不器用な恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「よし、これで一応止血はしたが…あんまり無理すんなよ?お嬢。止血するまでに結構な量の血が出たはずだからな」
『…ありがとう、ロマーリオ』
そう言いながらロマーリオが止血してくれた足を見ながら、マリアはロマーリオにお礼を言う。
スクアーロ達が交戦している場所から少し離れ下ろしてもらえば、ロマーリオが手際よくマリアの足を止血した。
いつかの包帯をぐるぐると巻き過ぎた時とは違う、きちんと加減をして綺麗にマリアの足には包帯が巻かれている。
手早くロマーリオが止血したが、止血するまでに相当の血を流したのだ。
いつ倒れても仕方ない状況だと言う事だけを、マリアに言い聞かせる。
「立てるかマリア…?」
『なんとか…』
そう言いながらマリアが立ち上がろうとするがやはり痛みのせいか上手く立つことが出来ずふらついてしまう。
マリアが痛みに顔を歪めた表情をディーノは見逃さず、すかさずディーノがマリアの身体を支える。
「無理すんな、俺がおぶってく」
『そこまで…ディーノに、迷惑かけられないわよ?』
「馬鹿だな、こんな時位甘えとけよ」
そう言いながら、ディーノは苦笑する。
ディーノに支えられなんとか立っているが、やはり立っているのがしんどいのかマリアはずるずるとその場にへたり込む。
へたり込んだマリアは眉間に眉を寄せ、痛みを必死に我慢している様子が窺える。
(早く医者に見せねぇーとな…)
ロマーリオが止血を施したと言えど、流石に血を流し過ぎているのだ。
痛みが止まるわけでもない事位、ディーノだって分かっている。
「ゔお゙ぉい!!!!もういいか、跳ね馬!」
「あぁ、もうこっちは大丈夫だ!」
スクアーロ達の方へと目を向ければ、アレッシオの肩や太ももからは血が流れ出ている。
荒々しく呼吸をするが、出血のし過ぎで相当体力も消耗しているはずだ。
避けたり銃を撃つ動きが鈍くなり、スクアーロの剣を避けきれずにアレッシオは正面から食らってしまう。
―――ザシュッツツ!!!
血肉がはじける音と共に、アレッシオの胴体から血が飛び散った。
先程からそれなりの量の血を垂れ流していると言うのに、アレッシオはそれでも尚立ち続け、スクアーロ達を脇腹を押さえながら睨み続ける。
「そうか…なら、そろそろ終わりにしようじゃねぇーか!!!」
けたたましい声と共に、スクアーロが剣を払う。
先程付着したアレッシオの血がピシッと言いながら床に付く。
どうやら決着はもうすぐ着くようだ。
スクアーロの言葉にアレッシオは「…クソッ」と悪態を付きながらも辺りを見渡す。
アレッシオは前後にはスクアーロとルッスーリア、左右をトマゾとアベーレが塞いでいるのでアレッシオの逃げ道は何処にもない。
ましてやアレッシオを助けに来る部下は誰一人としていないのだ。
「…ッツ…フン…舐めるなよガキ共」
アレッシオは息を荒くしながらもスクアーロに銃を構える。
が、次の瞬間勢いよくスクアーロから銃口を逸らし、パァァンッ!!!!と音を立ててアレッシオは銃を撃った。
その銃弾は銃口を向けられていたスクアーロでもルッスーリアでも、ましてやトマゾやアベーレに向けられず…マリアに向けて放たれる。
立っているのもやっとだろうと言う程の怪我を負っているのにもかかわらず、アレッシオが放った銃弾は真っすぐとマリアを目がけていた。
「…っ、マリア!!!!」
『…え?』
咄嗟にディーノがマリアの名を叫び、マリアを庇うようにディーノの身体がマリアの前に出る。
「っつ」
『ディー…ノ…っつ?!』
マリアを庇うように前に出れば、マリアに向けて放たれた銃弾がディーノの胸を貫いた。
まるでスローモーションの様に見えていたその瞬間、ディーノの胸から血が溢れ、ピシャッとマリアの頬に飛び散る。
何が起こったのか、マリアは一瞬理解できなかった。
『っつ…なん…で』
倒れるかのようにマリアに覆いかぶさるディーノをぎゅっとマリアは抱きしめたまま、マリアの頭の中は真っ白になる。
『な…んで、ディーノ…あたしなんて…庇って…』
何故?どうして?そんな言葉がマリアの中に何度も繰り返すように広がって行く。
大きく目を見開き、口から出るのはそんな言葉だけだ。
今にも泣きそうな表情でマリアがディーノを見ればディーノは笑っていた。
「何…泣きそうな顔してんだよ…マリア」
『だって、だってディーノ血が…何で、何で庇って…』
「…惚れた女一人守れねーで…好きなんて…、言えるかよ…っ」
『…ぇ…』
「マリア…お前は知らないかもしれねぇーけど…っ、俺は…ずっと、ずっと昔から…マリアの事が好きなんだよ」
途切れ途切れに言う言葉に、マリアは自分の耳を疑う。
こんな時に目の前の男は何を言ってるんだと思ったが、そう言わざる負えない状況なのだ。
嬉しい反面、どうして今そんな事を言うの?と知らぬうちに瞳からポロリポロリと涙が零れる。
『…ディー…ノ…』
「っつ、…マリアにっ、悲しそうな顔は…似合わない、んだから…っ、笑って、てくれ…」
時折口から血を吐き出し、それでも変わらず優しいディーノの鳶色の瞳がマリアを見つめる。
銃で撃たれ痛いはずなのに、苦しいはずなのに、ディーノは笑顔のままだ。
「ははっ…最後に…ゴホッ、マリアに言えてっ…良かった…」
それだけ言い残し、最後まで笑顔を絶やす事なくディーノの身体はマリアの肩にもたれかかる。
意識を手放したのかマリアの肩にもたれかかるディーノの身体は一気に重くなった。
『ディーノ…っ、ディーノ起きてよ?ねぇ…ディーノっ?!』
意識を手放したディーノにそう言ってマリアは目から涙を零しながらディーノの身体を揺する。
揺すった所で、ディーノが目を覚ます事も反応する事がない事位マリアだって分かっていた。
だが頭では分かっていても心は追いついていないのだ、今の現状を受け入れることが出来ず何度もディーノの名を呼ぶ。
ディーノのモッズコートの中に来ている白色のTシャツが赤く、赤く染まっていくのを見れば、涙はマリアの意思とは関係なくさらに溢れる。
『っつ、ディーノ!起きてよねぇ…ディーノは言えたかもしれないけど…あたしは、あたしはまだ返事すらしてないのよ?!』
泣きじゃくりながらマリアは叫ぶ。
ディーノは先程自分の気持ちを伝えたがその言葉にマリアは返事をしていない。
否、出来る状況でもなければディーノの意識はもうないのだ。
仮に返事をした所で意識がない人間に言っても意味等ない。
―――「マリアお前な…言い逃げすんなよ」
不意に、以前ディーノがマリアに言った言葉が脳裏を過る。
言い逃げをしたマリアに対し、ディーノは言い逃げをするなと言ったのだ。
だが、それが今回は逆だ。
マリアの返事すら聞かず、ディーノが遠くへと行こうとしている。
自分はまだ返事すらしていないのに、だ。
あの時マリアに言った言葉を、言った本人が言い逃げするのはマリア自身納得がいかない。
怒りはしていないがディーノ同様、マリアは聞いてほしいのだ。
自分が言うはずだった言葉を、返事を――――…
『…言い逃げなんて、絶対許さないから…っつ!!!』
冷たく、血の気を失っていくディーノの身体をマリアは仰向けに寝かせる。
周りの状況など気にせずに、マリアは白衣のポケットから小瓶を取り出した。
どこにでもありそうなガラスの小瓶。
コルクで蓋をされており、中身の液体が出ないようにカッチリと栓がされている。
中身の液体は何の変哲もない、ただの透明な液体。
無味無臭のそれはマリアが作った薬であり、使う日が来なければいいと思いながらも何が起こるか分からないが故にずっと持ち歩いている薬だ。
ポンッとコルクを抜けば、マリアはそれをディーノが撃たれた胸に小瓶の中身を半分かける。
残り半分を自分の口に含めば、ディーノの気道を確保し自分の唇をディーノの口を覆う。
口の中に含んだ液体をゆっくりとディーノへと移し、飲ませる。
『…っ、はぁ…ディー…ノ』
口移しをし、ディーノが薬を飲んだことを確認すれば、マリアはほっと胸を撫で下ろす。
きっと大丈夫、そう信じてマリアはディーノに飲ませたのだ。
紅白衣として、ルーナとして培った知識を全て注ぎ込んだ薬を…。
『っつ…』
ほっとすれば、マリアの視界がくらくらと揺れはじめていく。
ロマーリオが言ったように無理をし過ぎたのだろう…止血されるまでに大量の血を流し、血は減った状態なのだ。
失った血液を補われていないため、身体に十分に血が巡らない。
しだいにマリアの視界が揺れて行く。
(やっぱり…無茶、しすぎたかな…)
先ほどまでディーノをどうにかしなければと言う気力だけで意識を保っていたが、それも終えてしまったのだ。
ほっと安心した拍子に、力が抜けマリアの身体はフラフラと左右に揺れる。
(次に目が覚めたら…ちゃんと…あたしの言葉も…聞いて、よ…ね…)
薄れていく意識の中、マリアは最後にそう思いながら意識を手放した。
重力に逆らえず、仰向けに寝かせていたディーノの上にマリアは倒れ込む。
ディーノ同様マリアの顔からも血の気が引いているせいか青白い。
周りで、ロマーリオやトマゾ、アベーレに、スクアーロ、ルッスーリアが何かを言っているが…今のマリアにはその声を聴く事は出来なかった――――…
2024/11/07
69/78ページ