不器用な恋
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昼食を終えれば、ツナ達は再びテスト勉強を開始する。
前半でツナは英語の科目を集中的にやったため、後半は国語と社会だ。
国語の点数は初日の教科の中ではまだマシな方なので、時間をかけるとすれば社会の科目だ。
社会と言っても中学生となると社会の内容は大まかに地理と歴史に大きく別れる。
テスト内容も地理と歴史半々で出されているので社会に時間をかけるのが賢明だろう。
地理も歴史も暗記科目である事に変わりないのだ。
だが英語同様覚える事も多いが、まだ地理と歴史の方が楽しく勉強は出来る事に越したことはない。
一通りマリアがこれまで作った資料に目を通してから、昨夜ツナ専用に作られた問題をツナは解いていく。
地理と歴史の内容をそれぞれ半々に作った問題だ。
過去のテスト傾向を分析し一応社会の教師が出すであろう問題をマリアはピックアップしたのだ。
(さてさて…どこまで出来るかな?ツナ)
問題を解いているツナをマリアはただただ見守る事しか出来ない。
英語や数学等分からない問題が発生する場合は声をかけられれば答えるが社会は暗記なのだ。
問題を解いている間マリアは手を出す事が出来ず時間を持て余してしまう。
「ゔお゙ぉぉい!!そこの読み間違ってんぞ」
「…どこの読みだよ?!」
獄寺は未だ国語の勉強に時間を割き、山本は社会の勉強をしているのだろう。
スクアーロがディーノに変わって国語を獄寺に教え、山本が解いた問題をルッスーリアが採点している。
ふいにディーノの方に視線を向ければ、英語の問題を解いている京子について教えていた。
「ディーノさん、ここの文法ってどうなるんですか?」
「そこはこっち動詞を使って…」
「はひっ!ディーノさんディーノさん!ハルも同じ所が分からないので教えてください!」
「お、じゃあ二人いっぺんに教えるか。ハルもこっち来いよ」
ディーノの左右に京子とハルが座り、真ん中でディーノが先ほど京子に問われた文法について二人に説明する。
国語は苦手だが英語はディーノの得意分野だ。
二人に分かりやすく説明すれば二人とも飲み込みが早いのかすぐさま理解する。
「と言う事はこういう事ですね…!」
「そうそう、やっぱ理解が早いな京子にハルも」
「ディーノさんの教え方が上手いからですよ!」
「ははっ、おだてたってなんもでねぇーからな」
そう言いながら楽しそうにディーノは笑い笑顔を京子とハルに向ける。
―――ズキッ
(…あれ?)
そんなディーノ達のやり取りを見ているとマリアの胸の辺りが痛み出す。
ただ勉強についてディーノに聞いているだけだ、何処にでもある勉強を教えている当たり前の光景。
それなのにディーノを視界に写すだけで何故かマリアの胸に鈍い痛みが走る。
(何で…だろ?何で、ディーノは普通に勉強を教えてるはずなのに…)
ぎゅっと締め付けられモヤモヤとした何とも言えない気持ちにかられてしまう。
そんな表情を見せないで欲しい、自分にだけに見せて欲しいと思う気持ち、不安、モヤモヤ、イライラ…今まで感じた事のない気持ちがマリアの中で渦巻く。
(何だろ?この気持ち…)
今までに感じた事のない気持ちに、一体何だろうとマリアは心の中で探し出す。
答えは決まっている、決まっていて他の理由を探そうとするものの探してもそれ以外の答えを出す事が出来ない。
答えはたった一つ、マリアが“嫉妬”しているだけなのだから。
『……』
自分の中で手探りに探した感情の答えを見つけるや否や、マリアは思わず頭を振る。
幾らマリアがディーノに対し好意があると言えど、ただ勉強を教えているだけなのだ。
勉強を教えてもらって居る京子もハルも、ディーノに好意を寄せている…わけではないのだ、マリアから見て。
分かっている、頭では分かっているのにどうしても心がそれを受け入れられず不安になり、イライラモヤモヤとした感情に支配され嫉妬する。
思えばディーノが自分以外の異性と話をしている所をマリアは見た事が無いのだ。
学生時代もそうだ、思い返せばディーノが異性と話しているのを見かけた事が無い。
惚れ薬を使った際に群がる異性は確かに居たのだが、その時はそんな感情よりも先に科学者としての結果を求めていたので嫉妬する事がなかった。
故に今回ツナの友達である京子達がディーノと仲良くしている、ディーノが笑顔で接していると言う状況にマリア自身気持ちの処理が出来ずに居た。
「マリアさん…?」
『ぁ、ごめんねツナ。どうしたの?』
ふとマリアの表情が気になり、ツナはマリアに声をかける。
マリアは慌ててツナの方に視線を向ければほんの少し眉が下がっていた。
何か言いたそうにするもののツナは「あ、えっと…マリアさん解き終わりました」と別の言葉を紡ぐ。
『?じゃあ採点するわね』
「お願いします」
赤ペンを手に取りツナから問題用紙を受け取れば手慣れた手つきでマリアは丸を付けて行く。
解答の容姿を見ることなく、スラスラと丸付けをすれば、二十問中十五問ほど正解している。
暗記問題ではあるものの、半分以上取れているのだ。
ツナのこれまでの点数を知っているマリアからすれば十分上出来だった。
『良く出来たじゃない、ツナ』
問題用紙をツナに返しそう言ってマリアはいつも通りツナの頭を撫でた。
午前中は流石に人数も多いためツナの頭を撫でる事をしなかったが、つい何時もの拍子で頭を撫でてしまう。
いい子いい子と頭を撫でればツナも何時もの様に嬉しそうにはにかむ。
「ゔお゙ぉぉい!!マリアてめぇー今のは何だ?!」
『うるさいわよスクアーロ…何だって何よ?』
ツナの頭を撫でていれば不意に山本に勉強を教えていたスクアーロが立ち上がりマリアに叫ぶ。
その声に勉強していたはずの獄寺や山本、ルッスーリア、京子にハル、ディーノにリボーンまでスクアーロとマリアの方に視線を向けた。
一体何事だと言わんばかりにスクアーロに視線が集まる。
「お前俺達の時そんな事してなかっただろ?!」
『は?何がよ?』
スクアーロの言葉に何の事を言っているのだろうとマリアが首を傾げた。
そんな事とは一体何の事を言っているのだろうとマリア自身全くスクアーロが言っている事に身に覚えが無いのだ。
「沢田綱吉にしてるそれだ、それ!!!」
『それ…?』
スクアーロに言われ思わずツナの方に目を向ける。
“それ”とは何だろうか?と思いながら首を傾げれば、ツナが「多分これの事だと思いますよ」とマリアの手を指さす。
それが指していたのがツナの頭を撫でると言う事に気づけば『同級生相手に頭撫でるなんてしないでしょ?』とスッパリ答えた。
「うぐっ…、それに間違えたら間違えたでハリセンでよく叩いてただろ??!」
『間違える方が悪いでしょ』
「ゔお゙ぉぉい!!??沢田綱吉も間違えてるだろ!!!」
スクアーロの言う通り、先ほど採点した問題を見れば五問間違えている。
学生時代、スクアーロもディーノもテスト勉強はマリアに苦手科目を毎回お世話になっていたのだ。
勿論マリアの分かりやすい解説付きでありお手製の問題をそれぞれ個別に出されていたのも変わらない。
だが唯一違うとすれば問題を間違える度にスクアーロもディーノもハリセンで頭を叩かれていたのだ、それはもう容赦なく。
何故マリアがハリセンなんて代物を持っていたかと言えばそれはリボーンが「これを使うといいぞ」とマリアに渡したのが発端だ。
銃を突きつけられるよりかは遥かにマシだ、マシなのだが強度があるせいかハリセンで叩かれれば毎度パコーンと甲高い音と共に強烈な痛みが走り罵倒されていた。
だが今のマリアは『年下にはしないわよ、流石に』と言う。
同級生相手ならまだしも年下にはそんな事をする必要がないのだ。
スクアーロだって分かってはいる、分かってはいるのだが自分は頭を撫でられたことが無いのだ。
羨ましいと言葉にすることが出来ず、行き場のない気持ちを消化する事ができない。
「やるなら徹底的にやれ!!俺等の時より生ぬるいぞマリア!!!」
『何よ、あたしのやり方に口出しする気?』
バチバチとお互い睨み合い「表出ろマリア!!!」、『スクアーロの癖に良い度胸してるじゃない!!!』と双方いつの間にかヒートアップする。
流石にそれはまずいと思いツナに獄寺、山本が二人を止めにかかるのだ。
ルッスーリアも何だかんだでマリアとスクアーロを宥めに間に入る。
リボーンだけは面白がり手を出さずにそんな彼らを見て笑っているが…。
そんなマリアとスクアーロの言い争いを聞いていると京子は当事者であるディーノに問う。
「…スクアーロさんが言ってる事って本当何ですか?」
「まぁ、スクアーロの言う通り間違えたらその度マリアにハリセンで叩かれてたな…」
昔を思い出せばディーノは苦笑する。
ハリセンで叩かれるのは確かに痛かったが、懇切丁寧に分かりやすく説明してくれたにも関わらず答えを間違えたのだ。
それでも間違えるのだから自分たちにも非があると思えば仕方ない事ではあった。
自分の勉強時間を削りマリアはディーノとスクアーロに勉強を教える。
どう説明すれば分かりやすいか、理解しやすいか…そうした事を沢山考えながら勉強を教えているのを知っているのでディーノもスクアーロも正直叩かれる事に関しては痛いが甘んじて受け入れる。
だがテストが終わればお疲れ様会と称しては家庭科室でマリアが作った手作りのご飯を食べていたのだ、飴と鞭の使い方が昔から美味かったなとつくづく思う。
それでもマリアがツナの頭を撫でた事に関してスクアーロは気に入らなかったのだろう。
勿論それはディーノにも当てはまるのだ。
(…俺だってマリアに頭撫でられた事ねぇーのに)
手作りご飯を食べた事はあれど、あんな風に頭を撫でられることは一度もなかったのだ。
ディーノもスクアーロもマリアに想いを寄せているからこそ…否、寄せているが故にディーノはスクアーロが気に入らなかった理由も痛いほど分かってしまう。
「…俺も止めに入るか」
放っておいてもマリアとスクアーロの事だ。
学生時代も何度かこういう事はあったが、数分すれば何事もなかったかのように接する事位ディーノは理解している。
だが今現在勉強会をしているのだからそろそろ喧嘩を終わらせなければ勉強が進まないのだ。
ディーノも立ち上がり、他のメンバーと同じようにマリアを止めに入ったのだった。
2024/09/25
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