不器用な恋
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※【ディーノside】
公園でマリアを助けてから数時間経ったが、あの後マリアと話す事なくディーノは滞在するホテルの自分が泊っている部屋に居た。
雲雀に修業を付けていた何時ものラフなストリート風のファッションでもお気に入りのフードにファーの付いたモッズコートすら今は着ていない。
きちんとした堅苦しい黒いスーツに緩めることなくネクタイが締まっている。
普段日本に来る時は決まってリボーンやボンゴレ九代目の頼まれごとが九割ほど占めているが…今回は日本に来る理由であった会合に参加するためにディーノは日本に来ていた。
時間を見れば会合まで後二時間ほどある。
何時も通りマリアをツナの家まで送ってそれから会合に向かえば十分間に合う時間だ。
「嫌われちまったかな…」
数時間前の事を思い出せば、ディーノは溜息を溢す。
腹心の部下であるロマーリオは「お嬢もボスと同じように吃驚してるだけさ」と言っていたが本当にそうだろうか?と不安になってしまう。
確かにディーノ自身吃驚…というよりも混乱していた。
公園から戻ってきて時間が経ち吃驚、もとい混乱も治まったが今度は不安が襲い掛かる。
嫌われてないかと?――――…
無意識であれど本音を溢し、尚且つ「俺の女」なんて言ってしまったのだ。
ナンパ相手を諦めさせるための方便だと言えばまだ「俺の女」発言は言い訳が出来る。
だが「可愛いな」と言った本音だけは隠す事も取り繕う事も出来ない。
一度口にしてしまえばそれがディーノの本心であり本音なのだと…ディーノ自身自覚してしまったからだ。
―――pipipi…
そんな事を考えていると、テーブルに置いてあった携帯が鳴る。
無機質なコール音が鳴り響き、携帯のディスプレイを見れば着信者はマリアだった。
同じホテルに滞在している…何なら滞在している部屋の階層だって一階違いだ。
用があるのならば訪ねてくるはずなのにと思いながら…ディーノは通話ボタンを押し携帯を耳に当てた。
「もしもし?」
電話に出てすぐ、そう問いかけるもののマリアからの反応がない。
「マリア?」
『………』
「おい、マリア?」
『………』
「おーい、マリア?」
『さっきは助けてくれてありがとうディーノ!後殴ってごめん』
そうマリアが息継ぎなしで言葉を言えばブチっと盛大に通話ボタンを切られた。
ディーノの耳には無機質にツー…ツー…と言う機械音だけが聞こえる。
「は…?」
思わず間抜けな声が室内に漏れた。
携帯の画面を確認すればやはり通話は切られている。
マリアは自分が言いたい事を言えたからいいだろう…が、ディーノは何も言えてない。
鳩尾を一発殴られた時、ディーノは嫌われてしまったと思った。
それは普段言わないはずの言葉を言ったり、付き合っても居ないのに“俺の女”とマリアに言ってしまったからだ。
だがそんな事よりも自分の言いたい事だけ言ってこちらの話す隙を与えずに言い逃げしたマリアにすぐさま折り返す。
―――pipipi…
『も、…もしもし…』
「マリアお前な…言い逃げすんなよ」
ワンコールで出たマリアに対し、ディーノは呆れたように言葉を紡ぐ。
言い逃げしたのだからてっきり電話にすら出ないと思っていたが、マリアはきちんと出た。
なら電話を切るな、自分の話を聞けと言いたくなるが不安そうに『だって…』と声を出す辺りマリアも思う所があったのだろう。
「だってじゃねーよ…ったく」
『…怒った?』
「怒る?」
マリアの言葉に一瞬どういう意味だろうと思うが、言い逃げした事に対して怒ったかと問われれば答えはノーだ。
怒るよりも話を聞いてほしい、マリアだけ言いたい事言うのはずるいと思えど、怒る事は何一つない。
『助けてもらったのに殴っちゃったし…』
「マリアの一発は痛かったが怒るもんでもねえーからな」
『鳩尾殴ったのに?』
「マリアお前身体動かす事苦手なくせに的確に急所狙ってくるのはやり過ぎだろ…」
流石のディーノですら油断していたと言えど、きちんと急所を狙ってくるのだから質が悪いとは思った。
身体を使う体育や実技は自分には向いていないと学生時代ですら参加した事が無いマリア。
病弱とまでは言わないが、確かに小さい頃からマリアは体調を崩しやすかった。
大人になった今はまだマシになった方ではあるものの、それでも年に数回は風邪を引くし拗らせれば通常の人よりも回復が遅い。
だからこそ身を守るための術も銃を利用したものになるのをディーノは知っている。
「怒ってねーよ、バカマリア。そっちより言い逃げした方が傷つく」
『…謝ったしお礼も言ったのに?』
「俺の話聞く気ねーだろ、それ。一方的に電話切りやがって」
『…ごめん?』
「疑問形で謝るなよな!」
どうやらマリアは一方的に電話を切り言い逃げした事に関しては何とも思ってないらしい。
自分だけ焦って傷ついたのが馬鹿みたいだ…そう思えば自然とディーノは笑っていた。
マリアもつられて携帯越しではあるがつられて笑っているのが読み取れる。
滞在しているホテルの部屋を出て、ディーノは部下が居ないにも関わらず階段を使い下の階に降りた。
マリアが泊っている階まで着けば、ゆっくりとした足取りでマリアの滞在する部屋へと向かう。
「腕…大丈夫なのか?」
『あー…それは大丈夫。ロマーリオがさっき手当てしてくれたから』
マリアの言葉にディーノはほっと一安心する。
ロマーリオが手当てをしたのならそこまで大した物ではなかったのだろう…そう思っていたが―――…
『青紫色になってたけど…そのうち治るでしょ』
「青紫色って…どんだけ強い力で握ってたんだよあいつ…」
公園で青年がマリアの腕を掴む姿を思い出せば、殺気立ってしまう。
男と女とでは力の差だって歴然としている上に、女性にそう言った行動を取るのがまずアウトだ。
ディーノ自身ナンパなんてした事はないがそれでも相手の事を気遣う事は忘れない。
ほんの少し携帯を離し、「殴っとくべきだったか…」なんて自分らしくない言葉が不意に零れる。
無論携帯を離していたのでマリアは聞き取れなかったのだろう、『なんて?』と問うマリアに、ディーノは「否、なんでもない」と返した。
丁度マリアの滞在する部屋の前までくれば、「…とりあえずマリア、出て来いよ」とマリアに声をかける。
『え?』
「部屋の前に居るから」
言葉足らず故にディーノの言った言葉を理解できずにいるマリアに、ディーノは言葉を付け足した。
ディーノの言葉を聞けば中から物音が聞こえる。
パタパタと足音が聞こえるが、その足音も扉の前でぴたりと止んだ。
「マリア」
『ディーノ…?』
恐る恐るドアを開けながら、マリアがひょっこりと覗く。
マリアの瞳がゆっくりと散大するが、ディーノも同じようにマリアの恰好を見て瞳を大きく見開いた。
自分でも分かるほど気の抜けた表情で「マリアお前その恰好…」と言葉が無意識に零れる。
マリアの恰好は今朝と違っており、イタリアから日本に来た時の服装に…頭からベッドシーツを被っていると言う恰好。
大の大人でも一人で居る時ならやらなくもない格好だが…まさかその姿のままディーノの前に現れるとは思わなかった。
幼い頃、『まだディーノと遊ぶ!』と言ってディーノの寝室でベッドからシーツを剥ぎ取り被っては帰りたくないと駄々をこねていたマリアの姿と重なり、ディーノは自然と口元が緩む。
―――『やだやだやだ、ディーノとまだ遊ぶの!』
―――「マリア、時間も時間だから今日はもう帰ろう?ね、いい子だから?明日もディーノ君と遊ばせてあげるから…!」
あの時はマリアの母親が必死にマリアを宥めてよく連れ帰っていたなと昔を思い出す。
無邪気で素直で…何の取り繕う事もなくお互い本音のまま話せていた頃。
大人になった今はどうしてこうも本音を隠し、本心を隠し嫌われないように“幼馴染”として傍に居れるようにと動こうとしているのか不思議に思ってしまう。
「何子供みたいな事してんだよマリア、いじけてんのか?」
ディーノがそう言えば、マリアは『…いじけてないし』と、そう言いながらツンとした態度を取り視線を逸らすマリアに、ディーノは苦笑する。
視線を逸らしたマリアだが、無意識にちらちらとディーノの方を目で見ているのだ。
マリアも表情からしてまたやってしまったと思っているのだろう。
不安そうな表情を浮かべてちらっとディーノを見ている。
(ほんと可愛いな、マリア)
そんな姿すら愛おしく思う程、自分はマリアが好きなのだと再度気付いてしまう。
「マリア」
『ん、なあに?』
「今朝来てた服…もう着ないのか?」
ディーノの言葉に、マリアはあからさまに顔を顰める。
マリアからして余程触れて欲しくなかった話題なのだろう。
表情そのものが全力で嫌そうな表情を浮かべている。
『動きづらいし…似合ってないから着ないかな…』
「何でだよ!似合ってたじゃねぇ―か」
似合っていたと言う本心も、隠す事なくディーノはマリアにぶつけた。
そしてアベーレだけずるいと、ディーノは内心思う。
マリアをカフェまで送ってやってくれと確かにディーノ自身アベーレに頼んだ。
アベーレは部下であるトマゾの部下であり、まだ入って二年目だが腕っぷしは確かだ。
だがまさか普段着ないような服装を来て行くと誰が予想出来ただろうか?
自分はマリアを助けるのに無我夢中でマリアの服装をちゃんと見ていないのだ。
全く見ていないと言うわけではない…だがきちんと見たのなんてほんの数分あるかないか。
自分のタイミングの悪さに己を恨みたくなる程だ。
「それに…」
『…?』
首を傾げながらマリアはディーノを見る。
ディーノは一瞬言うか言わないか悩んだが、一度言うのも二度言うのもそう変わりない。
盛大にマリアに隠していた本音を言ってしまったのだ、もう取り繕うのも売り言葉に買い言葉…本音を隠すのも止めた。
ディーノはほんの少し頬が熱くなるのを感じながら「…っ、可愛かったし」と答えた。
『っつ…』
「もう、着ないのか?」
そう言ってじっと今度はディーノがマリアを見る。
ディーノの言葉に、マリアはシーツで口元を隠しながら『気が向いたら…ね』と答えぷいっとそっぽを向く。
ほんの少し頬が…耳が赤くなってるのを見て、ディーノはそんなマリアに笑いかけた。
2024/09/15
公園でマリアを助けてから数時間経ったが、あの後マリアと話す事なくディーノは滞在するホテルの自分が泊っている部屋に居た。
雲雀に修業を付けていた何時ものラフなストリート風のファッションでもお気に入りのフードにファーの付いたモッズコートすら今は着ていない。
きちんとした堅苦しい黒いスーツに緩めることなくネクタイが締まっている。
普段日本に来る時は決まってリボーンやボンゴレ九代目の頼まれごとが九割ほど占めているが…今回は日本に来る理由であった会合に参加するためにディーノは日本に来ていた。
時間を見れば会合まで後二時間ほどある。
何時も通りマリアをツナの家まで送ってそれから会合に向かえば十分間に合う時間だ。
「嫌われちまったかな…」
数時間前の事を思い出せば、ディーノは溜息を溢す。
腹心の部下であるロマーリオは「お嬢もボスと同じように吃驚してるだけさ」と言っていたが本当にそうだろうか?と不安になってしまう。
確かにディーノ自身吃驚…というよりも混乱していた。
公園から戻ってきて時間が経ち吃驚、もとい混乱も治まったが今度は不安が襲い掛かる。
嫌われてないかと?――――…
無意識であれど本音を溢し、尚且つ「俺の女」なんて言ってしまったのだ。
ナンパ相手を諦めさせるための方便だと言えばまだ「俺の女」発言は言い訳が出来る。
だが「可愛いな」と言った本音だけは隠す事も取り繕う事も出来ない。
一度口にしてしまえばそれがディーノの本心であり本音なのだと…ディーノ自身自覚してしまったからだ。
―――pipipi…
そんな事を考えていると、テーブルに置いてあった携帯が鳴る。
無機質なコール音が鳴り響き、携帯のディスプレイを見れば着信者はマリアだった。
同じホテルに滞在している…何なら滞在している部屋の階層だって一階違いだ。
用があるのならば訪ねてくるはずなのにと思いながら…ディーノは通話ボタンを押し携帯を耳に当てた。
「もしもし?」
電話に出てすぐ、そう問いかけるもののマリアからの反応がない。
「マリア?」
『………』
「おい、マリア?」
『………』
「おーい、マリア?」
『さっきは助けてくれてありがとうディーノ!後殴ってごめん』
そうマリアが息継ぎなしで言葉を言えばブチっと盛大に通話ボタンを切られた。
ディーノの耳には無機質にツー…ツー…と言う機械音だけが聞こえる。
「は…?」
思わず間抜けな声が室内に漏れた。
携帯の画面を確認すればやはり通話は切られている。
マリアは自分が言いたい事を言えたからいいだろう…が、ディーノは何も言えてない。
鳩尾を一発殴られた時、ディーノは嫌われてしまったと思った。
それは普段言わないはずの言葉を言ったり、付き合っても居ないのに“俺の女”とマリアに言ってしまったからだ。
だがそんな事よりも自分の言いたい事だけ言ってこちらの話す隙を与えずに言い逃げしたマリアにすぐさま折り返す。
―――pipipi…
『も、…もしもし…』
「マリアお前な…言い逃げすんなよ」
ワンコールで出たマリアに対し、ディーノは呆れたように言葉を紡ぐ。
言い逃げしたのだからてっきり電話にすら出ないと思っていたが、マリアはきちんと出た。
なら電話を切るな、自分の話を聞けと言いたくなるが不安そうに『だって…』と声を出す辺りマリアも思う所があったのだろう。
「だってじゃねーよ…ったく」
『…怒った?』
「怒る?」
マリアの言葉に一瞬どういう意味だろうと思うが、言い逃げした事に対して怒ったかと問われれば答えはノーだ。
怒るよりも話を聞いてほしい、マリアだけ言いたい事言うのはずるいと思えど、怒る事は何一つない。
『助けてもらったのに殴っちゃったし…』
「マリアの一発は痛かったが怒るもんでもねえーからな」
『鳩尾殴ったのに?』
「マリアお前身体動かす事苦手なくせに的確に急所狙ってくるのはやり過ぎだろ…」
流石のディーノですら油断していたと言えど、きちんと急所を狙ってくるのだから質が悪いとは思った。
身体を使う体育や実技は自分には向いていないと学生時代ですら参加した事が無いマリア。
病弱とまでは言わないが、確かに小さい頃からマリアは体調を崩しやすかった。
大人になった今はまだマシになった方ではあるものの、それでも年に数回は風邪を引くし拗らせれば通常の人よりも回復が遅い。
だからこそ身を守るための術も銃を利用したものになるのをディーノは知っている。
「怒ってねーよ、バカマリア。そっちより言い逃げした方が傷つく」
『…謝ったしお礼も言ったのに?』
「俺の話聞く気ねーだろ、それ。一方的に電話切りやがって」
『…ごめん?』
「疑問形で謝るなよな!」
どうやらマリアは一方的に電話を切り言い逃げした事に関しては何とも思ってないらしい。
自分だけ焦って傷ついたのが馬鹿みたいだ…そう思えば自然とディーノは笑っていた。
マリアもつられて携帯越しではあるがつられて笑っているのが読み取れる。
滞在しているホテルの部屋を出て、ディーノは部下が居ないにも関わらず階段を使い下の階に降りた。
マリアが泊っている階まで着けば、ゆっくりとした足取りでマリアの滞在する部屋へと向かう。
「腕…大丈夫なのか?」
『あー…それは大丈夫。ロマーリオがさっき手当てしてくれたから』
マリアの言葉にディーノはほっと一安心する。
ロマーリオが手当てをしたのならそこまで大した物ではなかったのだろう…そう思っていたが―――…
『青紫色になってたけど…そのうち治るでしょ』
「青紫色って…どんだけ強い力で握ってたんだよあいつ…」
公園で青年がマリアの腕を掴む姿を思い出せば、殺気立ってしまう。
男と女とでは力の差だって歴然としている上に、女性にそう言った行動を取るのがまずアウトだ。
ディーノ自身ナンパなんてした事はないがそれでも相手の事を気遣う事は忘れない。
ほんの少し携帯を離し、「殴っとくべきだったか…」なんて自分らしくない言葉が不意に零れる。
無論携帯を離していたのでマリアは聞き取れなかったのだろう、『なんて?』と問うマリアに、ディーノは「否、なんでもない」と返した。
丁度マリアの滞在する部屋の前までくれば、「…とりあえずマリア、出て来いよ」とマリアに声をかける。
『え?』
「部屋の前に居るから」
言葉足らず故にディーノの言った言葉を理解できずにいるマリアに、ディーノは言葉を付け足した。
ディーノの言葉を聞けば中から物音が聞こえる。
パタパタと足音が聞こえるが、その足音も扉の前でぴたりと止んだ。
「マリア」
『ディーノ…?』
恐る恐るドアを開けながら、マリアがひょっこりと覗く。
マリアの瞳がゆっくりと散大するが、ディーノも同じようにマリアの恰好を見て瞳を大きく見開いた。
自分でも分かるほど気の抜けた表情で「マリアお前その恰好…」と言葉が無意識に零れる。
マリアの恰好は今朝と違っており、イタリアから日本に来た時の服装に…頭からベッドシーツを被っていると言う恰好。
大の大人でも一人で居る時ならやらなくもない格好だが…まさかその姿のままディーノの前に現れるとは思わなかった。
幼い頃、『まだディーノと遊ぶ!』と言ってディーノの寝室でベッドからシーツを剥ぎ取り被っては帰りたくないと駄々をこねていたマリアの姿と重なり、ディーノは自然と口元が緩む。
―――『やだやだやだ、ディーノとまだ遊ぶの!』
―――「マリア、時間も時間だから今日はもう帰ろう?ね、いい子だから?明日もディーノ君と遊ばせてあげるから…!」
あの時はマリアの母親が必死にマリアを宥めてよく連れ帰っていたなと昔を思い出す。
無邪気で素直で…何の取り繕う事もなくお互い本音のまま話せていた頃。
大人になった今はどうしてこうも本音を隠し、本心を隠し嫌われないように“幼馴染”として傍に居れるようにと動こうとしているのか不思議に思ってしまう。
「何子供みたいな事してんだよマリア、いじけてんのか?」
ディーノがそう言えば、マリアは『…いじけてないし』と、そう言いながらツンとした態度を取り視線を逸らすマリアに、ディーノは苦笑する。
視線を逸らしたマリアだが、無意識にちらちらとディーノの方を目で見ているのだ。
マリアも表情からしてまたやってしまったと思っているのだろう。
不安そうな表情を浮かべてちらっとディーノを見ている。
(ほんと可愛いな、マリア)
そんな姿すら愛おしく思う程、自分はマリアが好きなのだと再度気付いてしまう。
「マリア」
『ん、なあに?』
「今朝来てた服…もう着ないのか?」
ディーノの言葉に、マリアはあからさまに顔を顰める。
マリアからして余程触れて欲しくなかった話題なのだろう。
表情そのものが全力で嫌そうな表情を浮かべている。
『動きづらいし…似合ってないから着ないかな…』
「何でだよ!似合ってたじゃねぇ―か」
似合っていたと言う本心も、隠す事なくディーノはマリアにぶつけた。
そしてアベーレだけずるいと、ディーノは内心思う。
マリアをカフェまで送ってやってくれと確かにディーノ自身アベーレに頼んだ。
アベーレは部下であるトマゾの部下であり、まだ入って二年目だが腕っぷしは確かだ。
だがまさか普段着ないような服装を来て行くと誰が予想出来ただろうか?
自分はマリアを助けるのに無我夢中でマリアの服装をちゃんと見ていないのだ。
全く見ていないと言うわけではない…だがきちんと見たのなんてほんの数分あるかないか。
自分のタイミングの悪さに己を恨みたくなる程だ。
「それに…」
『…?』
首を傾げながらマリアはディーノを見る。
ディーノは一瞬言うか言わないか悩んだが、一度言うのも二度言うのもそう変わりない。
盛大にマリアに隠していた本音を言ってしまったのだ、もう取り繕うのも売り言葉に買い言葉…本音を隠すのも止めた。
ディーノはほんの少し頬が熱くなるのを感じながら「…っ、可愛かったし」と答えた。
『っつ…』
「もう、着ないのか?」
そう言ってじっと今度はディーノがマリアを見る。
ディーノの言葉に、マリアはシーツで口元を隠しながら『気が向いたら…ね』と答えぷいっとそっぽを向く。
ほんの少し頬が…耳が赤くなってるのを見て、ディーノはそんなマリアに笑いかけた。
2024/09/15
30/78ページ