不器用な恋
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※【ディーノside】
マリアがヴァルメリオファミリー…正確にはヴァルッセファミリーに連れて行かれ、ディーノの心の中は色んな感情が渦巻いていた。
焦り、苛立ち、自己嫌悪…マリアの事となれば自分はそれだけ弱くなる。
部下が傍に居るはずなのにキャバッローネ・ファミリーのボスとしてのディーノではなく、ただのディーノに成り下がっていた。
―――『道に迷ったから迎えに来い』
それが、マリアからのたった一言だけのメールでディーノはそんな自分の感情も、弱さも自分の中から消え去った。
マリア自身の無事を知らせるわけでも、居場所を教えるものでもない内容。
普段のマリアであればこんなメール文をディーノに送る事は絶対ないのだ。
道に迷った位ならそれこそ地図を見るなり人に聞くなり、ディーノ以外に頼る…否、自分一人でどうにかするだろう。
そんなマリアがディーノに対し、迎えに来いと言っている。
ある意味、このメールはマリアからのSOSなのだとディーノは思った。
素直にマリアが助けてと言えない事も、強がりながらも本当はマリアが一人で抱え込んでいるだけだと言う事もディーノは知っている。
(何年幼馴染として…自分の気持ちを隠して一緒に居ると思ってんだよ…マリアのやつ…)
マリアを連れて日本に来たこの一週間を振り返りながらディーノは目を閉じた。
たった一週間と言う長いようで短い時間だったけれど、その中で少なくともディーノはこのままではいけないと改めて思い知らされたのだ。
これまで幼馴染を貫き通してでも一緒に居られるなら、この恋心は口に出してはいけない物だと少なからず思っていた。
マリアと関わらなくなる事を恐れていたせいか、だからこそ幼馴染に拘っていた部分も少なからずある。
素直な気持ちではなく、売り言葉に買い言葉と言った火に油を注ぐ行為をこれまで繰り返してきたのも…変に距離を置かれたり関わらなくなるのを恐れたディーノの弱さだ。
だが一度本音を口から出してしまえば、どう足掻いてももう売り言葉に買い言葉を言う事も、火に油を注ぐことも出来なくなっていた。
一度言うのも二度言うのも変わらない、マリアが嫌がっていないのなら本音を伝えようと。
マリアのツナの家庭教師としての役目を終えて、リボーンからの報酬である博物館でのデートを終えたら…ディーノは自分の気持ちをマリアに言おうと思っていた。
仮にマリアに断られても、幼馴染としか見ていないと言われても…ディーノは覚悟の上だ。
嫌われているわけではないのだ、どうにでも関係は変えられる。
幼馴染としか見られていないのならその幼馴染の壁をぶち破り、意識されていないなら意識してもらえるようにディーノ自身が動くまでだ。
長い間マリアに片思いしているのだ。
でも今はそんな事よりも…
(俺が“今”何をすべきかなんて…答えは最初から決まってるしな)
ゆっくりと目を開け再度愛おしそうにメール文を見れば、ディーノは深く深呼吸をする。
これからどうするかを改めて自分の中で言葉にし、マリアの青い携帯を自分のモッズコートのポケットの中にしまった。
ディーノの纏う雰囲気が変わったのを察知したリボーンは、ディーノを見上げる。
「行くのか、ディーノ?」
「おう、マリアの奴道に迷ったみたいだからな…迎えに行ってくる。ツナ達には悪いけど、俺とマリアは仕事で急遽イタリアに戻ったって言っておいてくれ」
「あぁ…ヘマするんじゃねぇーぞ、ディーノ」
「言われなくてもヘマなんてしねぇーよ」
師の茶化すような気遣いに、ディーノは苦笑しながら答える。
相手はブラックリスト入りしているマフィアのファミリーだ。
そんな事は百も承知な上に、ヘマ出来ない理由がディーノにはある。
「行くぞロマーリオ、アベーレ」
そう言って言葉を発すれば、二人は頷きディーノよりも先にツナの部屋を出て行った。
「あれ、ディーノさん?」
玄関を出てロマーリオとアベーレが車を取ってくるのを待っていると、丁度ツナが帰宅してきたようだ。
後ろにはいつものメンバーである獄寺に山本の二人が居る。
京子とハルも今回テスト最終日を終えたらツナの家に来る予定だが…二人はどうやらまだ来ていないらしい。
「お、帰って来たのかツナ」
「あ、はい。…ディーノさん何処か出掛けるんですか?」
不思議そうにツナはディーノに訊ねる。
確かテスト二日目の最終日はマリアもディーノもツナの家に居ると前日マリアに言われたのだ。
『寄り道しないで帰って着なさいよ~?』とマリアが言っていた通り、ツナ達は学校が終わればこうして真っすぐツナの家に帰宅したのだ。
「悪い、ツナ!…急遽仕事が入っちまってな。俺とマリアはイタリアに戻る事になっちまったんだ」
ツナの目の前で両手を合わせごめんとジェスチャーをすれば、あからさまにしょんぼりするツナ。
今日のテストの出来について、マリアに言おうと思っていたのがしょんぼりしている姿のツナから読み取れる。
どうやらこの一週間の家庭教師で相当マリアに懐いたようだ。
マリアに勉強を教えられた人間は大体こうなる事を、ディーノは幾度となく見て来た。
それは後ろに居る獄寺も山本にも当てはまっているのか、言葉にはしないがほんの少し残念そうな素振りを見せている。
「そうそう、マリアがテスト勉強頑張ったご褒美にお菓子とかジュースとかいろいろ用意してくれてるから…それ食べてパーッとテストの打ち上げでもしてくれよな」
「マリアさんやディーノさん達が居ないのに打上げしてもいいんですか…?」
「頑張ったのはツナ達学生だぜ?俺達はほんの少しサポートしただけだから、盛大に楽しんでくれねぇーとマリアがせっかく用意したお菓子たちが無駄になっちまうだろ?」
不貞腐れた子供を諭すように、ディーノはツナの頭をガシガシと撫でる。
普段通り、まるで何も起きていない様に装えば獄寺も山本は気付いて居ない。
ただツナだけは何か違和感を感じたのか「…またマリアさんと一緒に来てくれますか?」と、ディーノに問う。
「何だ?そんなにマリアの事気に入ったのか?」
「気に入った…と言うか、オレもマリアさんの事は好きですけど…ディーノさんの好きとは違いますからね…?」
「っつ…ツナお前な…」
弟弟子からのまさかの言葉に、ディーノは思わず鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする。
自分よりも年下のツナにそんな事を言われるとすら思っていなかったのだ。
いくら周りにバレても構わないと思えど、ツナの前ではそんな素振りを見せなかったはずなのにと…ディーノは思わず苦虫を噛む。
これも超直感のせいか?等と一瞬思ったりもするが、きっとバレバレだったのだろう。
マリアがツナに教えている姿を、時たま羨ましそうにディーノは見ていたのだ…原因はそれに違いない。
「大丈夫ですよ、マリアさんもディーノさんと一緒だから…だからまた二人で一緒に来てくださいね?」
「お、おう…?」
ツナの言葉にどういう事だろうと思っていると、丁度ロマーリオが車を沢田家の前に停まる。
「ボス、車回して来たぜ」
「サンキューな、ロマーリオ」
そう言って車に乗ろうと手をかけるが、ふとある事を思い出し再度ツナ達の方へとディーノは視線を向けた。
「あ…ツナ!悪いんだがフゥ太達も打上げ誘ってやってくれねぇーか?」
「それはいいんですけど、どうしたんですか?」
「マリアが帰るって知ってフゥ太も寂しくなったのか泣いちまってな…気晴らしに誘ってやって欲しいんだ」
にかっと笑いながらディーノはツナに嘘を付く。
嘘を付いた所で、ツナの超直感で見抜かれてしまうだろうが…それでもフゥ太が塞ぎこんでいないか心配なのだ。
少しでも自分を責めずに楽しい時間を過ごせれば…と、ディーノは思う。
そんなディーノに、ツナは「はい」と頷けば、優しい表情でもう一度ツナを見る。
「じゃ、またなツナ」
車に乗り込めば当然のことながら運転席にはロマーリオが、助手席にはアベーレが座って居た。
「ヴァルッセファミリーのアジトの目星は付いてるか?」
「安心しろボス。そこら辺は抜かりなくトマゾが調べ済みだ」
「イタリアに着けばすぐ動ける準備も出来ているそうです」
「…用意周到だな」
ロマーリオとアベーレの手際の良さに我が部下ながら仕事が出来るなとディーノは感心する。
今回は本当にディーノの個人的にマリアを迎えに行くと言う事なのだ。
キャバッローネ・ファミリーとしてヴァルッセファミリーのアジトに向かうわけでもないと言うのに、ロマーリオもアベーレも何も言わない。
それ所か行って当然と言う素振りを…ロマーリオとアベーレ…イタリアに残して来たキャバッローネ・ファミリーの部下達から感じられる。
思わずぽかんとしてしまうディーノに、ロマーリオは変わらず笑いかける。
「何だボス?また職権乱用だとかあーだこーだ言うつもりか?」
「…そりゃあ…そう思っちまうだろ…?」
「前にも言ったが、俺らからしたら自分のボスが惚れた女を迎えに行くだけだぜ?職権乱用でもなんでもねーぜ」
「そうですよ…お嬢の事を大事に思っているのは、何もボスだけじゃないんですからね」
苦笑を浮かべながら、アベーレはディーノに言う。
キャバッローネ・ファミリーにの一員として歴が長いロマーリオだけでなく、まだ二年目のアベーレですらマリアの事を大事に思っているのだ。
否、この場に居ないキャバッローネ・ファミリー全員がこの二人と同じ想いでいる。
勿論、大事に思っているのは事実だがディーノの思うような大事とはまた違うのだ。
間違ってもそこだけは勘違いして欲しくないとアベーレは思いながらも釘を指す。
「…マリアは愛されてるな」
「何だボス、今頃気付いたのか?」
「でも僕たちのお嬢に対する愛は親愛ですからね?ボスと違って恋情の方ではないですから…勘違いなさらないでくださいね」
「分かってるって!」
部下に茶化されながら、ディーノはポケットに入れていたマリアの青い携帯を取り出した。
再度携帯を開くがメールの受信も着信も無く、ただただ幼いマリアと養親であるフィネスの二人が写っている写真だけがディーノの目に映る。
(迎えに行くから…だからちゃんと待ってろよ、マリア)
そんな事を思いながらディーノはイタリアへと向かうのであった―――…
2024/10/17
マリアがヴァルメリオファミリー…正確にはヴァルッセファミリーに連れて行かれ、ディーノの心の中は色んな感情が渦巻いていた。
焦り、苛立ち、自己嫌悪…マリアの事となれば自分はそれだけ弱くなる。
部下が傍に居るはずなのにキャバッローネ・ファミリーのボスとしてのディーノではなく、ただのディーノに成り下がっていた。
―――『道に迷ったから迎えに来い』
それが、マリアからのたった一言だけのメールでディーノはそんな自分の感情も、弱さも自分の中から消え去った。
マリア自身の無事を知らせるわけでも、居場所を教えるものでもない内容。
普段のマリアであればこんなメール文をディーノに送る事は絶対ないのだ。
道に迷った位ならそれこそ地図を見るなり人に聞くなり、ディーノ以外に頼る…否、自分一人でどうにかするだろう。
そんなマリアがディーノに対し、迎えに来いと言っている。
ある意味、このメールはマリアからのSOSなのだとディーノは思った。
素直にマリアが助けてと言えない事も、強がりながらも本当はマリアが一人で抱え込んでいるだけだと言う事もディーノは知っている。
(何年幼馴染として…自分の気持ちを隠して一緒に居ると思ってんだよ…マリアのやつ…)
マリアを連れて日本に来たこの一週間を振り返りながらディーノは目を閉じた。
たった一週間と言う長いようで短い時間だったけれど、その中で少なくともディーノはこのままではいけないと改めて思い知らされたのだ。
これまで幼馴染を貫き通してでも一緒に居られるなら、この恋心は口に出してはいけない物だと少なからず思っていた。
マリアと関わらなくなる事を恐れていたせいか、だからこそ幼馴染に拘っていた部分も少なからずある。
素直な気持ちではなく、売り言葉に買い言葉と言った火に油を注ぐ行為をこれまで繰り返してきたのも…変に距離を置かれたり関わらなくなるのを恐れたディーノの弱さだ。
だが一度本音を口から出してしまえば、どう足掻いてももう売り言葉に買い言葉を言う事も、火に油を注ぐことも出来なくなっていた。
一度言うのも二度言うのも変わらない、マリアが嫌がっていないのなら本音を伝えようと。
マリアのツナの家庭教師としての役目を終えて、リボーンからの報酬である博物館でのデートを終えたら…ディーノは自分の気持ちをマリアに言おうと思っていた。
仮にマリアに断られても、幼馴染としか見ていないと言われても…ディーノは覚悟の上だ。
嫌われているわけではないのだ、どうにでも関係は変えられる。
幼馴染としか見られていないのならその幼馴染の壁をぶち破り、意識されていないなら意識してもらえるようにディーノ自身が動くまでだ。
長い間マリアに片思いしているのだ。
でも今はそんな事よりも…
(俺が“今”何をすべきかなんて…答えは最初から決まってるしな)
ゆっくりと目を開け再度愛おしそうにメール文を見れば、ディーノは深く深呼吸をする。
これからどうするかを改めて自分の中で言葉にし、マリアの青い携帯を自分のモッズコートのポケットの中にしまった。
ディーノの纏う雰囲気が変わったのを察知したリボーンは、ディーノを見上げる。
「行くのか、ディーノ?」
「おう、マリアの奴道に迷ったみたいだからな…迎えに行ってくる。ツナ達には悪いけど、俺とマリアは仕事で急遽イタリアに戻ったって言っておいてくれ」
「あぁ…ヘマするんじゃねぇーぞ、ディーノ」
「言われなくてもヘマなんてしねぇーよ」
師の茶化すような気遣いに、ディーノは苦笑しながら答える。
相手はブラックリスト入りしているマフィアのファミリーだ。
そんな事は百も承知な上に、ヘマ出来ない理由がディーノにはある。
「行くぞロマーリオ、アベーレ」
そう言って言葉を発すれば、二人は頷きディーノよりも先にツナの部屋を出て行った。
「あれ、ディーノさん?」
玄関を出てロマーリオとアベーレが車を取ってくるのを待っていると、丁度ツナが帰宅してきたようだ。
後ろにはいつものメンバーである獄寺に山本の二人が居る。
京子とハルも今回テスト最終日を終えたらツナの家に来る予定だが…二人はどうやらまだ来ていないらしい。
「お、帰って来たのかツナ」
「あ、はい。…ディーノさん何処か出掛けるんですか?」
不思議そうにツナはディーノに訊ねる。
確かテスト二日目の最終日はマリアもディーノもツナの家に居ると前日マリアに言われたのだ。
『寄り道しないで帰って着なさいよ~?』とマリアが言っていた通り、ツナ達は学校が終わればこうして真っすぐツナの家に帰宅したのだ。
「悪い、ツナ!…急遽仕事が入っちまってな。俺とマリアはイタリアに戻る事になっちまったんだ」
ツナの目の前で両手を合わせごめんとジェスチャーをすれば、あからさまにしょんぼりするツナ。
今日のテストの出来について、マリアに言おうと思っていたのがしょんぼりしている姿のツナから読み取れる。
どうやらこの一週間の家庭教師で相当マリアに懐いたようだ。
マリアに勉強を教えられた人間は大体こうなる事を、ディーノは幾度となく見て来た。
それは後ろに居る獄寺も山本にも当てはまっているのか、言葉にはしないがほんの少し残念そうな素振りを見せている。
「そうそう、マリアがテスト勉強頑張ったご褒美にお菓子とかジュースとかいろいろ用意してくれてるから…それ食べてパーッとテストの打ち上げでもしてくれよな」
「マリアさんやディーノさん達が居ないのに打上げしてもいいんですか…?」
「頑張ったのはツナ達学生だぜ?俺達はほんの少しサポートしただけだから、盛大に楽しんでくれねぇーとマリアがせっかく用意したお菓子たちが無駄になっちまうだろ?」
不貞腐れた子供を諭すように、ディーノはツナの頭をガシガシと撫でる。
普段通り、まるで何も起きていない様に装えば獄寺も山本は気付いて居ない。
ただツナだけは何か違和感を感じたのか「…またマリアさんと一緒に来てくれますか?」と、ディーノに問う。
「何だ?そんなにマリアの事気に入ったのか?」
「気に入った…と言うか、オレもマリアさんの事は好きですけど…ディーノさんの好きとは違いますからね…?」
「っつ…ツナお前な…」
弟弟子からのまさかの言葉に、ディーノは思わず鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする。
自分よりも年下のツナにそんな事を言われるとすら思っていなかったのだ。
いくら周りにバレても構わないと思えど、ツナの前ではそんな素振りを見せなかったはずなのにと…ディーノは思わず苦虫を噛む。
これも超直感のせいか?等と一瞬思ったりもするが、きっとバレバレだったのだろう。
マリアがツナに教えている姿を、時たま羨ましそうにディーノは見ていたのだ…原因はそれに違いない。
「大丈夫ですよ、マリアさんもディーノさんと一緒だから…だからまた二人で一緒に来てくださいね?」
「お、おう…?」
ツナの言葉にどういう事だろうと思っていると、丁度ロマーリオが車を沢田家の前に停まる。
「ボス、車回して来たぜ」
「サンキューな、ロマーリオ」
そう言って車に乗ろうと手をかけるが、ふとある事を思い出し再度ツナ達の方へとディーノは視線を向けた。
「あ…ツナ!悪いんだがフゥ太達も打上げ誘ってやってくれねぇーか?」
「それはいいんですけど、どうしたんですか?」
「マリアが帰るって知ってフゥ太も寂しくなったのか泣いちまってな…気晴らしに誘ってやって欲しいんだ」
にかっと笑いながらディーノはツナに嘘を付く。
嘘を付いた所で、ツナの超直感で見抜かれてしまうだろうが…それでもフゥ太が塞ぎこんでいないか心配なのだ。
少しでも自分を責めずに楽しい時間を過ごせれば…と、ディーノは思う。
そんなディーノに、ツナは「はい」と頷けば、優しい表情でもう一度ツナを見る。
「じゃ、またなツナ」
車に乗り込めば当然のことながら運転席にはロマーリオが、助手席にはアベーレが座って居た。
「ヴァルッセファミリーのアジトの目星は付いてるか?」
「安心しろボス。そこら辺は抜かりなくトマゾが調べ済みだ」
「イタリアに着けばすぐ動ける準備も出来ているそうです」
「…用意周到だな」
ロマーリオとアベーレの手際の良さに我が部下ながら仕事が出来るなとディーノは感心する。
今回は本当にディーノの個人的にマリアを迎えに行くと言う事なのだ。
キャバッローネ・ファミリーとしてヴァルッセファミリーのアジトに向かうわけでもないと言うのに、ロマーリオもアベーレも何も言わない。
それ所か行って当然と言う素振りを…ロマーリオとアベーレ…イタリアに残して来たキャバッローネ・ファミリーの部下達から感じられる。
思わずぽかんとしてしまうディーノに、ロマーリオは変わらず笑いかける。
「何だボス?また職権乱用だとかあーだこーだ言うつもりか?」
「…そりゃあ…そう思っちまうだろ…?」
「前にも言ったが、俺らからしたら自分のボスが惚れた女を迎えに行くだけだぜ?職権乱用でもなんでもねーぜ」
「そうですよ…お嬢の事を大事に思っているのは、何もボスだけじゃないんですからね」
苦笑を浮かべながら、アベーレはディーノに言う。
キャバッローネ・ファミリーにの一員として歴が長いロマーリオだけでなく、まだ二年目のアベーレですらマリアの事を大事に思っているのだ。
否、この場に居ないキャバッローネ・ファミリー全員がこの二人と同じ想いでいる。
勿論、大事に思っているのは事実だがディーノの思うような大事とはまた違うのだ。
間違ってもそこだけは勘違いして欲しくないとアベーレは思いながらも釘を指す。
「…マリアは愛されてるな」
「何だボス、今頃気付いたのか?」
「でも僕たちのお嬢に対する愛は親愛ですからね?ボスと違って恋情の方ではないですから…勘違いなさらないでくださいね」
「分かってるって!」
部下に茶化されながら、ディーノはポケットに入れていたマリアの青い携帯を取り出した。
再度携帯を開くがメールの受信も着信も無く、ただただ幼いマリアと養親であるフィネスの二人が写っている写真だけがディーノの目に映る。
(迎えに行くから…だからちゃんと待ってろよ、マリア)
そんな事を思いながらディーノはイタリアへと向かうのであった―――…
2024/10/17
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