不器用な恋
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スクアーロとルッスーリアを見送れば、マリアはそのまま沢田家の居間へと戻る。
未だ一生懸命マリアの作った問題をツナは解いており、ディーノとリボーンがそんなツナを見守っていた。
ツナはよっぽど集中しているせいかマリアが戻って来た事すら気づかずに目の前の問題に集中している。
テスト前日と言う事もありほんの少し難易度を上げて作られた最終問題。
それでも何とか残り数問と言った所まで解き終わっているのを見ればマリアは自然と頬が緩む。
解答が合って居ようが合って居なかろうが…ツナは諦めずにマリアの作った問題を解こうとしているのだから。
「スクアーロ達帰ったのか?」
『うん、さっき見送って来た』
ディーノにそう問われればマリアは頷き、ディーノの隣に腰を下ろす。
ツナが問題を解き終わるまで、きっとマリアが戻って来た事には気づかないのだ。
なら解き終わるまで待とうとツナに声をかけるなんて野暮なことはせずディーノ達同様にマリアもツナを見守るしかない。
マリアが座ればリボーンがマリアの膝の上に乗りマリアを見上げ声をかける。
「マリア、お前の養親はどうしてるんだ?」
「どうしたんだよリボーン、急にそんな事聞いて?」
リボーンの問いに、思わずディーノが聞き返した。
これまでマリアの養親についてリボーンがマリアに尋ねた事はないのだ。
急にその話題を出されたせいか当の本人であるマリアではなく、ディーノが不思議がる。
「お前らが最初にツナの家に来た時にふと昔を思い出しちまってな」
リボーンの言葉に少なからずマリアもその気持ちがわかる。
学生時代の話を懐かしむ事が多かったのは確かであり、マリアにディーノ、スクアーロの三人が揃えば余計に学生時代に戻った気分になってしまう。
現に先程のマリアとスクアーロのやり取りも、ディーノが止めに入るのも学生時代の時は日常茶飯事だったのだ。
喧嘩とまではいかないが、学生時代もそんなノリでスクアーロとつるんでいた。
勿論実験台と称し怪しげな実験に強制的に参加させられればディーノもそこに加わり言い争うと言ったやり取りになる。
学生時代は本当によく合った光景なのだ、だからこそつい当時のノリで接してしまう。
リボーンは「養親元気にしてるのか?」と言えばマリアは苦笑しながら言葉を紡ぐ。
『あー…言ってなかったっけ?お義父さん五年前に亡くなったから』
当時母親の方は小さい頃に死んだと聞いていたが、まさか養親も亡くなっていると聞いた事が無かったためリボーンはバツが悪そうに「悪い」とマリアに呟いた。
『知らなかったんだし仕方ないよ、リボーン』
「そうか…なぁ、ディーノも会った事あるのか?マリアの養親に?」
「そりゃあマリアの家に遊びに行く事も合ったからな」
リボーンの言葉に、それは勿論とディーノも頷く。
九歳の頃マリアと再会した時にマリアの養親であるフィネスと知り合った。
白色の肩までの長さの髪に紫の瞳がディーノの記憶の中では印象的だった。
常に気難しそうな表情をしておりディーノがマリアの家に行く度睨まれていたのをディーノ自身よく覚えている。
その事をマリアに言えば『お義父さんいつもあんな感じよ?』と元からだと言われたがそれでもディーノは睨まれている気しかしなかったのだ。
「気難しそうな顔しか見た事ねぇーから、毎回ヒヤヒヤしたけどなマリアの家に行く度に」
『まぁ、ディーノの言うように気難しい表情しかしないし口も悪かったけど…それでも根は優しい人だから』
昔を懐かしむようにマリアは思い出す。
勉強の楽しさを教えてくれた人であり、マリアに科学者になるきっかけを与えてくれた人でもある。
きちんとマリアと向き合いマリアの話を聞き、マリアとの時間を大切にしてくれた。
幼い頃はよく体調を崩しては寝込んでいたマリアの看病を付きっきりで行い、面倒を見てくれたりと根は優しいのを知っているからこそマリアにとって普段の表情がどれだけ気難しそうな顔しかしていなくても気にならなかった。
フィネスがマリアをマフィア候補生が通う学校に放りこんだのもマリアの事を思ってたの事だとマリアは知っている。
フリーの道を選んだことに反対せず受け入れ、最後の最後まで不器用ながらもマリアに愛情を注いでくれたのだ。
父親と言う存在がどんなものか、マリアは知らない。
マリアには縁のなかった存在であり、正直幼い頃のマリアは自分の父親は名ばかりの存在であり父とすら思った事が無い。
だがディーノの父親がディーノに接するのを見れば、きっと温かい存在なのだろうとマリアはそう認識している。
『画家だったからよくアトリエに籠ってたりしてたけど…それでもあたしの事ちゃんと見ててくれたから』
「画家なら生活は大丈夫だったのか?」
リボーンの言葉にマリアは『勿論』と答えた。
リボーンの言葉の意味をマリアは分からなくはない。
何故なら画家は、自分の作品が売れればお金が入ってくる職業だ。
売れなければお金が入ってくる事もなく生活的にも苦しいのだ。
だが養親であるフィネスの場合は自分の作品が売れようが売れまいが、どうでも良いと言う認識だった。
自分が納得をする物が描ければ、作れればそれでいい…そう言う人間だったからこそマリアも似たような部分がある。
だが現実問題お金が無ければ人は生きれない、それもあり保険として別の仕事もたまにしていたが…
『…お義父さんの作品って…まぁ、刺さる人には刺さってたのよね』
「そうなのか?」
マリアの言葉にディーノが首を傾げる。
フィネスが画家と言う職業をしているのは知っていたがその作品の売買については勿論知らない。
ディーノもフィネスが描いた絵を見た事が有るのだが…正直言うと上手いとは言い難かった。
それは上手い下手の領域の話ではなく、キュビズムの手法で描かれているからだ。
キュビズムの作品は分解・再構築によって現実からはかけ離れた描き方をしているからこそ、マリアの言ったように刺さる人には刺さってたと言う言葉が正解である。
「俺はあんま…フィネスさんの描いてた絵がよく分かんなかったが…」
『それはあたしも思ってるけど…』
ディーノの呟きに、マリア自身も同意する。
マリア自身フィネスの描いた絵の良さなど微塵も分からなかった。
何処がどう凄いのか?どこが刺さる人には刺さったのか考えた事もあるが、絵心が無い故かキュビズムの感性が分からないのかマリアは考えた所で全く理解は出来なかった。
だが養親が絵を描いている姿は生き生きとしていたので、正直絵の良さよりもフィネスが楽しければ、納得するならそれでいいとマリア自身幼いながらに思っていた。
『ピカソの作品だってそうでしょ?刺さる人には刺さるし、刺さればそれなりに評価してもらえるんだから』
「…今朝のルッスーリアとマリアみたいな状況になってたのか?」
『…ある意味そうね…』
今朝の事を言われればマリアは少し遠い目をして天井を見上げた。
マリアはあまり自分が紅白衣である事を依頼者に知られたくないのもそれが原因だったりする。
幼い頃から養親の作品のやり取りを見てマリアですらドン引きした事が何回かあった。
大の大人が縋るようにフィネスの足にしがみつき「いくらだ?!いくら払えばこの素敵な絵を買えるんだ!!!!」と泣きつき金額を提示しては「安すぎる!!!!もっと高くてもいい!否、高値で支払わせてくれ!!!!」と言った光景を目にしているのだ。
幼いながらそう言った光景を目にしていれば自然と耐性が付くものの、やはり目の前で繰り広げられれば目の前の現実から目を逸らそうと現実逃避くらいはする。
引く事は無くなったのだがそれでも目を逸らしたい出来事に変わりはない。
出来る事ならそう言った面倒事は避けたいのだ、だからこそ金額について言われようがマリアは断りを入れる。
『まぁ、そんな感じだったから生活には困らなかったし…今も、ちゃんと生活出来てるわよ』
「なら安心だな」
『心配してくれてありがとうね、リボーン』
そう言ってマリアはリボーンを抱きしめる。
室内でも帽子を被っているため頭を撫でる事は出来ないのだ、膝に乗っているのをいい事にマリアはリボーンを抱きしめた。
ビアンキもまだ帰ってきていないのだ、少し位ならいいだろうとリボーンを抱きしめればすっぽりとマリアの腕の中に納まる。
「……」
マリアの腕の中に居るリボーンに、ディーノは嫉妬の眼差しを向けるもののリボーンは気づいていながらにっと笑う。
それこそ言葉にはしないものの“早く気持ちを伝えたらディーノだってしてもらえるぞ?”とでも言いたげな表情である。
現在はツナの家庭教師ではあるものの、元教え子であったディーノの扱いには慣れているのだ。
教え子の嫉妬心を煽るのですら、リボーンにとってはお手の物である。
お互いもう二十を超えているのだから早くロマーリオ達を安心させてやれと思っているし、何十年も幼馴染の関係で止まっているのだからこれを機にさっさと付き合えとすら思う。
否、傍から見ていていい加減付き合えと喝を入れる方が早いのではないかとすら最近思うのだ。
リボーンだって鬼ではない。
マリアとディーノが早く付き合えばいいと願っているうちの一人なのだから…。
「やっと解けた…って、マリアさんいつの間に戻って来たんですか?!」
するとガバッと問題用紙から顔を上げればツナが驚きながら慌てる。
ようやく解いていた問題を解き終えたのだろう、問題用紙の問題は全て埋まっていた。
『さっきから居たわよ?』
「え、え、えっ?!マリアさん声かけてくれたらよかったのに」
『ツナ集中してたし、それにもう少しで問題も終わりそうだったからね…』
頂戴と言わんばかりに手を差し出し、マリアはツナの問題を採点し始めた。
2024/09/27
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