不器用な恋
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ディーノの山のように積み重なった書類の山を無理やり一日で終わらせて、現在マリアとディーノ、ディーノの部下は飛行機の中に居た。
ガヤガヤと話している様子はなく、ただ飛行機内には静寂が響き渡っていた。
マリアの隣でマリアの肩に寄り掛かりながら、ディーノは規則正しい寝息を立てて眠っていた。
子供っぽい、少し幼さの残る寝顔を見ながら、マリアはクスリと笑う。
「お嬢も素直じゃありませんね…」
『…何がよ?』
目の前に座っているロマーリオが突然そんな事を言い出したので、マリアは思わず首を傾げる。
一体何のことだろう?とロマーリオの言葉に頭の上にはてなが浮かぶ。
そんなマリアを見て、ロマーリオは小さくため息をつきながら口を開く。
「まったく…ボスに無理させたからってボスのワインに睡眠薬入れて無理やり体を休ませようとしてる事」
『一体何の事かしら?』
「とぼけたって無駄だぜ?何年の付き合いだと思ってるんだお嬢」
しらばっくれていたマリアは、ロマーリオの言葉に『それもそうね』とすんなりと白状すれば苦笑を浮かべられる。
(流石ディーノの腹心ね)
ロマーリオの言った通り、マリアはディーノが先ほどまで食事をしていたワインの中に睡眠薬を入れたのだ。
幼馴染であり、ましてや好きな相手に睡眠薬を盛る人間なんてどこに居るだろうか?
盛られた本人だって気づいていなかった。
誰にも気づかれず入れたつもりだったのにロマーリオにはどうやらバレていたらしい。
(まぁ…昔から何度もやってる事だし、バレるのも当然か)
隣でぐっすりと眠っているディーノは何の警戒もせずに飲んでいたが、昔からいろんな意味で鈍感だったからとマリアは決めつけていた。
「それにしてもお嬢、今回は何でジャポーネに?お嬢がイタリアから出る事自体珍しいしな…」
『そうね、イタリアから出るなんて滅多な事じゃないとありえないしね』
「あぁ…初めてじゃねーのか?イタリアを出たの」
『……そうね』
ロマーリオの言葉に、マリアは改めて自分がイタリアから出た事が無い事に気づく。
生まれてこの方22年マリアはイタリアから出た事は無い。
旅行に行く事も、イタリア以外に何処か別の場所に行きたいとも思わなかったのもあるだろうし何より仕事や趣味の実験や研究が忙しいのもあった。
無論それだけではないのだが…出る用事も機会もなければ自然と国外に行く理由が見つからなかった。
そんなマリアが突然ディーノに『日本に連れて行け』と言うのだ、不思議に思わない方がおかしい。
「で、一体どこに何しに行く気だ?」
近くに置いてあるコーヒーカップを手に取り、ロマーリオは問う。
『どうせ着いたら直ぐにわかると思うけど…目的地は並盛に居るリボーンの所よ』
「リボーンさんにか?」
マリアの言葉に、ロマーリオは驚くもののリボーンが絡んでいると分かれば納得がいったようだ。
『そうそう。頼まれていた物が出来たから届けに行くのよ』
「そなら輸送すればいいだけじゃないのか?」
ロマーリオの言葉に、マリアも『そうしたかったんだけど…ね』とため息を一つついた。
本当はマリア自身イタリアから出るつもりはなかった。
「何か事情でもあるのか?」
『何故かリボーンに呼び出しくらっちゃってさ』
「リボーンさんならやりかねねぇーな…」
珈琲を一口飲み、口の中でロマーリオはじっくりと珈琲を味わう。
ディーノの家庭教師でもあったリボーンは勿論マリアとも接点がある。
学生時代共にリボーンの生徒として、ディーノほど本格的な教育は受けていないが銃の扱いや身を守る方法をリボーン直々に教えられたのだ。
呼び出されたなら断る事も出来ず、マリアは渋々その呼び出しに承諾した。
ついでに頼まれていた依頼の物を直接持って来てくれと、ついでのように電話で言われたのはつい一週間前の出来事である。
『リボーンに会えるのはいいけど…何で呼び出しくらったのかしら?』
「さぁーな。数年振りに会いたくなったとか?」
『気まぐれに呼ばれた確率の方が高いんじゃない?』
「違いねぇ」
くくくっと喉を鳴らし、ロマーリオは笑う。
「さて、話は此処までにしてお嬢。お嬢もボスと一緒に寝たらどうだ?」
『何で…?』
突然のロマーリオの言葉にマリアは首を傾げる。
隣でぐっすり眠っているディーノに言う言葉ならまだ分かる。
寝ずに書類仕事を終わらせて、そのまま日本へ飛び立ったのだ。
日本に着くまでの間仮眠位取ればいいとマリアも思ったし、だからこそ睡眠薬を盛ったのだ。
無理をさせたのはマリアだって十分理解している、だからこそ少しでも休めるようにと気づかれないようにワインに混ぜたのだ。
「隈…」
『え、何で…』
「上手く隠したつもりでもちゃんと見えてますぜ、ボスの仕事が終わるまでお嬢も起きてただろ?」
『……』
ロマーリオの言葉に、マリアは口を噤む。
無言は肯定であるためかロマーリオはじっとマリアを見た。
ファンデーションで上手く隠していると思ったが詰めが甘かったらしい、よく観察するとマリアの目の下にはうっすらと隈があった。
『流石に、ディーノに無理させてて…あたしだけ寝るのは違うでしょ』
観念したかのようにマリアが呟けばロマーリオはにっと笑った。
そんなロマーリオの表情にマリアは思わず顔を逸らす。
『今回はあたしが無理言ってディーノの仕事急かしたわけだし』
「我らがボスはそんな事気にしないと思うぜ?お嬢の頼みとあれば、な」
『そういうもの?』
「お嬢だってボスに何か頼まれたらそっち優先するだろ?」
そう問われればマリアは考えるよりも早く『そりゃあ…まぁ…』と小さな声で呟いた。
もしマリアがディーノの力になれるなら、他の仕事や依頼、趣味や研究よりもディーノの頼みごとを優先する。
実際に頼まれたことはほとんどないが、それでも頼まれたなら優先して応えたいとマリアは思う。
幼馴染だからもあるだろうが一番は好きな相手の頼み事だ。
頼られるなら応えたい、不器用ながらも言葉は悪くても、なんだかんだ言いながらマリアは応える。
「そう言うことですぜ、お嬢」
マリアの考えていることが分かっているのか、ロマーリオはそう言いながらまた一口珈琲を飲む。
幼い頃からマリアの事もディーノの事も見てきたロマーリオだ。
分かりやすく伝えるのもどうやらお手の物らしい。
「ジャポーネに着く頃には起こしてやるから…ちゃんと寝てその隈消さないとボスがぎゃーぎゃー騒ぐかもしれないぜ?」
『…ちゃんと起こしてよね』
そう言いながらマリアはゆっくりと目を瞑り、ロマーリオの「勿論」と言う言葉を聞き届け眠りについた。
2024/08/28
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