不器用な恋
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「なぁ、マリア」
『どうしたのディーノ?』
晩御飯までの時間に余裕が合った為、マリアはディーノの滞在するホテルの部屋にお邪魔していた。
部屋にはロマーリオとアベーレもおり、現在ロマーリオはディーノとマリアに飲み物を差し出している所だ。
ロマーリオが淹れたインスタントコーヒーはディーノ、アベーレ、ロマーリオ自身の前に置かれマリアだけ緑茶を置いてもらっている。
普段ならロマーリオの淹れてくれたお砂糖とミルクたっぷりの甘いカフェラテが飲みたいのだが、ホテルに滞在しているが故にそんな我儘を言う事は出来ずホテルの室内にあるアメニティの中で唯一飲めそうな緑茶を選んだ。
一口飲めば緑茶独特の味がマリアの口内に広がる。
「マリアはいつイタリアに戻るとか希望あるか?」
『?特にないけど…ツナのテスト二日目が終わったタイミングでいいんじゃないの?』
マリアの引き受けた家庭教師の役目も明日が終われば終了する。
そのため帰国の予定をこうしてディーノ達と話し合っているのだ。
マリア自身リボーンから引き受けた家庭教師の役目をきちんと終わらせられればそれでいいと思っていたので、テスト二日目が終わったタイミングで帰ればいいかと考えていた。
ツナのテスト結果を聞かずに帰るのもどうかと一瞬思ったが、きっと大丈夫だろうとマリアは思う。
点数が良くても悪くても…今回の勉強できっとツナは何かを掴んだはずなのだから。
それはリボーンを見ていても手に取るように分かる。
でなければ最後に解いた問題用紙で間違った所を、リボーンが説明するはずがないのだから。
そんな事を考えながら緑茶を飲んでいると、ディーノは「忘れたのかマリア」とマリアに問う。
「…ほら、リボーンが言ってただろ?ツナの家庭教師引き受けたお礼に科学博物館に連れて行くって…俺が」
『あー…そう言えば言ってたわね』
ディーノの言葉にマリアはそう言えばそんな話も合ったなと思い出す。
正直な所、ツナの勉強を見るのに集中していたせいか科学博物館に連れて行ってくれると言う報酬を忘れていた。
普段なら忘れる事のないマリアなのだが、今回はツナの家庭教師としての期間もそれなりに合ったり勉強を見るのに夢中ですっぽりと抜け落ちていたのだ。
勿論マリアだって科学博物館には行きたい。
行きたいからこそ、その報酬につられてツナの家庭教師を引き受けたのだ。
滅多にイタリアから出ないマリアからしたらそれこそイタリアでない場所の博物館は物珍しく、またどんな内容の科学博物館なのかそれこそ知りたくてたまらない。
『なぁに?ディーノが連れて行ってくれるの?』
「そりゃあ…リボーンに言われちまったからな」
苦笑しながらディーノは笑う。
最初は何で俺なんだとディーノはリボーンに問うたが、理由は教えてもらえなかった。
だがよく考えてみればマリアと二人で出かける良い機会だと思えば、マリアを科学博物館に連れて行くのも悪くないとすら思った。
もし仮にディーノではなくリボーンやツナが連れて行くなんて事になったら、ディーノは一人マリアが居ない所でいじけていただろう。
連れて行く相手に嫉妬してむすっとした表情で子供みたいにいじける自分が容易に想像できる。
師の思惑にまんまとハメられたと思うのは癪だが、マリアが自分以外の誰かと出掛けるのに比べればよっぽどマシなのだから。
そんな事を考えながらディーノはインスタントコーヒーを一口飲み、マリアを見る。
マリアの方を見れば珍しく迷っている表情をしていた。
普段なら即答で『で、何時連れて行ってくれるの?』と嬉々としてディーノに問うはずが、今回に関してはそうではなかった。
「どうかしたかマリア?」
『ん、何が?』
「否…こういう時のマリアって何時連れて行ってくれるんだって聞いてくるのにそれがないから…もしかして行きたくないのか?」
『…そう言うわけじゃないんだけど…勿論行きたい気持ちは変わらないわよ?ただ…』
「ただ?」
歯切れの悪いマリアにディーノは首を傾げる。
元から行きたい場所に行くのを迷うマリアは珍しく、話を聞いていたロマーリオもアベーレもディーノと同じように首を傾げた。
それほどまでにマリアが迷うのは珍しい事なのだ。
迷いながらもおずおずとマリアは口を開く。
『…そろそろイタリアに戻らないと仕事的に厳しいかなって思って…』
「珍しいな?お嬢そんなに仕事の依頼が溜まってるのか?」
ロマーリオの言葉に、マリアは頷く。
『日本に来るまでに引き受けた依頼は終わってるんだけど…こっち来てからの依頼がちょこちょこ届いてるのよね』
沢田家から一度自分が滞在している室内で携帯を見れば依頼のメールが何通か届いていた。
家庭教師期間中に届いた依頼は珍しく多かった。
勿論その中にはルッスーリアからのヘアオイルの依頼もある。
現在日本に居るマリアは物理的に依頼を引き受ける事が出来ない状況だ。
作りたくても作る環境下に居ないため依頼をこなす事が出来ず、その旨を依頼者に話せば皆納期は急いでいないので大丈夫と快く承諾してくれたのだが…。
『急ぎの依頼はないんだけど…一つだけ早めに片付けておきたい依頼が合って』
「期限付きか?」
『期限は特にないんだけど…まぁ、お得意様だからね』
納期の期限は確かにない、ないのだが早めに片付けておきたい仕事には変わりないのだ。
「期限が無いならいいんじゃないですか?」
と、先ほどから黙って聞いていたアベーレが言葉を紡ぐ。
その言葉に便上するように「そうだな、お嬢も日本に来て家庭教師の役目だけしてイタリアに帰るのも味っ気ないだろう?」と、ロマーリオも言葉を続けた。
観光目的で日本に来たわけではないのだが、折角日本に来たのだからと言う気持ちはマリアにだってある。
ツナの勉強を見るのも勿論楽しかった、楽しかったのだがそれだけとなると正直物足りないのだ。
「どうせイタリアに戻ればお嬢は依頼で、ボスは溜め込んでる書類仕事に追われちまうんだから…一日ぐらい日本を堪能するのもいいんじゃないか?」
ロマーリオの言葉に、マリアは『確かに』と頷きディーノは『好きで溜め込んでるわけじゃねぇーぞ?』と苦笑する。
ディーノの場合日本とイタリアをよく往復しているためか自然と書類が溜まっていくのだ。
帰る度に机の上に山積みにされている書類を終わらし、終わったと思えばまた日本に旅立つ。
決して好き好んで溜め込んでいるわけではない事だけは唯一ディーノは主張したい。
それでも、マリアとディーノはお互いイタリアに戻れば忙しい日常に戻るのは目に見えて分かっている。
なら戻る前に一日ぐらい楽しめばいいと言ってくれるのだからその言葉に甘えたくもなるのだ。
マリアに取ってはツナの家庭教師を務めた報酬として。
ディーノにとってはイタリアに戻ったらゆっくりする時間はないのだから―――…
「…じゃあツナのテスト二日目が終わって次の日でいいかマリア?」
『勿論、ちゃんと連れて行ってよねディーノ』
「おう、任せとけって」
にかっと笑うディーノを見て、マリアもつられて笑った。
2024/09/28
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