不器用な恋
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※【ディーノside】
温かな日差しが降り注ぐ中。
何時ものように仕事に追われ、キャバッローネ・ファミリーのボスであるディーノは机の上で項垂れていた。
机の上には書類の山が連なっており、何処を見渡しても書類の山しか見当たらない。
先程読んでいた書類も一向に進まず、この途方もない空間にディーノは大きなため息を溢した。
やってもやっても終わらない書類仕事。
気が遠くなる作業に、ディーノは無意識のうちにまた一つため息をつく。
「しゃーねぇ…やるか」
気を取り直して書類を一枚手に持ち内容を読んでいこうとするが、ふいにドタドタと騒がしい足音が聞こえてくる。
(あ~…この足音まさかマリアか?)
持っていた書類をピラピラと動かせながらそんな事を考える。
現在屋敷の中に居る部下の足音にしては軽すぎ、もしディーノを狙う暗殺者の足音だとしたらそれはそれで暗殺に向いていない人間の足音だ。
そもそもこんな騒がしい足音を立てていれば部下がいち早く反応するだろう。
だが部下が動き出す気配は何処にもない、思い当たるのは幼馴染であるマリアの足音だ。
またいつものように勢いよく扉を開けて入ってくるのか…そうディーノは思っていたが今回はどうやら違った。
『おらぁぁぁあああディーノ!!!』
「な、何だよマリア…って、普通に入れよ馬鹿!」
扉を蹴破り入ってくるマリアに思わず驚く。
慌ててマリアに言うものの、マリアはそんなディーノの言葉なんて気にも留めず室内を見渡した。
『相変わらず仕事の山で大変そうね』っと、大変そうと全く思っていない表情で呟く。
そんなマリアに、ディーノは憎まれ口を叩くかのように返した。
(いつもこうだ…。)
本当はもっと別の事を言いたいのに、マリアが絡むとどうしても素直になるどころか売り言葉に買い言葉。
否、火に油を注ぐような発言をついついしてしまう。
仲が悪いわけでも喧嘩や言い合いをしたいわけではない。
だがどうしてもマリアの前だと素直に言えないのだ…。
マリアの言葉に椅子から立ち上がればよろけて机の上に勢いよくディーノは頭をぶつけ、そのはずみに机の上に山積みになっていた書類がディーノを襲う。
普段なら避けられるはずなのだが、今居る室内にはディーノとマリアしか居ない。
部下の居ない状況で何時ものような運動神経は出せずに、ただただ雪崩れてくる書類の山にディーノは襲われた。
いくらただの書類…もとい紙切れと言えど何枚も積み重なっているのだからそれなりに重い。
「っつ…いってー…」
『いつまで経ってもへなちょこなのは変わらないわね』
「うるせー…それより、今日は何の用だよマリア?」
そうディーノが問えば、マリアは今まっですっかり忘れていたかのように思い出し言葉を紡ぐ。
『あ~…そう言えばディーノに聞きたい事が有って来たんだった。忘れてたわ』
「おいこら忘れるなよ?!」
『うるさい黙れへなちょこ!』
マリアは懐から護身用の銃を取り出し、ディーノに突きつけた。
(一応俺キャバッローネ・ファミリーのボスなんだけどなぁ…)
書類を拾いながら、ポツリとディーノは心の中で呟く。
幼馴染の前ではキャバッローネ・ファミリーのボスなんて言う肩書は皆無である。
本気で撃つとは思っていないが、誰だって銃を向けられれば冷や汗をかいてしまう。
マリアに気づかれないように、ため息をつき「で、何だよ聞きたい事って…?」とディーノは問う。
一枚、また一枚と床に散らばった書類を拾っていく。
マリアは突きつけていた銃を下ろし、言葉を紡いだ。
『ディーノってさ、近々日本に行く用事ってある?』
「ジャッポーネにか?」
マリアの言葉にディーノは書類を拾う手が止まり、思わずマリアの方へと視線を向ける。
バチッと、マリアと視線がぶつかるもののマリアはそんなディーノを気にする事なくいつも通りだった。
普段イタリアから出る事なく過ごしているマリアが、何故急にジャポーネ…日本の事を聞くのかディーノは不思議でならない。
観光や旅行にしてもマリアがわざわざも日本を選ぶ理由がディーノには思いつかなかった。
理由を聞いてもマリアは曖昧にはぐらかし、行く用事があるかどうかを銃を向けながらディーノに問う。
仮にディーノ自身日本に用事が無くともマリアの頼みなら連れて行くつもりだった。
丁度この机の上の書類を片付けてから元々日本に行く予定だったのを思い出していると再びマリアが銃を向ける。
歯切れの悪い返答のせいかマリアが苛立ったのがディーノにも分かる。
「この書類の山を終わらせたら行くつもりなんだけど…この量だし…」
『あ?ちゃっちゃと終わらせろ』
「否だからこの量だしそんなすぐ終わらせられねーからさ」
『さっさと終わらせろ』
「はいっつ!!」
マリアの言葉に、ディーノは書類を素早く集め机に向かい書類を進める。
数分後、部屋の扉からディーノの部下であるロマーリオが中に入って来た。
手にはマグカップとコーヒーカップをそれぞれ一つずつ乗せたトレーを持っている。
キャバッローネ・ファミリーの人間なら、それが一体誰のカップなのか一目で分かる。
マグカップの方はマリア用にキャバッローネに置いてある物だ、中身は砂糖とミルクがたっぷり入った甘ったるいカフェラテ。
そしてもう一つのコーヒーカップは…ディーノの分である。
温かい湯気がゆらゆらと天井へと立ち上るのを見れば、どうやら淹れたての様だ。
ロマーリオからマグカップを受け取れば、マリアは美味しそうに一口飲みロマーリオと話をする。
そんなマリアを見ていると、胸の辺りがズキッと痛む。
ただ話している、他愛のない会話をしている。
それだけなのにディーノの心は子供がお気に入りの玩具を誰かに取られたような感情に支配される。
我ながら子供じみた独占欲だなと思いながら…ディーノは手元の書類から目を逸らし、バレないようにマリアを見た。
子供の頃から知っていて、兄妹のように育ったマリアとディーノ。
何時の頃から?と問われればディーノ自身はっきりと覚えていない。
それでも、月日が流れていく度にディーノははっきりと自覚していく。
(なぁ、知ってるか?)
誰かに聞こえるわけでもなく、ただディーノは自分の心の中でマリアに問いかける。
返ってくるはずもない、こちらを見るわけでもないのはディーノ自身だって分かり切っている。
それでも、問いかけてしまうのだ。
(俺がずっと…マリアの好きだって事…)
何度目かの想いを胸に秘め、ディーノは再び書類に視線を向けた。
2024/08/27
温かな日差しが降り注ぐ中。
何時ものように仕事に追われ、キャバッローネ・ファミリーのボスであるディーノは机の上で項垂れていた。
机の上には書類の山が連なっており、何処を見渡しても書類の山しか見当たらない。
先程読んでいた書類も一向に進まず、この途方もない空間にディーノは大きなため息を溢した。
やってもやっても終わらない書類仕事。
気が遠くなる作業に、ディーノは無意識のうちにまた一つため息をつく。
「しゃーねぇ…やるか」
気を取り直して書類を一枚手に持ち内容を読んでいこうとするが、ふいにドタドタと騒がしい足音が聞こえてくる。
(あ~…この足音まさかマリアか?)
持っていた書類をピラピラと動かせながらそんな事を考える。
現在屋敷の中に居る部下の足音にしては軽すぎ、もしディーノを狙う暗殺者の足音だとしたらそれはそれで暗殺に向いていない人間の足音だ。
そもそもこんな騒がしい足音を立てていれば部下がいち早く反応するだろう。
だが部下が動き出す気配は何処にもない、思い当たるのは幼馴染であるマリアの足音だ。
またいつものように勢いよく扉を開けて入ってくるのか…そうディーノは思っていたが今回はどうやら違った。
『おらぁぁぁあああディーノ!!!』
「な、何だよマリア…って、普通に入れよ馬鹿!」
扉を蹴破り入ってくるマリアに思わず驚く。
慌ててマリアに言うものの、マリアはそんなディーノの言葉なんて気にも留めず室内を見渡した。
『相変わらず仕事の山で大変そうね』っと、大変そうと全く思っていない表情で呟く。
そんなマリアに、ディーノは憎まれ口を叩くかのように返した。
(いつもこうだ…。)
本当はもっと別の事を言いたいのに、マリアが絡むとどうしても素直になるどころか売り言葉に買い言葉。
否、火に油を注ぐような発言をついついしてしまう。
仲が悪いわけでも喧嘩や言い合いをしたいわけではない。
だがどうしてもマリアの前だと素直に言えないのだ…。
マリアの言葉に椅子から立ち上がればよろけて机の上に勢いよくディーノは頭をぶつけ、そのはずみに机の上に山積みになっていた書類がディーノを襲う。
普段なら避けられるはずなのだが、今居る室内にはディーノとマリアしか居ない。
部下の居ない状況で何時ものような運動神経は出せずに、ただただ雪崩れてくる書類の山にディーノは襲われた。
いくらただの書類…もとい紙切れと言えど何枚も積み重なっているのだからそれなりに重い。
「っつ…いってー…」
『いつまで経ってもへなちょこなのは変わらないわね』
「うるせー…それより、今日は何の用だよマリア?」
そうディーノが問えば、マリアは今まっですっかり忘れていたかのように思い出し言葉を紡ぐ。
『あ~…そう言えばディーノに聞きたい事が有って来たんだった。忘れてたわ』
「おいこら忘れるなよ?!」
『うるさい黙れへなちょこ!』
マリアは懐から護身用の銃を取り出し、ディーノに突きつけた。
(一応俺キャバッローネ・ファミリーのボスなんだけどなぁ…)
書類を拾いながら、ポツリとディーノは心の中で呟く。
幼馴染の前ではキャバッローネ・ファミリーのボスなんて言う肩書は皆無である。
本気で撃つとは思っていないが、誰だって銃を向けられれば冷や汗をかいてしまう。
マリアに気づかれないように、ため息をつき「で、何だよ聞きたい事って…?」とディーノは問う。
一枚、また一枚と床に散らばった書類を拾っていく。
マリアは突きつけていた銃を下ろし、言葉を紡いだ。
『ディーノってさ、近々日本に行く用事ってある?』
「ジャッポーネにか?」
マリアの言葉にディーノは書類を拾う手が止まり、思わずマリアの方へと視線を向ける。
バチッと、マリアと視線がぶつかるもののマリアはそんなディーノを気にする事なくいつも通りだった。
普段イタリアから出る事なく過ごしているマリアが、何故急にジャポーネ…日本の事を聞くのかディーノは不思議でならない。
観光や旅行にしてもマリアがわざわざも日本を選ぶ理由がディーノには思いつかなかった。
理由を聞いてもマリアは曖昧にはぐらかし、行く用事があるかどうかを銃を向けながらディーノに問う。
仮にディーノ自身日本に用事が無くともマリアの頼みなら連れて行くつもりだった。
丁度この机の上の書類を片付けてから元々日本に行く予定だったのを思い出していると再びマリアが銃を向ける。
歯切れの悪い返答のせいかマリアが苛立ったのがディーノにも分かる。
「この書類の山を終わらせたら行くつもりなんだけど…この量だし…」
『あ?ちゃっちゃと終わらせろ』
「否だからこの量だしそんなすぐ終わらせられねーからさ」
『さっさと終わらせろ』
「はいっつ!!」
マリアの言葉に、ディーノは書類を素早く集め机に向かい書類を進める。
数分後、部屋の扉からディーノの部下であるロマーリオが中に入って来た。
手にはマグカップとコーヒーカップをそれぞれ一つずつ乗せたトレーを持っている。
キャバッローネ・ファミリーの人間なら、それが一体誰のカップなのか一目で分かる。
マグカップの方はマリア用にキャバッローネに置いてある物だ、中身は砂糖とミルクがたっぷり入った甘ったるいカフェラテ。
そしてもう一つのコーヒーカップは…ディーノの分である。
温かい湯気がゆらゆらと天井へと立ち上るのを見れば、どうやら淹れたての様だ。
ロマーリオからマグカップを受け取れば、マリアは美味しそうに一口飲みロマーリオと話をする。
そんなマリアを見ていると、胸の辺りがズキッと痛む。
ただ話している、他愛のない会話をしている。
それだけなのにディーノの心は子供がお気に入りの玩具を誰かに取られたような感情に支配される。
我ながら子供じみた独占欲だなと思いながら…ディーノは手元の書類から目を逸らし、バレないようにマリアを見た。
子供の頃から知っていて、兄妹のように育ったマリアとディーノ。
何時の頃から?と問われればディーノ自身はっきりと覚えていない。
それでも、月日が流れていく度にディーノははっきりと自覚していく。
(なぁ、知ってるか?)
誰かに聞こえるわけでもなく、ただディーノは自分の心の中でマリアに問いかける。
返ってくるはずもない、こちらを見るわけでもないのはディーノ自身だって分かり切っている。
それでも、問いかけてしまうのだ。
(俺がずっと…マリアの好きだって事…)
何度目かの想いを胸に秘め、ディーノは再び書類に視線を向けた。
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