不器用な恋
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※【ロマーリオside】
―――「なぁ、お嬢は…ボスの事が好きか?」
―――『…うん』
先程マリアに問うた言葉にマリアは素直に頷いたのを思い出し、ロマーリオはにっと笑みを浮かべたままマリアの泊る部屋のドアを閉めた。
今までマリアにそんな質問をロマーリオはした事が無い。
それは傍から見れば一目瞭然の事であり、マリアに聞いた所で素直に答えてくれるわけもないと思っていたからだ。
だが今回ロマーリオがマリアに問えば、マリアは素直に答えた。
此処に来てようやく、気付かれないように隠していた気持ちを、目を背けていた現状維持と言う幼馴染の関係から抜け出そうとしている。
きっかけは本当に些細な事だった。
だがそんな些細な事で人は変わる。
―――『ディーノの言葉に…そんな風に言われたら、期待しちゃう…じゃん?』
そう聞いてきたマリアの表情は恋する人そのものだ。
恥ずかしそうにロマーリオに言い、自分の言葉に己惚れても良いのかと不安になる。
(ちゃんと自覚してるじゃねえか、お嬢)
マリアがディーノを好きと言う気持ちを自覚はしていた、だが自覚しているだけでそれだけで終わっていたのだ。
ディーノがマリアの事を幼馴染以上に見ていないと、相手の気持ちも聞かずに自己の中で“幼馴染”で完結させていた。
関係を壊したくないと言う言い訳も、幼馴染以上になれないと思っていたからだ。
鈍い訳ではないはずなのに、ディーノのマリアに対する気持ちに気づいていない。
ディーノもディーノでマリアの事が好きなのに関係を壊したくないからと、周りにバレバレのくせにマリアにはバレないように“幼馴染”として振舞う。
(まぁ、ボスの場合はそれだけじゃないんだろうな…)
十七年前、まだディーノもマリアも五歳の頃…二人は四年間程離れ離れだった。
お互い明日もいつも通り遊べると、マリアの母がキャバッローネ・ファミリーに何時もの様に預けてくれると信じて疑わなかった。
だが、次の日になってもマリアはキャバッローネ・ファミリーに預けられることなく、三日、一週間、一ヶ月と月日は無条件に過ぎて行く。
日に日にやつれ食事すら取ろうとせずマリアを探すディーノの姿をロマーリオは今でも覚えている。
先代ボス…キャバッローネ九代目ボスですら生きていたらあの時の事を覚えているだろう。
それほど目も当てられないほどにディーノはやつれていたのだ。
ディーノにとってマリアの存在がどれほど大きかったのかが見ていれば分かるほどに。
その経験も相まって余計にディーノはディーノで“幼馴染”と言う関係から抜け出せないでいた。
―――「なぁ、俺の女に何してるんだ?」
だが数時間前の公園での経験でマリアに無意識ではあれど本音を言ってしまったのだ。
自分の女に手を出すなと、本音を漏らし威嚇しマリアを守る。
普段マリアと自分の部下である誰かが…否、ロマーリオにすら時折嫉妬の眼差しを向けているのだ。
子供のような幼く隠しきれていない独占欲。
誰もマリアをディーノから取ろうとなんて思っていない、二人を見ればお互い想い合っているのがバレバレだ。
お互い両想いの中に、空気を読まずに入り込む馬鹿はキャバッローネ・ファミリーには誰一人として居ない。
幼い頃から面倒を見て来た事はあれど、ボスの想い人は自分らにとっても大事な存在…それだけなのだから。
「…とっととお嬢に気持ちを暴露した方が、ボスも楽になるのになぁ」
ポツリと零れたロマーリオ自身の本音。
否、ロマーリオだけではない。
キャバッローネ・ファミリー全員が思っている本音だ。
(ほんの少しでも自覚して前に進もうとしている…今はそれでもいいか)
現状維持の状況からようやく抜け出せた喜びに、ロマーリオは顔をほころばせながら、一旦救急箱をホテルの従業員に返しに行くかとロマーリオは廊下を歩く。
辺りには従業員も居なければ他に人も居ない。
(後でボスの様子も見に行くか…)
そう思いながら廊下を歩いていると、自分のスーツの懐に入れてある携帯が振動する。
利き手で懐から携帯を取り出し誰からの着信かを確認すると、イタリアに居るロマーリオの同僚…トマゾからの着信だった。
自分と同じように九代目に拾われ、キャバッローネに入ったトマゾとはロマーリオとの付き合いも長い。
いくら時差があると言えど、イタリアはまだ朝早い時間帯だ。
一体どうしたのだろうと思いロマーリオは周囲を警戒しながら通話ボタンを押す。
「どうしたトマゾ?」
「大変です、大変なんですロマーリオ!」
「おい、トマゾ落ち着け!どうしたんだ?」
普段なら冷静で慌てる事のないトマゾ。
だがそんなトマゾが電話越しでも分かるほど慌てている。
一体何があったのか…まさかマリアの家をうろついている奴らに動きがあったのかと、ロマーリオに緊張が走る。
「何か…を…!」
「悪いトマゾ…もう一回言ってくれ…」
「何かチャンスを!お嬢とボスに関する事で逃してはいけないチャンスを逃した気配がするんですよっつ!!!!!」
トマゾの言葉に、ロマーリオは一瞬呆ける。
(エスパーかよ…)
何なら心の中で静かにツッコミを入れた。
ロマーリオの想像していた事に関してではなく、まさかマリアとディーノについての話題。
“逃してはいけないチャンス”と言うのは…恐らく公園で起こったマリアとディーノの事を言っているのに違いない。
日本に居ないはずなのに何故トマゾはそんな事を察知したのだろうとある意味ロマーリオは恐ろしく思う。
昔からトマゾはマリアとディーノの事を保護者のように…否、我が子のように可愛がっていた。
先代から仕える者、古参の者…否、キャバッローネ・ファミリー全員がマリアとディーノを幼い頃から可愛がっているのだが…トマゾに関しては度を越えた可愛がりなのだ。
二人の恋心に無論気付いて居るし、二人をくっつけようとすら思っている。
仮にどちらかにちょっかいを出そうとする者が現れれば暗殺すら厭わないだろう。
「あぁ、ロマーリオ何か知りませんか?!日本で何もなかったのですか?!」
トマゾの察知能力に思わず合ったと答えようとするが、ロマーリオはそれを止めた。
下手に公園での出来事を話せば詳細に事細かく説明して欲しいと言われかねない事は目に見えている。
尚且つ「私も日本に行きたい!」とトマゾなら言いかねないだろう。
ロマーリオはただただ無慈悲に「気のせいだろう」とトマゾに告げるのであった。
2024/09/14
―――「なぁ、お嬢は…ボスの事が好きか?」
―――『…うん』
先程マリアに問うた言葉にマリアは素直に頷いたのを思い出し、ロマーリオはにっと笑みを浮かべたままマリアの泊る部屋のドアを閉めた。
今までマリアにそんな質問をロマーリオはした事が無い。
それは傍から見れば一目瞭然の事であり、マリアに聞いた所で素直に答えてくれるわけもないと思っていたからだ。
だが今回ロマーリオがマリアに問えば、マリアは素直に答えた。
此処に来てようやく、気付かれないように隠していた気持ちを、目を背けていた現状維持と言う幼馴染の関係から抜け出そうとしている。
きっかけは本当に些細な事だった。
だがそんな些細な事で人は変わる。
―――『ディーノの言葉に…そんな風に言われたら、期待しちゃう…じゃん?』
そう聞いてきたマリアの表情は恋する人そのものだ。
恥ずかしそうにロマーリオに言い、自分の言葉に己惚れても良いのかと不安になる。
(ちゃんと自覚してるじゃねえか、お嬢)
マリアがディーノを好きと言う気持ちを自覚はしていた、だが自覚しているだけでそれだけで終わっていたのだ。
ディーノがマリアの事を幼馴染以上に見ていないと、相手の気持ちも聞かずに自己の中で“幼馴染”で完結させていた。
関係を壊したくないと言う言い訳も、幼馴染以上になれないと思っていたからだ。
鈍い訳ではないはずなのに、ディーノのマリアに対する気持ちに気づいていない。
ディーノもディーノでマリアの事が好きなのに関係を壊したくないからと、周りにバレバレのくせにマリアにはバレないように“幼馴染”として振舞う。
(まぁ、ボスの場合はそれだけじゃないんだろうな…)
十七年前、まだディーノもマリアも五歳の頃…二人は四年間程離れ離れだった。
お互い明日もいつも通り遊べると、マリアの母がキャバッローネ・ファミリーに何時もの様に預けてくれると信じて疑わなかった。
だが、次の日になってもマリアはキャバッローネ・ファミリーに預けられることなく、三日、一週間、一ヶ月と月日は無条件に過ぎて行く。
日に日にやつれ食事すら取ろうとせずマリアを探すディーノの姿をロマーリオは今でも覚えている。
先代ボス…キャバッローネ九代目ボスですら生きていたらあの時の事を覚えているだろう。
それほど目も当てられないほどにディーノはやつれていたのだ。
ディーノにとってマリアの存在がどれほど大きかったのかが見ていれば分かるほどに。
その経験も相まって余計にディーノはディーノで“幼馴染”と言う関係から抜け出せないでいた。
―――「なぁ、俺の女に何してるんだ?」
だが数時間前の公園での経験でマリアに無意識ではあれど本音を言ってしまったのだ。
自分の女に手を出すなと、本音を漏らし威嚇しマリアを守る。
普段マリアと自分の部下である誰かが…否、ロマーリオにすら時折嫉妬の眼差しを向けているのだ。
子供のような幼く隠しきれていない独占欲。
誰もマリアをディーノから取ろうとなんて思っていない、二人を見ればお互い想い合っているのがバレバレだ。
お互い両想いの中に、空気を読まずに入り込む馬鹿はキャバッローネ・ファミリーには誰一人として居ない。
幼い頃から面倒を見て来た事はあれど、ボスの想い人は自分らにとっても大事な存在…それだけなのだから。
「…とっととお嬢に気持ちを暴露した方が、ボスも楽になるのになぁ」
ポツリと零れたロマーリオ自身の本音。
否、ロマーリオだけではない。
キャバッローネ・ファミリー全員が思っている本音だ。
(ほんの少しでも自覚して前に進もうとしている…今はそれでもいいか)
現状維持の状況からようやく抜け出せた喜びに、ロマーリオは顔をほころばせながら、一旦救急箱をホテルの従業員に返しに行くかとロマーリオは廊下を歩く。
辺りには従業員も居なければ他に人も居ない。
(後でボスの様子も見に行くか…)
そう思いながら廊下を歩いていると、自分のスーツの懐に入れてある携帯が振動する。
利き手で懐から携帯を取り出し誰からの着信かを確認すると、イタリアに居るロマーリオの同僚…トマゾからの着信だった。
自分と同じように九代目に拾われ、キャバッローネに入ったトマゾとはロマーリオとの付き合いも長い。
いくら時差があると言えど、イタリアはまだ朝早い時間帯だ。
一体どうしたのだろうと思いロマーリオは周囲を警戒しながら通話ボタンを押す。
「どうしたトマゾ?」
「大変です、大変なんですロマーリオ!」
「おい、トマゾ落ち着け!どうしたんだ?」
普段なら冷静で慌てる事のないトマゾ。
だがそんなトマゾが電話越しでも分かるほど慌てている。
一体何があったのか…まさかマリアの家をうろついている奴らに動きがあったのかと、ロマーリオに緊張が走る。
「何か…を…!」
「悪いトマゾ…もう一回言ってくれ…」
「何かチャンスを!お嬢とボスに関する事で逃してはいけないチャンスを逃した気配がするんですよっつ!!!!!」
トマゾの言葉に、ロマーリオは一瞬呆ける。
(エスパーかよ…)
何なら心の中で静かにツッコミを入れた。
ロマーリオの想像していた事に関してではなく、まさかマリアとディーノについての話題。
“逃してはいけないチャンス”と言うのは…恐らく公園で起こったマリアとディーノの事を言っているのに違いない。
日本に居ないはずなのに何故トマゾはそんな事を察知したのだろうとある意味ロマーリオは恐ろしく思う。
昔からトマゾはマリアとディーノの事を保護者のように…否、我が子のように可愛がっていた。
先代から仕える者、古参の者…否、キャバッローネ・ファミリー全員がマリアとディーノを幼い頃から可愛がっているのだが…トマゾに関しては度を越えた可愛がりなのだ。
二人の恋心に無論気付いて居るし、二人をくっつけようとすら思っている。
仮にどちらかにちょっかいを出そうとする者が現れれば暗殺すら厭わないだろう。
「あぁ、ロマーリオ何か知りませんか?!日本で何もなかったのですか?!」
トマゾの察知能力に思わず合ったと答えようとするが、ロマーリオはそれを止めた。
下手に公園での出来事を話せば詳細に事細かく説明して欲しいと言われかねない事は目に見えている。
尚且つ「私も日本に行きたい!」とトマゾなら言いかねないだろう。
ロマーリオはただただ無慈悲に「気のせいだろう」とトマゾに告げるのであった。
2024/09/14
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