不器用な恋
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『「「あ」」』
土曜日、ツナの家の前に九時半頃到着すれば丁度スクアーロと同じタイミングで鉢合わせしてしまいマリアとディーノ、スクアーロは声を漏らした。
スクアーロは普段の黒いヴァリアーの隊服とは違い、シンプルな服装を着ている。
ワンポイントに鮫がプリントされている黒いTシャツに、下は黒色のワイドスラックス。
私服だと言うのに服装も上から下まで真っ黒である。
『この間振りね、スクアーロ』
「マリアてめぇ俺を脅すとは良い度胸じゃねぇーか!!!」
『脅すだなんて人聞きの悪い事言わないでよ?ただ頼んだだけじゃない?』
「ゔお゙ぉい!!!どの口が頼んだなんて抜かすんだコラ!!!!」
朝っぱらだと言うのにスクアーロのけたたましい声が響く。
まるで学生時代のやり取りを見ているようだとマリアの隣に居るディーノは思う。
学生時代こういった光景をよく目にしていたし、何ならディーノ自身も同じように加わっていたのだ。
主にマリアの薬の実験台にされる度にこうしてマリアと言い合いをしていたのだから。
『いいじゃない?あんたもヴァリアーなんだしボンゴレの一員みたいなもんでしょ?十代目ボンゴレボスの勉強の一つや二つ見てあげなさいよ』
「俺だって任務があるんだよ!ガキのお守りしてる暇はねぇーぞ!!!」
『…見つかってないくせに』
「うっ…」
マリアにそう言われてしまえば、スクアーロは口を噤んだ。
実際マリアの言う通りなのだ。
マリアとカフェでの食事を終えてからも土曜日も、スクアーロは九代目からの任務を続行した。
だが一向に探し人は見つからずお手上げ状態なのだ。
マーモンの念写ですら曖昧過ぎて手がかりが何一つない、そんな状況故に闇雲に探すのにも限界が来ている。
口を噤んだまま何も言えないスクアーロの背後から「ふふ、バレバレじゃないスクアーロ」と言いながら、ルッスーリアがひょっこりと顔をのぞかせる。
ルッスーリアも同様に、ヴァリアーの隊服ではなく少し派手な私服姿でマリアとディーノの前に姿を現した。
『あれ?何でルッスーリアが此処に?』
「ふふ、暇だし面白そうだから着いて来ちゃった」
ルッスーリアはそう言いながらマリアの方に近づく。
表情は笑顔なのだが、その笑顔が何処か怖くマリアは一歩後ずさりする。
「それはそうとマリアちゃん…」
『ん、何ルッスーリア?』
ルッスーリアがマリアの目の前に立てば、マリアの肩をがっしり掴んだ。
どうしたのだろう?と思いながら、マリアはもう一度ルッスーリアの名を呼ぶ。
『ルッスーリア?』
「いくらなの…」
『え…?』
突拍子のない言葉にマリアは理解できず呆けたような声が漏れる。
ガシリと両肩を掴まれればルッスーリアが顔を上げ「いくら払えばあのヘアオイル買えるのマリアちゃんっつ!!!!いえ、紅白衣ちゃん!!!!」とマリアを前後に揺らす。
前後に揺らされれば『気持ち悪い…』と揺らされる振動でマリアの顔色が段々悪くなっていく。
だがルッスーリアはそれに気づかず「答えて!紅白衣ちゃん!!!」と興奮気味にマリアを前後に揺らすのだ。
普段も普段でヤバイ奴とスクアーロ自身思っていたがそれよりも遥かにヤバイ行動をするルッスーリアにスクアーロはドン引きしながら声をかける。
「ゔお゙ぉい…どうしたんだルッスーリア…」
「どうしたんだじゃないでしょスクアーロ!!!この子紅白衣ちゃんよ?!紅白衣ちゃん!!!」
興奮しながらルッスーリアはスクアーロに叫ぶ。
その言葉にマリアは驚き目を見開く。
この間スクアーロとルッスーリアでご飯を食べた時、スクアーロそっちのけで会話を弾ませていたがマリアが紅白衣と言う事はルッスーリアには伝えていない。
スクアーロが伝えたとも考えづらく、何故わかったのかマリアは不思議でしかない。
『…何で名前知って…?』
「私も!!!!貴女に毎月依頼する依頼者だからよっ!!!!」
マリアの言葉にそう叫び、ルッスーリアは今まで以上に顔を綻ばせる。
ルッスーリアの言葉にだから何だと言うのだ?とスクアーロは理解出来ていないが、同じように見ていたディーノは「相変わらずマリアの依頼者って熱狂的な奴しかいねぇーな…」とドン引きとまではいかないが、それなりに引きながらマリアとルッスーリアのやり取りを見ていた。
「どういう事だ跳ね馬?」
「ん?スクアーロ知らないのか?マリアの仕事上の通り名が紅白衣って」
「否、それ位俺だって知ってるぞ…」
確かにルッスーリアがマリアに向かって叫んだ言葉“紅白衣”
それは学生時代校内でマリアを呼ぶ時の名前だった。
赤い髪に常に白衣を身に纏っている事から安易につけられた名前。
その名前を今マリアは仕事上の通り名で使っているのだ。
「マリアの依頼者って大体皆ああなるんだよ…。狂ったようにマリアが紅白衣だと知れば貢ぎたがるって言うか…」
ディーノも最初こそスクアーロと同じようにドン引きした。
今思い出してもあれは強烈過ぎたのだ。
とあるパーティーに同伴としてマリアを一度だけ連れて行った事がある。
その時のパーティーの主催者は気難しい人ではあったが、マリアに依頼をしている人らしくマリアが紅白衣と知るやいなやマリアに対して五体投地するわとんでもない額の金を渡そうとするわで相当酷い光景をディーノは目の当たりにした。
その主催者だけならまだ良かったのだが…主催者だけではなくそのファミリー全員がマリアに感謝を述べ五体投地するのだ。
大の大人が…否、年齢関係なく老若男女問わずにそんな光景を目にすれば誰だってドン引きしてしまう。
マリア自身その光景に何度か見覚えがあるのか、現実逃避しつつ何とかその場を収めていた。
あまりにも酷い依頼者の行動にディーノは思わず「麻薬や依存成分でも使ってんのか?」と一度だけマリアに聞いた事が有る。
そんな危ない成分が入った物は使われていない事も、ディーノ自身キャバッローネ・ファミリーのボスに就いた後もたまに実験台として使われていたのでその身をもって自分が言った言葉は当てはまらないと分かっている。
分かっているのだがそう聞かずにはいられなかった…それほどまでにマリアの依頼者は異常なほどにマリアの作った物を所望し金を払おうとする。
無論『そんなわけないでしょ』とマリアに銃を突き付けられたのは言うまでもない。
「この間貰ったヘアオイルを使ってすぐ気づいたわ、あれは紅白衣ちゃんじゃないと出せない効果だもの。あんなのタダで貰っていい物じゃないわ!ちゃんと支払わせて?そして定期的に買わせて欲しいのっ!!!!」
『でもあれはお近づきの記念にあげたやつだから…』
「そんな事言わないで?!お願い、支払わせて?定期的に買わせてぇぇえええええ!!!」
そんなマリアとルッスーリアのやり取りが繰り返されるのを見れば、未だにスクアーロはドン引きしたままだ。
スクアーロですらディーノと同じように「ヤクでも盛ってんのか?」と問いたくなったのだろう。
盛ってない事位分かっている、分かっているのだ…だが言わざる負えない状況が目の前で繰り広げられていれば誰だってそう言いたくなる。
『わ、分かった…定期的にルッスーリアの依頼で作るから、作るから今回の分はタダでいいでしょ?』
「…マリアちゃんがそう言うなら分かったわ…。でも、金額はマリアちゃんが言おうとしている額にゼロ三つ付け足して!」
ルッスーリアの言葉にマリアは思わず『何でよ?!』と叫ぶ。
マリアだって依頼されればヘアオイルの一つや二つ作る事は可能だ。
だがまさか金額について言われるとは思っておらずルッスーリアに問えば「何でもよ!」と返されてしまう。
『…ゼロ一つ』
「だーめ、三つ」
『…くっ、二つで』
「んー…仕方ないわね」
マリアの言葉にまだ少し不満そうではあるが、ルッスーリアは仕方ないと折れた。
お互い譲れない所はあるが譲渡するしかないのだと先程のやり取りで理解してしまったのだ。
折れる所は折れるしかない、そうしなければこの話はきっと平行線のままだったのだから―――…
「お前等朝からうるせぇーぞ!」
バキュンッと音を立てながらいつの間にかツナの家から出て来たリボーンがCz75の1stで空を打つ。
そんなリボーンにルッスーリアはただただ「あら~、ごめんなさいね?」と返し、マリアは無言のままリボーンに目を向けている。
自分は被害者だとでも言いたげな視線だが、リボーンはそんな事気にせず「同罪だぞ」とマリアに言う。
ディーノもスクアーロもリボーンの登場に安堵するものの、もう少し早く出てきてくれと心の中で思ったが決して口に出すことはなかった。
2024/09/23
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