不器用な恋
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『Ciao リボーン』
「早いなマリア…とディーノとその他愉快な仲間達」
「おいおい、リボーン…」
「見方を変えりゃあそう言う風に見えなくもないか」
「…せめて僕たちの事も名前で呼んでください」
ツナのテスト二日目。
昼前にマリアはディーノとロマーリオ、アベーレと共に沢田家へ訪れていた。
マリアとディーノはお互い両手に袋を提げ、ロマーリオとアベーレの二人は大量の紙の束を持っている。
昨日でツナの家庭教師としての役目を終えてはいるものの、此処一週間沢田家へ訪れる事が当たり前になっていたせいかマリアは自然とツナの家へと向かった。
時刻はまだ十時。
二時間目の授業が終わるまでは後三十分ほど時間があり、ツナ達が帰宅するまでにはもう少し時間がかかるだろう。
「所でマリア、そいつは何だ?」
『今日でツナ達のテストも終わりでしょ?労ってあげようと思ってお菓子買って来たの』
そう言いながら手に提げていた袋を持ちあげれば、マリアの方にはお菓子が、ディーノの方には飲み物が入っている。
学生時代と同じようにマリアはお疲れ様会をする。
あれだけ頑張ったのだ、テストが終わった時くらい労うのは当然だとマリアは思う。
マリア自身が学生時代と同じようにご飯を作ってもよかったのだが…流石に沢田家の台所を借りるのもどうかと思ったので、スーパーでお菓子や飲み物類を買い込んだのだ。
ツナの部屋の真ん中にあるローテーブルの上にマリアとディーノはそれぞれ持っていた袋を置けば、ローテーブルの周りに座りだす。
「ロマーリオ達が持ってる方はどうしたんだ?」
『あ~…そっちはツナの学期末に向けての資料と問題のプリントよ』
さらっとマリアが答えると、リボーンは再度ロマーリオとアベーレの方を見る。
大量に印刷されているそれはよく見れば科目事にホッチキスで止められており、表紙の方にも分かりやすく何の科目でどこの内容の部分についてかしっかりと記されている。
流石に五科目以外の教科に関してはマリア畑違いの為用意はしていない。
そもそも副教科に関しては問題を作る先生によって範囲も内容も変わってしまう為、下手に手が出しづらいのが本音である。
主要教科のみではあるものの、量はそれなりにありツナの勉強机の上がプリントで埋まってしまう。
今回の中間テストに対する家庭教師を引き受けたマリアは、短期間ではあるがツナの理解能力も把握済みである。
期末テストの範囲を予測し、そこからさらにツナの躓くであろう部分を導き出すのはマリアにとっては朝飯前だ。
ツナの机の上に置かれたそれを見たツナは驚くだろうが、嫌な顔せずしっかり解く事は安易に想像が付く。
匙を投げずに頑張ってリボーンに聞きながらでも解いてくれるだろうとマリアは信じているのだ。
別に一気にやれと言うものではないのだから、そこはツナのペースに任せようとマリアは考える。
授業で習った所の復習で使うのも予習で使うのも、期末テストが近づいてから使うのでも使い方はツナ次第。
勿論、ツナの本来の家庭教師であるリボーンが何処で使うかを決めるのもありだ。
『後リボーンこれ』
「USBメモリー?」
マリアがそう言いながらポケットからUSBメモリーを取り出した。
何処にでも売られているUSBメモリーだが、マリアらしく色は勿論赤色だ。
『念のためデータも渡しとくね。資料や問題無くした時とか、…追加で同じ問題解く時にでも使ってくれたら』
「すまねぇーな、マリア」
『いいのよ?あたしが好きで勝手にやってるだけだしね』
リボーンに渡し受け取ってもらえればマリアはリボーンに笑いかける。
次の期末テストの時には、マリアは此処には居ないのだ。
期間限定で引き受けた上にマリアにだって仕事があり、ディーノと違ってそう易々と日本に来る予定もない。
ツナには基礎を叩き込んだし、資料も勿論ツナが躓くであろう部分を丁寧に解説して書いてある。
理解力もこの一週間で上がっているのだ、リボーンが教えるのも申し分ないとマリアは思う。
もし仮にそれでも駄目ならその時はその時だ。
「…にしても、ツナの奴帰ってきて自分の机の上見たらぜってぇー腰抜かすだろうな…」
座ったままツナの勉強机を見上げればその量は半端なく、何処か親近感が湧く。
まるで自分が日本からイタリアに帰国し、溜まっている書類が置かれた机の状況に酷似しているせいかディーノはツナの勉強机の上を見ながら同情する。
ディーノの場合仕事なのだから仕方ないと腹をくくるが、ツナの場合は苦手な勉強だ。
マリアによってツナ向けにつけられた資料や問題であるためそこら辺の参考書や教師が教えるのよりかは断然分かりやすい内容ではある。
だが、流石に積み上げられた量を見れば同情だってする。
一日でやるわけではない事も十分理解しているが、やはり積み上げられているとどうしても途方に暮れてしまうだろう。
「ボスも帰国したら机の上はこんな感じだろうな」
「リコさんがちゃんとスケジュールを立ててくれてるみたいなのでボス逃げられませんよ?」
「お前らな…」
茶化すようにそうロマーリオとアベーレが言えば、ディーノはがっくしと肩を落とす。
まだ帰国していないのだ、今はそんな現実を知りたくないと言わんばかりにディーノは溜息を付く。
そんなディーノを見ながらマリアも内心は似たような状況の為、ぼんやりとディーノを見つめた。
マリアも同じように溜まっていく依頼を今朝確認したのだが…ディーノと同じように肩を落としたくなるほどだ。
普段イタリアから出ないのもあり、依頼が来ればすぐさま対応し一週間以内には終わらせるマリア。
だがそれが出来ない今は帰国し徹夜をしても恐らくひと月はかかってしまうだろう。
いくら期限がない仕事と言えど、溜まっていく仕事の事を思えば気が重たくなってしまう。
「どうしたマリア?珍しくディーノと同じ表情してるじゃねぇーか?」
『…言わないで』
察しのいいリボーンはマリアの表情に気づけば不思議そうに首を傾げた。
マリアがディーノと同じ表情をするのは珍しく疑問に思ったのだろう。
普段なら『そんな事ないけど?』と言えるのだが、状況がディーノと全く同じため言うに言えないのだ。
―――pipipi…
と、音が鳴ればマリアは自分の携帯の受信音だと気づき白衣のポケットに入れていた赤い携帯を取り出す。
携帯を開けばルッスーリアからで「後少ししたら仕事が終わるから行けるわよ~」と言うものだった。
ルッスーリアはまめな性格なのかメールでの連絡をきちんとしてくれる。
『あ、後少ししたらスクアーロとルッスーリアも着くって』
「そういやスクアーロとルッスーリアにも声をかけたのか?」
『勿論、勉強会手伝ってくれたからね』
マリアはそう言って携帯を見ながら顔を綻ばせる。
土曜日の勉強会後、ルッスーリアに「今度一緒にお茶しましょうね~」と言ってもらえたのだ。
ほんの少しでも早く実現できたことが嬉しくマリアは思う。
『さてと…ツナのママンにお茶貰ってくるけど、あんた達何か飲み物いる?』
丁度喉が渇いたマリアは立ち上がり部屋に居るメンバーを見渡して問う。
「俺はいらねぇーぞ」
「俺も大丈夫だな、今は」
「別に大丈夫だな」
「僕も大丈夫です、お嬢」
そう各々言葉にするとマリア以外今は飲み物を飲みたい人はいなかった。
ついでにと思い聞いて見たものの、結局飲み物が欲しかったのはマリアだけだったようだ。
『んじゃあ、あたしの分だけね』
そう言ってほんの少し歩き、ツナの部屋のドアノブに手を乗せ捻れば廊下に一歩踏み出す。
―――ガシッ
『………ディーノ?』
踏み出そうとしたその瞬間、不意に手首を掴まれてしまう。
何かと思い振り向けばディーノがマリアの手首を掴んでいた。
公園でナンパしてきた青年のような痛みはないのだが、それでもそれなりに力が入っているせいか簡単に振りほどく事は難しい。
首を傾げながらディーノの鳶色の瞳を見れば、行かないでとでも言いたそうな表情でディーノはマリアを見上げていた。
『ディーノ?』
声をかけるもののディーノからの反応はない。
流石に不振に思いロマーリオやアベーレも「ボス?」と声をかけては不思議そうな表情でディーノを見ている
『どうしたの、ディーノ?』
「あ、わりぃー…」
再び声をかければ我に返ったのかマリアの掴んでいた手首を離した。
『?言いたい事が有るならちゃんと言いなさいよ?』
「否、…別に。わりぃーな…マリア」
『?別にいいけど?』
ディーノの行動がまるで分からずマリアは不思議に思ったが、反応からしてディーノ自身も分かっていないのだろう。
不思議そうに首を捻ってはどうしてそんな行動をしたのか分からずにいる。
ぎこちない笑顔でディーノはマリアに「…階段で転ぶなよ?」と言うが、『ディーノじゃないんだからそんなヘマしないわよ!』と即座に返した。
『じゃ、お茶貰いに行ってくるね』
そう言い残してマリアはツナの部屋の扉をゆっくりと閉め、奈々の居る一階へと降りて行った。
2024/10/07
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