不器用な恋
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※【ディーノside】
「にしても、スクアーロ達が言ってたみたいに相当ヤバイファミリーに落ちたもんだな…」
ガサリと書類を捲りながらディーノは眉間に皺を寄せた。
今ディーノが手に持っているのはジェット機に乗る前に他の部下がトマゾが送ったデータを印刷し、ディーノに渡したものだ。
書類は厚みがあり本来であればそこまでの厚さになるようなものではない。
ファミリーの人間全員を載せているわけではなく、どんなファミリーなのかをまとめたものだ。
だが、ツナの部屋でスクアーロ達が「ヤクに人身売買、非人道的な事しかやらねぇー組織」と言っていたようにそんな内容がぎっしりと書き込まれていた。
麻薬取引から始まり殺人密輸は当たり前、売春、賭博、人身売買、非人道的な行為の数々が書類に見ればきりがないほど書かれている。
書類一枚目に目を通した時点でディーノは目を逸らしたくなるような内容ばかりだ。
最後まで目を通しはしたが…流石に気分が悪くなる。
幼い頃はそれこそどんなファミリーなのか知りもしなかった…だからこそ余計にだ。
「…シャタンファミリーの方はどうなんだ?」
書類からようやく目を離し、シャタンファミリーの事が記載されている書類に目を通すロマーリオに問えば、同じく「こっちもこっちでヤバイぜ、ボス」と溜息を零す。
「ヴァルメリオファミリーほどとまではいかないが…麻薬取引に殺人、人身売買と主に人体実験系だな」
「人体実験?」
「あぁ…シャタンファミリーのボス…カモラって言うやつが部下に子供を誘拐させていろいろ実験してたみたいだ。…もっとも、こいつもお嬢と同じく科学者みたいだな」
「…科学者…か」
そう言ってロマーリオがディーノに書類を渡す。
そこには確かにカモラの事項に科学者と書かれていた。
カモラに関する事項はこれと言って特筆すべき箇所はない上に内容がほとんど書かれていない。
アレッシオとは大違いだなと一瞬思ってしまうが、それでもブラックリスト入りしているマフィア組織には違いないのだ。
シャタンファミリーについての書類を見ていると不意に、何かを思い出したかのようにロマーリオが呟く。
「そういやボス」
「どうした、ロマーリオ?」
「フィネスさんが亡くなる前に…呼び出し食らってたよな、確か?」
「ん、あぁ」
ロマーリオの言葉に、ディーノは思い出したかのように頷く。
「マフィアのボスを呼び出すなんて…お嬢の養親って何者なんですか?」
「はは、ただの画家だなフィネスさんは。…しかも小僧って呼ばれてたからなぁ、俺は」
思い返せば苦笑が零れる。
フィネスと出会った頃は確かにディーノ自身子供だった、幼かった故に小僧と呼ばれても仕方ないと思っていた。
だが時間が流れキャバッローネ・ファミリーの十代目ボスになった後でも、フィネスはお構いなしにディーノの事を小僧と呼ぶ。
「あの時ボスフィネスさんから何か聞いてなかったのか?ルーナ・ブルの事とか」
「…否、あの時はそんな話すらしてなかったからな…ただ、頼みたい事が有るって言ってただけだからな」
「頼みたい事?」
アベーレの言葉に、ディーノが書類を捲る手が止まる。
ロマーリオやアベーレに言われてふとその時の事を思い出す。
(あの時は確かマリアから電話があって…仕事終わりに寄ったんだよな…)
前日にマリアから電話があり、フィネスがディーノの事を呼んでいると連絡をもらったのだ。
特段親しいわけでもなく、何故ディーノを呼んだのだろうと呼ばれた時は本気で謎だった。
幼い頃もそうだがマフィアと繋がりがある子供が通う学校を卒業した後も、キャバッローネ・ファミリー十代目ボスとしてファミリーを背負うようになった後も…フィネスだけはディーノと顔を合わせれば不愛想な表情で睨んでいたのだ。
―――「…もしマリアに何かあったら…あの子を助けてやってくれ」
そう、紫色の瞳でじっとディーノを睨みつけながら言ったマリアの養親であるフィネスの言葉。
どうして今まで忘れていたのだろうと思うが、それは忘れると言うよりもディーノにとっては極々当たり前の事なのだ。
マリアが困っていたら助ける事も、マリアの為にディーノがやれる事をするのも…それはディーノに取って当たり前の事に過ぎないのだ。
フィネスの言葉を聞いた当時は、勿論マリアの事を心配して言ったのだろうとディーノは思っていた。
だが今思い返せば“何かあったら”の“何か”は何にでも受け取れるのだ。
病気をしたら、怪我をしたら、その“何か”の部分は相手の受け取り方次第で当てはめる言葉が変わってくる。
「…フィネスさんはもしかしたら…こうなる事を分かっていたのかもな…」
「どういう事だボス?」
持っていた書類から目を逸らし、ディーノは機内の窓の外へと視線を向ける。
フィネスもその言葉を紡いだ時、確か外を見ていたなとふと思い出す。
「“もしマリアに…何かあったら…マリアを助けてやってくれ”…って、最後に俺に言ったんだよ…あの人」
フィネスが見ていた景色とは違う景色を見ながら、ディーノはフィネスに言われた言葉を言葉にする。
その言葉は子を思う親の言葉だった。
血の繋がりがない、マリアを拾って育てた養親。
それでもフィネスの言葉は本当に我が子を思う気持ちで紡いだ言葉だ。
「…ボスに言ったのか?」
「…あぁ…」
「どういう事ですか?僕からしたら特に驚くような言葉ではないと思うんですが…?」
ディーノとロマーリオのやり取りに疑念を抱き、アベーレは思わず言葉にする。
先程ディーノから聞いた言葉は我が子を思う親の気持ちなら当然だとアベーレは思う。
ディーノが何時からマリアに想いを寄せているのかは分からないが、それでも昔から想いを寄せていたのなら恐らくマリアの養親であるフィネスも知っているのだろうとアベーレは推測する。
そう言う意味合いでの助けてやってくれと言うディーノの事を認めているものだとアベーレは思った。
だがロマーリオが驚き、ディーノはそれに対して苦笑交じりで答えたのだ。
何も知らないアベーレはどういうことですか?と聞きたくて仕方がない。
「アベーレは二年前にうちに入ったばっかだから知らなくて当然か…。フィネスさんはな、よくボスの事睨んでたんだよ」
「睨むんですか…?」
「あぁ。…こんな感じで眉間に皺を寄せてじっとボスの事睨んでたんだぜ」
そう言ってロマーリオは眉間に皺をよせ、当時の事を思い返しながらアベーレに説明する。
マリアと再会してフィネスを紹介されてからずっと、最後の最後までフィネスがディーノを睨んでいた事。
よくフィネスからつっかかってはディーノと喧嘩ではないにしろ言い争いのような事が有った事。
「だからフィネスさんが正直ボスに頼み事する…と言うか、お嬢を託すような言葉に驚いちまってな」
「…それなら吃驚するでしょうね…」
ロマーリオの発言に納得がいき、確かにとアベーレも頷く。
「結局何でフィネスさんはうちのボスの事睨んでたんですかね?」
「さぁな。睨んでいたにしても、それ相応の理由があるだろうよ」
「…ボスの容貌に嫉妬したとかですか?」
「それはあるかもな?うちのボスは容姿もいいからな」
「でもフィネスさんも結構整った容姿してましたよね」
「あれじゃねぇーか?無い物ねだり見たいなやつで睨んでたとか」
睨んだ理由が分からずあれこれと考えるロマーリオとアベーレ。
確かにディーノの容貌は整ってはいるがそれはフィネスにも言える事だ。
フィネスの場合はどちらかと言えば女性寄りの容姿なためか、よく性別を間違われていたが…。
(まぁ、睨まれてた理由も…その時に教えてもらったけどな)
そんな二人の会話を聞きつつも、その理由をディーノがロマーリオとアベーレに説明する事はなかった。
2024/10/26
「にしても、スクアーロ達が言ってたみたいに相当ヤバイファミリーに落ちたもんだな…」
ガサリと書類を捲りながらディーノは眉間に皺を寄せた。
今ディーノが手に持っているのはジェット機に乗る前に他の部下がトマゾが送ったデータを印刷し、ディーノに渡したものだ。
書類は厚みがあり本来であればそこまでの厚さになるようなものではない。
ファミリーの人間全員を載せているわけではなく、どんなファミリーなのかをまとめたものだ。
だが、ツナの部屋でスクアーロ達が「ヤクに人身売買、非人道的な事しかやらねぇー組織」と言っていたようにそんな内容がぎっしりと書き込まれていた。
麻薬取引から始まり殺人密輸は当たり前、売春、賭博、人身売買、非人道的な行為の数々が書類に見ればきりがないほど書かれている。
書類一枚目に目を通した時点でディーノは目を逸らしたくなるような内容ばかりだ。
最後まで目を通しはしたが…流石に気分が悪くなる。
幼い頃はそれこそどんなファミリーなのか知りもしなかった…だからこそ余計にだ。
「…シャタンファミリーの方はどうなんだ?」
書類からようやく目を離し、シャタンファミリーの事が記載されている書類に目を通すロマーリオに問えば、同じく「こっちもこっちでヤバイぜ、ボス」と溜息を零す。
「ヴァルメリオファミリーほどとまではいかないが…麻薬取引に殺人、人身売買と主に人体実験系だな」
「人体実験?」
「あぁ…シャタンファミリーのボス…カモラって言うやつが部下に子供を誘拐させていろいろ実験してたみたいだ。…もっとも、こいつもお嬢と同じく科学者みたいだな」
「…科学者…か」
そう言ってロマーリオがディーノに書類を渡す。
そこには確かにカモラの事項に科学者と書かれていた。
カモラに関する事項はこれと言って特筆すべき箇所はない上に内容がほとんど書かれていない。
アレッシオとは大違いだなと一瞬思ってしまうが、それでもブラックリスト入りしているマフィア組織には違いないのだ。
シャタンファミリーについての書類を見ていると不意に、何かを思い出したかのようにロマーリオが呟く。
「そういやボス」
「どうした、ロマーリオ?」
「フィネスさんが亡くなる前に…呼び出し食らってたよな、確か?」
「ん、あぁ」
ロマーリオの言葉に、ディーノは思い出したかのように頷く。
「マフィアのボスを呼び出すなんて…お嬢の養親って何者なんですか?」
「はは、ただの画家だなフィネスさんは。…しかも小僧って呼ばれてたからなぁ、俺は」
思い返せば苦笑が零れる。
フィネスと出会った頃は確かにディーノ自身子供だった、幼かった故に小僧と呼ばれても仕方ないと思っていた。
だが時間が流れキャバッローネ・ファミリーの十代目ボスになった後でも、フィネスはお構いなしにディーノの事を小僧と呼ぶ。
「あの時ボスフィネスさんから何か聞いてなかったのか?ルーナ・ブルの事とか」
「…否、あの時はそんな話すらしてなかったからな…ただ、頼みたい事が有るって言ってただけだからな」
「頼みたい事?」
アベーレの言葉に、ディーノが書類を捲る手が止まる。
ロマーリオやアベーレに言われてふとその時の事を思い出す。
(あの時は確かマリアから電話があって…仕事終わりに寄ったんだよな…)
前日にマリアから電話があり、フィネスがディーノの事を呼んでいると連絡をもらったのだ。
特段親しいわけでもなく、何故ディーノを呼んだのだろうと呼ばれた時は本気で謎だった。
幼い頃もそうだがマフィアと繋がりがある子供が通う学校を卒業した後も、キャバッローネ・ファミリー十代目ボスとしてファミリーを背負うようになった後も…フィネスだけはディーノと顔を合わせれば不愛想な表情で睨んでいたのだ。
―――「…もしマリアに何かあったら…あの子を助けてやってくれ」
そう、紫色の瞳でじっとディーノを睨みつけながら言ったマリアの養親であるフィネスの言葉。
どうして今まで忘れていたのだろうと思うが、それは忘れると言うよりもディーノにとっては極々当たり前の事なのだ。
マリアが困っていたら助ける事も、マリアの為にディーノがやれる事をするのも…それはディーノに取って当たり前の事に過ぎないのだ。
フィネスの言葉を聞いた当時は、勿論マリアの事を心配して言ったのだろうとディーノは思っていた。
だが今思い返せば“何かあったら”の“何か”は何にでも受け取れるのだ。
病気をしたら、怪我をしたら、その“何か”の部分は相手の受け取り方次第で当てはめる言葉が変わってくる。
「…フィネスさんはもしかしたら…こうなる事を分かっていたのかもな…」
「どういう事だボス?」
持っていた書類から目を逸らし、ディーノは機内の窓の外へと視線を向ける。
フィネスもその言葉を紡いだ時、確か外を見ていたなとふと思い出す。
「“もしマリアに…何かあったら…マリアを助けてやってくれ”…って、最後に俺に言ったんだよ…あの人」
フィネスが見ていた景色とは違う景色を見ながら、ディーノはフィネスに言われた言葉を言葉にする。
その言葉は子を思う親の言葉だった。
血の繋がりがない、マリアを拾って育てた養親。
それでもフィネスの言葉は本当に我が子を思う気持ちで紡いだ言葉だ。
「…ボスに言ったのか?」
「…あぁ…」
「どういう事ですか?僕からしたら特に驚くような言葉ではないと思うんですが…?」
ディーノとロマーリオのやり取りに疑念を抱き、アベーレは思わず言葉にする。
先程ディーノから聞いた言葉は我が子を思う親の気持ちなら当然だとアベーレは思う。
ディーノが何時からマリアに想いを寄せているのかは分からないが、それでも昔から想いを寄せていたのなら恐らくマリアの養親であるフィネスも知っているのだろうとアベーレは推測する。
そう言う意味合いでの助けてやってくれと言うディーノの事を認めているものだとアベーレは思った。
だがロマーリオが驚き、ディーノはそれに対して苦笑交じりで答えたのだ。
何も知らないアベーレはどういうことですか?と聞きたくて仕方がない。
「アベーレは二年前にうちに入ったばっかだから知らなくて当然か…。フィネスさんはな、よくボスの事睨んでたんだよ」
「睨むんですか…?」
「あぁ。…こんな感じで眉間に皺を寄せてじっとボスの事睨んでたんだぜ」
そう言ってロマーリオは眉間に皺をよせ、当時の事を思い返しながらアベーレに説明する。
マリアと再会してフィネスを紹介されてからずっと、最後の最後までフィネスがディーノを睨んでいた事。
よくフィネスからつっかかってはディーノと喧嘩ではないにしろ言い争いのような事が有った事。
「だからフィネスさんが正直ボスに頼み事する…と言うか、お嬢を託すような言葉に驚いちまってな」
「…それなら吃驚するでしょうね…」
ロマーリオの発言に納得がいき、確かにとアベーレも頷く。
「結局何でフィネスさんはうちのボスの事睨んでたんですかね?」
「さぁな。睨んでいたにしても、それ相応の理由があるだろうよ」
「…ボスの容貌に嫉妬したとかですか?」
「それはあるかもな?うちのボスは容姿もいいからな」
「でもフィネスさんも結構整った容姿してましたよね」
「あれじゃねぇーか?無い物ねだり見たいなやつで睨んでたとか」
睨んだ理由が分からずあれこれと考えるロマーリオとアベーレ。
確かにディーノの容貌は整ってはいるがそれはフィネスにも言える事だ。
フィネスの場合はどちらかと言えば女性寄りの容姿なためか、よく性別を間違われていたが…。
(まぁ、睨まれてた理由も…その時に教えてもらったけどな)
そんな二人の会話を聞きつつも、その理由をディーノがロマーリオとアベーレに説明する事はなかった。
2024/10/26
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