不器用な恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『送ってくれてありがとう、アベーレ』
「いえ、当然の事です」
何時もの様に晩御飯後、アベーレに送ってもらえばマリアは白衣のポケットからルームキーを探す。
晩御飯後、マリアは部屋に籠り明日で最後であるツナの家庭教師としての最後の務めを果たすのだ。
粗方問題は作り終えているが、それでも最後なのだ。
ツナのテスト二日目は数学と理科。
理科は一分野の化学と二分野の生物に別れているが今回のテストでは二分野の生物のつくりがメインであるためまだ化学に比べて苦労する点は少ない。
どちらかと言えば暗記分野であり、化学と違って計算問題が無い分大量の暗記問題になってしまうがそれでも化学よりかは遥かにマシだろう。
計算問題に関しては、ツナが一番苦手とする数学が残っている。
明日のスケジュールを頭の中で立てつつ、ポケットの中に入れていたルームキーが見つかれば取り出す。
「所でお嬢」
『ん、何アベーレ?』
ルームキーを指し込もうとする手を止め、マリアはアベーレの方に振り返える。
スカイブルーのタレ目の瞳を見れば、にこりと笑い普段と何ら変わらない表情でマリアに問う。
「お嬢はボスと科学博物館に行くのは楽しみですか?」
『そりゃそうでしょ』
コホンと咳払いをし、マリアはアベーレを見上げた。
マリアの雰囲気が先ほどと打って変わり、キリっとした目付きでマリアはアベーレを見つめる。
『いい?アベーレよく聞きなさい』
そう前置きをし、マリアはアベーレに話し始めたのだ。
並盛科学博物館は三階建ての施設で規模がそれなりに大きい事。
一階は宇宙史・生命史・人間史の壮大な物語をテーマとした展示がされている。
日本にあるが故に日本視点での生き物や自然について、復元骨格なども展示されているようだ。
続いて二階は日本視点での科学の技術の歩みについて情報科学にロボットやAIコーナー、日本での科学技術の発展の歩みから近代、未来についての物について展示されている。
イタリアにも似たような施設はあるのだが、それはあくまでイタリア視点の物だ。
国が違えば視点すら変わる。
触れた事のない日本視点での科学はマリアにとって楽しみでしかない事。
最後の三階はプラネタリウムにミュージアムショップ、科学の本が取り揃えられている図書室などもある。
ミュージアムショップに関しては何ら興味はないが、プラネタリウムと科学の本が取り揃えられている図書室となればそれはマリアにとってお宝の宝庫に相当する。
並盛町が誇る科学博物館とリボーンが言ったのも納得がいくとマリアはネットで調べた情報を見て思った。
何だその夢のような幸せな博物館はとマリアは一人携帯を見て頬が緩んだのだ。
それが現在進行形で、博物館の事を聞かれれば思い出しつい頬が緩んでしまいながらもアベーレに説明する。
『あぁ、一日で見て回れるかしら?何ならもっと!じっくり見たい!一週間くらい通っても飽きない自信があるわ!』
嬉々として目を輝かせ、嬉しそうにマリアは笑う。
つい数時間前までは諦めていたので並盛科学博物館についての情報を見ないようにしていたが、行ける状況になれば話は別だ。
食事中に検索をかけて情報を見ていると食事の手が止まり、マリアは食べ終わるのが遅かったのだ。
仕事さえなければ思う存分マリアは心行くまで並盛科学博物館を堪能できるのにと…その点だけが心残りだがそれでも行ける事に変わりない。
たった一日でも思う存分日本視点の科学に触れ、幸せを堪能しようと企てている。
「…お嬢が並盛科学博物館に行くのを物凄く楽しみにしているのは分かったんですが…ボスと一緒に行くんですよ?」
『?分かってるわよそれくらい?』
アベーレの言葉に、マリアは当然分かっている。
リボーンがディーノが連れて行ってやると言っていたし、ディーノ自身もマリアを連れて行くと先程行っていたのだ。
よっぽどの事が無い限りマリアが忘れる事はないとアベーレは分かっているはずなのに何故そんな事を言うのだろうとマリアは不思議に思う。
そんなマリアの反応を見て、アベーレは自分が思っていた事が当たってしまいなんとも言えない表情を浮かべる。
「お嬢、ボスと一緒に行くと言う事はただのお出掛けではないんですよ」
『どういう事?』
「つまりですね…ボスとお嬢はデートで並盛科学博物館に行くんですよ?」
『…デート?』
デートと言う言葉に、マリアは言葉に詰まる。
ディーノとは付き合ってすらいないのに何故デートになるのだろう?と首を傾げるが、アベーレはそんなマリアを諭す。
マリアやディーノよりも二歳ではあるが、アベーレの方が年上なのだ。
たった二歳、されど二歳の年上の言葉の助言をアベーレはマリアに分かりやすいように言葉にする。
いくら頭が良かろうがマリアは恋愛方面に関しては奥手すぎるのだ。
まだ中高生の方が進んでいるのでは?とは言いたくなるほど…恋愛方面に関してはてんでマリアがダメなのをアベーレは理解している。
「お嬢はボスの事好きですよね?」
『そりゃあ…好きよ?幼馴染だもん』
「…言っときますけど恋愛的な意味で僕は聞いてるんですよ?」
『な、何でそれを…』
口ごもるマリアに対し、傍から見ればバレバレだと指摘をせずにアベーレは続ける。
指摘をした所で本当に今更なのだ。
気付いて居ないのは等の本人達だけなのだから今はそんな事に時間を費やす暇はない。
「少なくともお嬢は恋愛的な意味でボスの事を意識していますよね?なら単なるお出掛けでも正当報酬でもなくデートですからね」
『つ、…付き合って居なくてもデートになるの?』
「異性が二人で出掛けるんですよ?付き合って居る居ないとわず、それはデートです」
『デート…なの?』
「ええ、デートです」
釘をさすようにそう言われてしまえば、マリアは上手く理解できずに首を傾げたがよくよくその言葉を理解した途端慌てふためく。
白い肌のせいかマリアの頬は赤く染まり『で…で、で、で、デートっ…?!』と恥ずかしそうにアベーレに詰め寄った。
詰め寄られれば大きく頷き、アベーレは真っすぐにマリアの翡翠色の瞳を見つめて再度マリアに諭す。
「そうです!デートですからね、お嬢!」
念を押すようにアベーレはマリアに“デート”と言葉を強調する。
そうしなければマリアの意識は科学博物館の展示に夢中でディーノの事などきっと忘れてしまうからだ。
勿論好きな相手が夢中になりはしゃぐ姿を見て一緒に過ごせるのだからディーノもそれで満足するだろうがそれでは困るのだ。
「いいですかお嬢?デートですからね。ボスとデートですよ?好きな人とデートできるんですから科学にばっか目を向けずにボスに目を向けてちゃんとデートしてくださいね」
『な、何回も連呼しないでよアベーレ!!!』
真っ赤になったままアベーレに叫ぶマリアの声だけが、マリアの滞在するホテルのフロアに響き渡った。
2024/09/29
43/78ページ