまう。
見た所ロマーリオの身体には傷もなければ包帯も巻かれておらず、普段通り黒いスーツに身を包んだ姿だ。
じっとロマーリオを凝視するディーノに対し、ロマーリオは一つため息をつきながら口を開いた。
「あのな…勝手に人を殺すなよボス。……俺もボスも、ちゃんと生きてるぜ?」
「…生きてる…?」
ロマーリオの言葉を反芻し、それでも理解が出来ないディーノに対し「あぁ、ちゃんと生きてるぜ」と繰り返しロマーリオが言葉をかけた。
(生きてるって事は…死んでないって事か…)
ようやく自分は死後の世界にいるのではなく、現世にまだいる事を理解するやいなや「…って、ロマーリオ、マリアは!?マリアはどうしたっ!!!!」とベッドから抜け出そうとディーノが動く。
まだ生きているのだ、自分の事よりもマリアの事が気になって仕方がないディーノ。
そんなディーノに、ロマーリオは苦笑しながらもきちんと「安心しろボス、ちゃんとお嬢も生きてるから…」とマリアの様子を教えてくれた。
「…良かった」
ロマーリオの言葉に、ディーノは心底嬉しそうに頬を緩める。
当たり前だ、好きな人が生きていると分かれば誰だって嬉しいに違いない。
「マリアが無事で…良かった…」
「無事…と言っても、命に別状がないだけでまだ意識は戻ってねーけどな」
「…どういう事だ?」
「簡単に言えば血の流し過ぎだ。止血するのが遅かったせいで身体に十分な血が足りてねぇーんだよ。…医者に輸血してもらったから命が危ない状態は脱しているが…まだ意識は戻ってねぇ…。精神的なものも…大なり小なり関与してるんじゃねぇーかって、言ってたぜ」
「……そうか」
精神的なものもあるだろうと、マリアに輸血をしてくれた医者が言っていたが少し考えればそれもそのはずだ。
自分を捨てた名ばかりの親に会い、ヴァルッセファミリーの屋敷まで自らの意思ではあれど連れて行かれた。
シャタンファミリーの元ボスであるカモラと何を話したかまでは分からないが、それでも気を張り詰めていたに違いない。
身体の傷は左足だけだが、精神的なものとなればまた話は変わってくるのだから―――…
「んで、ボスについてだが……取り敢えず聞いてくれてボス」
マリアの話からディーノの話へと変わり、先ほどと同じようにロマーリオはディーノをじっと見る。
「驚くかもしれねぇーが…」と前置きをして、再びロマーリオは言葉を紡ぐ。
「医者が言うには…本当に銃で撃たれたのか?って位ボスの身体に異常はねぇとさ」
「…は…?」
ロマーリオの言葉に、ディーノは腑抜けた声を漏らす。
当たり前だ、自分はマリアを庇いアレッシオに撃たれたのだ。
心臓ではなく胸を撃たれたが、それでも危ない状態だったはずだ。
それがまさかの身体に異常はないと言われてしまったのだから腑抜けた声を漏らしてしまうのも致し方ないことだろう。
「ボスもお嬢同様血が足りてない部分もあるが…お嬢よりは遥かにマシで、飯食って栄養補給すれば事足りるらしい」
「は…?」
ロマーリオの言葉に再度ディーノは拭抜けた声を上げる。
その程度で回復するのかとやはり思ってしまうのだ、自分が起きる前の状況からしたら。
「ヴァルッセファミリーを潰してまだ一日しか経ってないが…ボス、今身体に痛みはあるか…?」
「え…否ねぇーけど…」
ロマーリオの言葉にそう言えば銃で胸を撃たれたのに痛みも何もないなと、ディーノは気付く。
麻酔が効いているのだろうかとも思ったが、それにしたって自分がこんなにもピンピンしているのは確かにおかしいのだ。
“身体に異常はない”とロマーリオの言葉自体未だ上手くディーノの脳は処理が出来ていない。
訳がわからず、ただしっとロマーリオの顔を見ているとロマーリオもどう説明すればいいのかと悩んだ素振りを見せる。
「…自分の着てる服、捲って見てみなボス。多分そっちのほうが…まだ理解できるだろ」
「……」
ロマーリオに言われるまま、ディーノは自身の服を捲る。
一体どういう事だと思いながら捲り、自分の胴体を見ればディーノの鳶色の瞳が普段よりも大きく見開かれる。
「…な…んで…」
声を震わせながら、ポツリと呟く。
何度瞬きをしようが、目を擦ろうが…ディーノの目が正常だった。
ディーノの目には、銃の痕など、まるで最初からなかったかのように綺麗な上半身が鳶色の瞳に映る。
「…なんで、どういう事だよ…っつ」
マリアを庇い確かにディーノはアレッシオに撃たれたはずだ。
撃たれた感覚も、痛みも、忘れるはずがない。
自分の身体から血が溢れ、冷たくなっていく感覚すらディーノは覚えている。
だがそれが全部夢だったのかと錯覚してしまうほど…銃の跡も痛みもどこにもなかった。
じっと自分の身体を見つめるディーノに対し、ロマーリオはゆっくりと口を開く。
「ボスが意識失ってから…お嬢がボスに薬を飲ませたんだよ」
「薬?」
「あぁ、俺達はその薬がボスを瀕死の状態からここまで回復させたと睨んでる」
「…一体なんの薬を俺に飲ませたんだよ?」
「さぁーな、こればかりはマリアお嬢に聞かねえと分からん。ボスに飲ませた薬は、あれだけだったからな」
そう言ってロマーリオは携帯を開いては先程受診したメールを開きじっと文面を見る。
スクアーロやルッスーリアの伝手を使い、ボンゴレ機関でもマリアが持っていた薬について調べてもらったのだ。
マリアの白衣のポケットには、ディーノに使われた薬を含め三つの小瓶が入っていた。
一つ目の小瓶に入っていた薬は、睡眠薬。
睡眠薬に関しては日本に向かう最中にディーノの飲み物に入れた物の残りだと言うことは、ロマーリオ自身薬の量を見れば察しがついた。
そしてその小瓶はロマーリオも割と目にした事があった物だから間違いないだろう。
二つ目の小瓶の中身は解毒薬だ。
解毒薬は…マリアにとってお守りみたいな物であり、ある種のトラウマから自分を守るためのである。
目の前で母親が毒殺されたのだ、もうそんな思いをしたくないとマリアが常日ごろから持ち歩いている事くらいディーノもロマーリオも勿論知っている。
それは本人に聞いた事があるのだから解毒薬である事に間違いない。
だが三つ目の小瓶の中の薬については…調べる事すらできなかった。
当たり前だ、その小瓶の中の薬はディーノに飲ませてしまったのだから。
一滴位は残っているだろうと淡い期待を胸に調べてもらったが…流石に調べるのが不可能なレベルだったため結局何の薬自体か分からず終いだ。
(お嬢には感謝してるが…とんでもねぇーもん見せられちまったからなぁ…)
人間業ではなし得ないのだ。
ヴァリアーの面々ですら驚くほどなのだからマリアの作った薬はよっぽどなのだろう。
勿論口外はしないとあの場に居たメンバーは互いに胸の中に秘める事にはなったが、それでも信じられないものを見たと言う気持ちの方が強い。
あんな薬を作れるのだからそれこそマリアを狙う人間が増えるのではないかと思ってしまうのだ。
マフィアからも、一般人からも…喉から手が出るほど欲しい薬を作れるのだから。
(そういやボスにお嬢が薬を飲ませたって言ったが…口移しでとは言ってねぇーな…)
あの時の事を思い出し、ロマーリオは口を噤む。
応急処置…もとい薬を飲ませるために口移しでディーノに飲ませた事を本人に言うか言わないか悩み所だ。
意識のない人間にしたと言う事もあるが応急処置の一環に過ぎない。
(流石にボスが不憫になっちまうから…黙っとくか)
そんな事を考えながら、頭をガシガシと掻きながらロマーリオはため息を付く。
「取り敢えず医者呼んでくるからもう一度ボスはちゃんと見てもらえ、ついでに病み上がりだから今日と明日くらいはゆっくり体を休めてくれ」
「休めっつたって…何処も異常がないなら別にいいだろ?」
「…念のため、な。せめて今日位はゆっくり身体を休めてくれよボス」
「でも!」
「ボス」
「……分かった」
まるで幼い子供を諭すように言うロマーリオに、ディーノは折れた。
ディーノ自身痛みも無ければ医者が診断したように“身体に異常はない”のだ。
身体に異常がないなら別にいいだろうとディーノ自身思ったが、それでもロマーリオから見ればディーノが撃たれたのをその目で見たのだ。
いくら身体に異常が無いと言えど、やはり心配なのだろう。
ディーノの言葉を聞けば「じゃ、安静にしとけよボス」と言いながらロマーリオはディーノの部屋を後にした。
2024/11/09
「…こ…こは…?」
ゆっくりと閉じていた瞳を開ければ、ディーノの視界には見慣れた天井が映る。
身体を起こし、辺りをきょろきょろと見渡してみればやはりディーノが今居る場所はディーノ自身の部屋だった。
「あれ…何で俺自分の部屋に居るんだ…?」
寝起きのせいかまだうまく頭が回らず、ディーノはそんな事を思いながら今の自分の姿を見下ろした。
普段寝る時に着ている白いTシャツに、下は黒いズボン。
マリアを助けに行った時の服装と違う事は一目見ればディーノ自身理解する。
窓へと視線を向ければ、太陽が高い位置に登っている。
時間帯的にお昼頃だろうと、そんな呑気な事をぼんやり思っているとふいにガチャリと音がディーノの耳に聞こえた。
扉の開かれる音につられ、ディーノは視線を扉の方へと向けるとそこには部下であり自分自身の右腕でもあるロマーリオの姿がディーノの目に映る。
「あれ、ロマーリオ…?」
ディーノが起きているとは思わなかったのだろう。
ロマーリオは一瞬驚いた表情をするものの「気がついたのか、ボス」と慌ててディーノの居るベッドへと駆け寄る。
「俺死んだはずじゃあ…え、もしかしてロマーリオお前も死んだのか…?」
そんなロマーリオに、ディーノはまだ上手く回っていない頭でそうロマーリオへと問いかける。
自分は心臓ではなく胸を撃たれたが、出血が酷かったはずだ。
流石にヴァルッセファミリーの屋敷から医者の居る場所まではどれだけ医療の心得があるロマーリオでも、ヴァリアー幹部であるスクアーロやルッスーリアが居ても手遅れになっていたことには変わりない。
それなのに何故傷を負っていないはずのロマーリオがディーノの傍に居るのか、ディーノは不思議でならなかった。
アレッシオ以外のヴァルッセファミリーは全員潰したはずだ。
まさか全員潰したと思っていたがヴァルッセファミリーの生き残りが居て運悪く射殺されてしまったのだろうかとも考えたがその可能性は低いだろう。
では何故ロマーリオがディーノと同じ場所に居るのだと考えるが、考えてもその理由が分からない。
一体何が起きているんだと、思いながらディーノはロマーリオを凝視してしまう。
見た所ロマーリオの身体には傷もなければ包帯も巻かれておらず、普段通り黒いスーツに身を包んだ姿だ。
じっとロマーリオを凝視するディーノに対し、ロマーリオは一つため息をつきながら口を開いた。
「あのな…勝手に人を殺すなよボス。……俺もボスも、ちゃんと生きてるぜ?」
「…生きてる…?」
ロマーリオの言葉を反芻し、それでも理解が出来ないディーノに対し「あぁ、ちゃんと生きてるぜ」と繰り返しロマーリオが言葉をかけた。
(生きてるって事は…死んでないって事か…)
ようやく自分は死後の世界にいるのではなく、現世にまだいる事を理解するやいなや「…って、ロマーリオ、マリアは!?マリアはどうしたっ!!!!」とベッドから抜け出そうとディーノが動く。
まだ生きているのだ、自分の事よりもマリアの事が気になって仕方がないディーノ。
そんなディーノに、ロマーリオは苦笑しながらもきちんと「安心しろボス、ちゃんとお嬢も生きてるから…」とマリアの様子を教えてくれた。
「…良かった」
ロマーリオの言葉に、ディーノは心底嬉しそうに頬を緩める。
当たり前だ、好きな人が生きていると分かれば誰だって嬉しいに違いない。
「マリアが無事で…良かった…」
「無事…と言っても、命に別状がないだけでまだ意識は戻ってねーけどな」
「…どういう事だ?」
「簡単に言えば血の流し過ぎだ。止血するのが遅かったせいで身体に十分な血が足りてねぇーんだよ。…医者に輸血してもらったから命が危ない状態は脱しているが…まだ意識は戻ってねぇ…。精神的なものも…大なり小なり関与してるんじゃねぇーかって、言ってたぜ」
「……そうか」
精神的なものもあるだろうと、マリアに輸血をしてくれた医者が言っていたが少し考えればそれもそのはずだ。
自分を捨てた名ばかりの親に会い、ヴァルッセファミリーの屋敷まで自らの意思ではあれど連れて行かれた。
シャタンファミリーの元ボスであるカモラと何を話したかまでは分からないが、それでも気を張り詰めていたに違いない。
身体の傷は左足だけだが、精神的なものとなればまた話は変わってくるのだから―――…
「んで、ボスについてだが……取り敢えず聞いてくれてボス」
マリアの話からディーノの話へと変わり、先ほどと同じようにロマーリオはディーノをじっと見る。
「驚くかもしれねぇーが…」と前置きをして、再びロマーリオは言葉を紡ぐ。
「医者が言うには…本当に銃で撃たれたのか?って位ボスの身体に異常はねぇとさ」
「…は…?」
ロマーリオの言葉に、ディーノは腑抜けた声を漏らす。
当たり前だ、自分はマリアを庇いアレッシオに撃たれたのだ。
心臓ではなく胸を撃たれたが、それでも危ない状態だったはずだ。
それがまさかの身体に異常はないと言われてしまったのだから腑抜けた声を漏らしてしまうのも致し方ないことだろう。
「ボスもお嬢同様血が足りてない部分もあるが…お嬢よりは遥かにマシで、飯食って栄養補給すれば事足りるらしい」
「は…?」
ロマーリオの言葉に再度ディーノは拭抜けた声を上げる。
その程度で回復するのかとやはり思ってしまうのだ、自分が起きる前の状況からしたら。
「ヴァルッセファミリーを潰してまだ一日しか経ってないが…ボス、今身体に痛みはあるか…?」
「え…否ねぇーけど…」
ロマーリオの言葉にそう言えば銃で胸を撃たれたのに痛みも何もないなと、ディーノは気付く。
麻酔が効いているのだろうかとも思ったが、それにしたって自分がこんなにもピンピンしているのは確かにおかしいのだ。
“身体に異常はない”とロマーリオの言葉自体未だ上手くディーノの脳は処理が出来ていない。
訳がわからず、ただしっとロマーリオの顔を見ているとロマーリオもどう説明すればいいのかと悩んだ素振りを見せる。
「…自分の着てる服、捲って見てみなボス。多分そっちのほうが…まだ理解できるだろ」
「……」
ロマーリオに言われるまま、ディーノは自身の服を捲る。
一体どういう事だと思いながら捲り、自分の胴体を見ればディーノの鳶色の瞳が普段よりも大きく見開かれる。
「…な…んで…」
声を震わせながら、ポツリと呟く。
何度瞬きをしようが、目を擦ろうが…ディーノの目が正常だった。
ディーノの目には、銃の痕など、まるで最初からなかったかのように綺麗な上半身が鳶色の瞳に映る。
「…なんで、どういう事だよ…っつ」
マリアを庇い確かにディーノはアレッシオに撃たれたはずだ。
撃たれた感覚も、痛みも、忘れるはずがない。
自分の身体から血が溢れ、冷たくなっていく感覚すらディーノは覚えている。
だがそれが全部夢だったのかと錯覚してしまうほど…銃の跡も痛みもどこにもなかった。
じっと自分の身体を見つめるディーノに対し、ロマーリオはゆっくりと口を開く。
「ボスが意識失ってから…お嬢がボスに薬を飲ませたんだよ」
「薬?」
「あぁ、俺達はその薬がボスを瀕死の状態からここまで回復させたと睨んでる」
「…一体なんの薬を俺に飲ませたんだよ?」
「さぁーな、こればかりはマリアお嬢に聞かねえと分からん。ボスに飲ませた薬は、あれだけだったからな」
そう言ってロマーリオは携帯を開いては先程受診したメールを開きじっと文面を見る。
スクアーロやルッスーリアの伝手を使い、ボンゴレ機関でもマリアが持っていた薬について調べてもらったのだ。
マリアの白衣のポケットには、ディーノに使われた薬を含め三つの小瓶が入っていた。
一つ目の小瓶に入っていた薬は、睡眠薬。
睡眠薬に関しては日本に向かう最中にディーノの飲み物に入れた物の残りだと言うことは、ロマーリオ自身薬の量を見れば察しがついた。
そしてその小瓶はロマーリオも割と目にした事があった物だから間違いないだろう。
二つ目の小瓶の中身は解毒薬だ。
解毒薬は…マリアにとってお守りみたいな物であり、ある種のトラウマから自分を守るためのである。
目の前で母親が毒殺されたのだ、もうそんな思いをしたくないとマリアが常日ごろから持ち歩いている事くらいディーノもロマーリオも勿論知っている。
それは本人に聞いた事があるのだから解毒薬である事に間違いない。
だが三つ目の小瓶の中の薬については…調べる事すらできなかった。
当たり前だ、その小瓶の中の薬はディーノに飲ませてしまったのだから。
一滴位は残っているだろうと淡い期待を胸に調べてもらったが…流石に調べるのが不可能なレベルだったため結局何の薬自体か分からず終いだ。
(お嬢には感謝してるが…とんでもねぇーもん見せられちまったからなぁ…)
人間業ではなし得ないのだ。
ヴァリアーの面々ですら驚くほどなのだからマリアの作った薬はよっぽどなのだろう。
勿論口外はしないとあの場に居たメンバーは互いに胸の中に秘める事にはなったが、それでも信じられないものを見たと言う気持ちの方が強い。
あんな薬を作れるのだからそれこそマリアを狙う人間が増えるのではないかと思ってしまうのだ。
マフィアからも、一般人からも…喉から手が出るほど欲しい薬を作れるのだから。
(そういやボスにお嬢が薬を飲ませたって言ったが…口移しでとは言ってねぇーな…)
あの時の事を思い出し、ロマーリオは口を噤む。
応急処置…もとい薬を飲ませるために口移しでディーノに飲ませた事を本人に言うか言わないか悩み所だ。
意識のない人間にしたと言う事もあるが応急処置の一環に過ぎない。
(流石にボスが不憫になっちまうから…黙っとくか)
そんな事を考えながら、頭をガシガシと掻きながらロマーリオはため息を付く。
「取り敢えず医者呼んでくるからもう一度ボスはちゃんと見てもらえ、ついでに病み上がりだから今日と明日くらいはゆっくり体を休めてくれ」
「休めっつたって…何処も異常がないなら別にいいだろ?」
「…念のため、な。せめて今日位はゆっくり身体を休めてくれよボス」
「でも!」
「ボス」
「……分かった」
まるで幼い子供を諭すように言うロマーリオに、ディーノは折れた。
ディーノ自身痛みも無ければ医者が診断したように“身体に異常はない”のだ。
身体に異常がないなら別にいいだろうとディーノ自身思ったが、それでもロマーリオから見ればディーノが撃たれたのをその目で見たのだ。
いくら身体に異常が無いと言えど、やはり心配なのだろう。
ディーノの言葉を聞けば「じゃ、安静にしとけよボス」と言いながらロマーリオはディーノの部屋を後にした。
2024/11/09
72/78ページ