不器用な恋
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※【ロマーリオside】
「お嬢、何処だ?お嬢!」
「お嬢~、居たら返事してください!」
ロマーリオはアベーレと二人、沢田家を後にすればスーパーまでの道のりをアベーレと共に走る。
沢田家からスーパーまでの道のりはいくつかあるのだが…今日に限っては水道管の整備のため道は塞がれており、沢田家からスーパーまでは今ロマーリオとアベーレが走っている道しか使えないのだ。
一か所だけ、整備をしていても通れる道があるが、その道をマリアが使う事は極めて低い。
子供を連れてマリアがスーパーまで行くとなると、安全ルートを選ぶにまず間違いないのだ。
わざわざ危ない道を選ぶ事も無ければ、子供たちの性格を知っているからこそ選ぶ事はしない。
「子供達を連れて行っているとはいえど、スーパーからこっちに戻ってくる最中のはずだ」
「…ロマーリオさん、携帯鳴ってませんか?」
走りながらそうアベーレはロマーリオに問う。
聴覚が優れているアベーレは走りながらもロマーリオの懐にしまわれている携帯が振動している音を拾ったのだろう。
アベーレに言われ懐にしまってある携帯に触れれば、確かに携帯が振動していた。
(こんな時に誰だ?)
そう思いながらもディスプレイに表示されている着信者の名を見れば、イタリアに居るはずのトマゾからだった。
「…おいアベーレ、先に行ってもらっていいか?」
「はいっ!!!」
ロマーリオの言葉に、アベーレは一人マリアを探しにさらに走り出した。
そんなアベーレを見ながらほんの少し息を整えロマーリオは立ち止まり、通話ボタンを押しては耳に携帯を当てる。
「っ…ロマーリオ…報告したい事が有ります…」
「悪いトマゾ、今立て込んでてな…悪いがかけ直すかボスの方に連絡してもらっていいか?」
「…ボスの側には居ないんですか?」
「あぁ…今お嬢を探しててな…」
「…なら、尚更ボスに連絡するのもかけ直す事も出来ません」
トマゾの言葉に、ロマーリオは「どういう事だ?」と問う。
ロマーリオがディーノの右腕と呼ばれるのであれば、確実に左腕はトマゾなのだ。
お互いキャバッローネ・ファミリーの幹部であり人となりは嫌と言う程知っている。
ロマーリオがかけ直すかディーノに連絡をしろと言えば否応なしにそう動く事をロマーリオは知っている。
だが、トマゾはそれを拒否してなおロマーリオに報告する事を選ぶ。
「ボスがロマーリオの側に居ないなら…尚更今のこの場で聞いてもらったほうがいいでしょう」
「それは…ボスに聞かれたらまずいのか?」
「ええ…だからこそロマーリオに…どうしてもボスより先に言わなければならないんです…」
「…その報告って言うのはなんなんだ?」
観念したかのようにロマーリオはトマゾの報告を問う。
ディーノに聞かれたらまずいと言う言葉にトマゾは平然と頷いたのだ。
余程の事だろうと思いながらトマゾが一体何を報告しようとするのか、ロマーリオは耳を傾ける。
「お嬢の家の周辺をうろついていたマフィアが何処のファミリーの者か…分かりました」
「どこのファミリーの者なんだ?」
「お嬢の家の周辺をうろついていたのは…“ヴァルッセファミリー”なんです」
「ヴァルッセファミリー?」
聞き覚えのないファミリー名にロマーリオは眉を顰める。
ロマーリオ自身キャバッローネ・ファミリーと言うそれこそ五千のファミリーを持つマフィアの一員だ。
ある程度のファミリー名を聞けばそれなりに分かるのだが、トマゾが言ったファミリー名だけは聞いた事のない名だった。
詳細を聞こうとトマゾからの言葉を待つものの、トマゾはなかなか言葉を発しない事に違和感を感じる。
「おいおいトマゾ、そのヴァルッセファミリーってどういうマフィアなんだ?」
普段ならきちんと物事をはっきり言う事も報告義務を怠る事はないトマゾだ。
立て続けにファミリーの詳細についても教えてくれるのだが、今日に限っては普段と違っていた。
何処か言い辛そうな、否、言いたくないと言わんばかりの沈黙が数分流れる。
なかなかトマゾから言葉を紡がれず、再度ロマーリオは「トマゾ?」と名を呼べば…一息ついてトマゾは声を発する。
「―――――…なんです」
「…は?」
「―――の、――――…なんです」
携帯越しに聞こえるトマゾの放った言葉に…ロマーリオは言葉を失った。
それもそのはずだ。
まさかその言葉を耳にするなんてロマーリオ自身思いもしなかったのだ。
そしてなかなか言葉を紡がなかった…否、紡ぎたくなかったトマゾの理由をロマーリオはその言葉で理解した。
同期でありお互い九代目に拾われキャバッローネ・ファミリーに忠誠を誓った身。
その二人ですらこんな状況なのだ。
この事をボスが知ればどうなるか…ディーノと長い付き合いである二人は安易に想像が付く。
「…ボスにはまだ話してないんだよな?トマゾ」
「だから最初に言ったでしょう?ボスより先にロマーリオに言わなければならないと…」
トマゾの言葉に、ロマーリオはほんの少し胸を撫で下ろす。
こればかりは賢明な判断だと、正直ロマーリオは思った。
一時の時間稼ぎでしかない事はロマーリオ自身分かっており、それでも今ロマーリオはディーノの側に居ないのだ。
この事が部下の付いていないディーノに先に連絡されていたらと思うと気が気ではなくなる。
「ヴァルッセファミリーの者が数名…日本に向かった事も確認しています。もし仮に目的が本当にお嬢なら…お嬢を、言いたくはないですが迎えに行った可能性があります」
どういった目的でマリアを探しているのかまではトマゾにすら分からなかった。
もしヴァルッセファミリーの依頼を紅白衣としてマリアが受けていたと言う仮説を立てても、それはどう考えてもありえなかった。
マリアはマフィアからの依頼に関しては、内容にもよるだろうが基本そう易々と請け負う事はない。
念入りにそのマフィアについて調べる事も、疑念を抱けばディーノやロマーリオ、トマゾにそれとなくどんなファミリーなのか時には聞く事だって有るのだ。
紅白衣としての知名度は低く、科学者としての実力を知る者は限られている。
となれば、最後に残った理由はたった一つ…迎えに行ったと言う可能性しか目的が見つからなかった。
今更何のためにマリアを迎えに行くのだと…トマゾは電話越しに殺気立ってしまう。
それは同じことを考えていたロマーリオにも言えることだ。
「今更…あいつらがお嬢に関わる事自体間違ってるだろ…」
「同感です」
「…俺の方からボスには言っとくが…動けるようには準備しておいてくれよ」
これから起こりうるであろう最悪の事態を想定してロマーリオは言葉を紡ぐ。
ツナの部屋に居た時、マリアがお茶を貰いに一階に行こうとした時からディーノの様子がおかしかったのだ。
ボンゴレファミリー十代目ボスであるツナのような超直感がディーノに無い事位、ロマーリオだって分かっている。
分かっているからこそどうしても今日のディーノの様子が部下から見ても…否、誰から見ても不審に思いどうしたと言わんばかりにディーノを見ていたのだ。
仮に起きないのならそれでいい、だが万が一に備えて行動するに越したことはない。
「それは勿論。お嬢に何かあったら私も何をするのか分かりませんからね」
「おいおい…トマゾお前な」
茶化すようにトマゾは言うが、マリアとディーノに関してだけは何時だって本気なのだ。
否トマゾだけではない。
きっとロマーリオも、キャバッローネ・ファミリーの全員が何をしでかすのか分からない。
それこそ古参の者は特にだ。
トマゾからの通話を切り、ロマーリオは一度空を見上げた。
澄み渡る空には雲一つない青空がロマーリオの目に映る。
「何も起きなければいいんだがな…」
空を見ながらポツリと呟き、ロマーリオは立ち止まっていた足を前へ踏み出した。
どうか何も起こらないでくれと…そう願いながら―――…
2024/10/09
「お嬢、何処だ?お嬢!」
「お嬢~、居たら返事してください!」
ロマーリオはアベーレと二人、沢田家を後にすればスーパーまでの道のりをアベーレと共に走る。
沢田家からスーパーまでの道のりはいくつかあるのだが…今日に限っては水道管の整備のため道は塞がれており、沢田家からスーパーまでは今ロマーリオとアベーレが走っている道しか使えないのだ。
一か所だけ、整備をしていても通れる道があるが、その道をマリアが使う事は極めて低い。
子供を連れてマリアがスーパーまで行くとなると、安全ルートを選ぶにまず間違いないのだ。
わざわざ危ない道を選ぶ事も無ければ、子供たちの性格を知っているからこそ選ぶ事はしない。
「子供達を連れて行っているとはいえど、スーパーからこっちに戻ってくる最中のはずだ」
「…ロマーリオさん、携帯鳴ってませんか?」
走りながらそうアベーレはロマーリオに問う。
聴覚が優れているアベーレは走りながらもロマーリオの懐にしまわれている携帯が振動している音を拾ったのだろう。
アベーレに言われ懐にしまってある携帯に触れれば、確かに携帯が振動していた。
(こんな時に誰だ?)
そう思いながらもディスプレイに表示されている着信者の名を見れば、イタリアに居るはずのトマゾからだった。
「…おいアベーレ、先に行ってもらっていいか?」
「はいっ!!!」
ロマーリオの言葉に、アベーレは一人マリアを探しにさらに走り出した。
そんなアベーレを見ながらほんの少し息を整えロマーリオは立ち止まり、通話ボタンを押しては耳に携帯を当てる。
「っ…ロマーリオ…報告したい事が有ります…」
「悪いトマゾ、今立て込んでてな…悪いがかけ直すかボスの方に連絡してもらっていいか?」
「…ボスの側には居ないんですか?」
「あぁ…今お嬢を探しててな…」
「…なら、尚更ボスに連絡するのもかけ直す事も出来ません」
トマゾの言葉に、ロマーリオは「どういう事だ?」と問う。
ロマーリオがディーノの右腕と呼ばれるのであれば、確実に左腕はトマゾなのだ。
お互いキャバッローネ・ファミリーの幹部であり人となりは嫌と言う程知っている。
ロマーリオがかけ直すかディーノに連絡をしろと言えば否応なしにそう動く事をロマーリオは知っている。
だが、トマゾはそれを拒否してなおロマーリオに報告する事を選ぶ。
「ボスがロマーリオの側に居ないなら…尚更今のこの場で聞いてもらったほうがいいでしょう」
「それは…ボスに聞かれたらまずいのか?」
「ええ…だからこそロマーリオに…どうしてもボスより先に言わなければならないんです…」
「…その報告って言うのはなんなんだ?」
観念したかのようにロマーリオはトマゾの報告を問う。
ディーノに聞かれたらまずいと言う言葉にトマゾは平然と頷いたのだ。
余程の事だろうと思いながらトマゾが一体何を報告しようとするのか、ロマーリオは耳を傾ける。
「お嬢の家の周辺をうろついていたマフィアが何処のファミリーの者か…分かりました」
「どこのファミリーの者なんだ?」
「お嬢の家の周辺をうろついていたのは…“ヴァルッセファミリー”なんです」
「ヴァルッセファミリー?」
聞き覚えのないファミリー名にロマーリオは眉を顰める。
ロマーリオ自身キャバッローネ・ファミリーと言うそれこそ五千のファミリーを持つマフィアの一員だ。
ある程度のファミリー名を聞けばそれなりに分かるのだが、トマゾが言ったファミリー名だけは聞いた事のない名だった。
詳細を聞こうとトマゾからの言葉を待つものの、トマゾはなかなか言葉を発しない事に違和感を感じる。
「おいおいトマゾ、そのヴァルッセファミリーってどういうマフィアなんだ?」
普段ならきちんと物事をはっきり言う事も報告義務を怠る事はないトマゾだ。
立て続けにファミリーの詳細についても教えてくれるのだが、今日に限っては普段と違っていた。
何処か言い辛そうな、否、言いたくないと言わんばかりの沈黙が数分流れる。
なかなかトマゾから言葉を紡がれず、再度ロマーリオは「トマゾ?」と名を呼べば…一息ついてトマゾは声を発する。
「―――――…なんです」
「…は?」
「―――の、――――…なんです」
携帯越しに聞こえるトマゾの放った言葉に…ロマーリオは言葉を失った。
それもそのはずだ。
まさかその言葉を耳にするなんてロマーリオ自身思いもしなかったのだ。
そしてなかなか言葉を紡がなかった…否、紡ぎたくなかったトマゾの理由をロマーリオはその言葉で理解した。
同期でありお互い九代目に拾われキャバッローネ・ファミリーに忠誠を誓った身。
その二人ですらこんな状況なのだ。
この事をボスが知ればどうなるか…ディーノと長い付き合いである二人は安易に想像が付く。
「…ボスにはまだ話してないんだよな?トマゾ」
「だから最初に言ったでしょう?ボスより先にロマーリオに言わなければならないと…」
トマゾの言葉に、ロマーリオはほんの少し胸を撫で下ろす。
こればかりは賢明な判断だと、正直ロマーリオは思った。
一時の時間稼ぎでしかない事はロマーリオ自身分かっており、それでも今ロマーリオはディーノの側に居ないのだ。
この事が部下の付いていないディーノに先に連絡されていたらと思うと気が気ではなくなる。
「ヴァルッセファミリーの者が数名…日本に向かった事も確認しています。もし仮に目的が本当にお嬢なら…お嬢を、言いたくはないですが迎えに行った可能性があります」
どういった目的でマリアを探しているのかまではトマゾにすら分からなかった。
もしヴァルッセファミリーの依頼を紅白衣としてマリアが受けていたと言う仮説を立てても、それはどう考えてもありえなかった。
マリアはマフィアからの依頼に関しては、内容にもよるだろうが基本そう易々と請け負う事はない。
念入りにそのマフィアについて調べる事も、疑念を抱けばディーノやロマーリオ、トマゾにそれとなくどんなファミリーなのか時には聞く事だって有るのだ。
紅白衣としての知名度は低く、科学者としての実力を知る者は限られている。
となれば、最後に残った理由はたった一つ…迎えに行ったと言う可能性しか目的が見つからなかった。
今更何のためにマリアを迎えに行くのだと…トマゾは電話越しに殺気立ってしまう。
それは同じことを考えていたロマーリオにも言えることだ。
「今更…あいつらがお嬢に関わる事自体間違ってるだろ…」
「同感です」
「…俺の方からボスには言っとくが…動けるようには準備しておいてくれよ」
これから起こりうるであろう最悪の事態を想定してロマーリオは言葉を紡ぐ。
ツナの部屋に居た時、マリアがお茶を貰いに一階に行こうとした時からディーノの様子がおかしかったのだ。
ボンゴレファミリー十代目ボスであるツナのような超直感がディーノに無い事位、ロマーリオだって分かっている。
分かっているからこそどうしても今日のディーノの様子が部下から見ても…否、誰から見ても不審に思いどうしたと言わんばかりにディーノを見ていたのだ。
仮に起きないのならそれでいい、だが万が一に備えて行動するに越したことはない。
「それは勿論。お嬢に何かあったら私も何をするのか分かりませんからね」
「おいおい…トマゾお前な」
茶化すようにトマゾは言うが、マリアとディーノに関してだけは何時だって本気なのだ。
否トマゾだけではない。
きっとロマーリオも、キャバッローネ・ファミリーの全員が何をしでかすのか分からない。
それこそ古参の者は特にだ。
トマゾからの通話を切り、ロマーリオは一度空を見上げた。
澄み渡る空には雲一つない青空がロマーリオの目に映る。
「何も起きなければいいんだがな…」
空を見ながらポツリと呟き、ロマーリオは立ち止まっていた足を前へ踏み出した。
どうか何も起こらないでくれと…そう願いながら―――…
2024/10/09
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