不器用な恋
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スクアーロが戻ってくるまでの間、マリアはのんびりと2杯目のカフェラテを飲んでいた。
久々のカフェラテ1杯目はスクアーロが席を外してすぐ無くなってしまい、マリアは2杯目のカフェラテを注文し先ほどとは打って変わって大事そうにちびちびと飲んでいる。
(ロマーリオが淹れてくれるカフェラテが恋しい…)
カフェのカフェラテも十分美味しいのだが、何時も淹れてくれる飲み慣れた味がついつい恋しくなってしまう。
日本にいる間は流石にカフェラテを淹れてもらうのは場所も材料も調達するのは厳しいので諦めるしかない。
イタリアに帰ったら淹れてもらおうと、マリアは思いながらちびちびとカフェラテを口に含む。
「あら~、スクアーロったら可愛らしい子とご飯食べてるじゃない~?」
『…誰?』
大事そうにちびちびと飲んでいると、スクアーロと派手な格好をしている男性がマリアの座っている席へと近づく。
スクアーロよりもほんの少しだけ背が高く、派手な格好をしているがその男性には派手な格好が似合っていた。
口調が女性よりではあるが背格好からして男性だろう。
服の上からは見えないがそれなりにがっちりとした体形だ。
手にはスクアーロと同じアイスコーヒーに、本日のおすすめメニューに書かれていた具沢山のサンドイッチセットが乗ったトレーを持っている。
『スクアーロ…そっちの人は?』
「…俺の同僚だ」
「初めまして~、私ルッスーリアって言うの。よろしくね」
『…マリアです、よろしく』
サングラスのせいで目は見えないが、それでも表情は朗らかである。
「相席いいかしら?」とルッスーリアと呼ばれた男性がマリアに問う。
勿論マリアは断る理由もないので『どうぞ』と言いルッスーリアとの相席を受け入れた。
持っていたトレーをテーブルの上に置き、ルッスーリアは席に座る。
スクアーロも次いで席に座りアイスコーヒーを一口飲んだ。
席を外し数十分経っているせいか、コップの中の氷は半分近く溶けている。
「もう朝から走り回ってお腹ペコペコなのよね~」
『お仕事お疲れ様です』
「あらま、ありがとうね~」
スクアーロと同じように人探しをしていたのだろうとマリアは勝手に思う。
同僚だと言っていたのだから、彼もまた暗殺部隊ヴァリアーの一員に違いない。
「そう言えばスクアーロとマリアちゃんはどんな関係なの?」
具沢山のサンドイッチを美味しそうに頬張りながら、ルッスーリアは問う。
確かにマリアからしてみればスクアーロとルッスーリアが同僚同士と知ったら安易に関係性が紐づけられるがルッスーリアからしたらマリアとスクアーロの関係は思い浮かばないだろう。
現状だけ見れば一緒に食事をしているだけの人だ。
ルッスーリアの問いにスクアーロが「どんなってそりゃあ…」と一瞬マリアを見る。
そんなスクアーロの視線に気づき、マリアは口を開いた。
『スクアーロを女にしてやった仲じゃないかし…もがっ』
「ゔお゙ぉぉぉおおおおおい!!??誤解されるような発言止めろマリア!!!」
マリアの発言にスクアーロは慌ててマリアの口を手で塞ぐ。
大きなスクアーロの手は簡単にマリアの口を塞ぐが、自身の手でスクアーロの手を退けながら『間違ってないでしょ?性的な意味で!』と言葉を続けた。
「そこ略すな!!性別って言え、性別って!!!」
マリアの言っている事は確かに正しい、正しいのだが言葉足らずのせいで誤解を招きかねない。
珍しくスクアーロが慌てふためくせいかテーブルをダンっと音を立てて叩く。
そんないつもとは違うスクアーロを見ながら、ルッスーリアは楽しそうにマリアの方を見る。
一体どういう事だろう?と、詳しく知りたくてルッスーリアは「ちょっと勿体ぶらないで詳しく話しなさいよ~!」と興奮気味で2人に問うのだ。
此処まで聞かれたら話す以外の選択肢は残っておらず、スクアーロははぁっと溜息を付きながら重々しく口を開いた。
「…半年前に俺が苦戦した任務…覚えてるか?」
「あぁ…合ったわねそう言えば」
スクアーロの言葉に、ルッスーリアは当時の事を思い出す。
半年前、珍しくスクアーロが任務に苦戦していた。
とあるブラックリストに載っているマフィアのパーティーに参加し、そのパーティーの主催者であるマフィアのボスを殺すと言う至って普通の任務だ。
本来であれば何の苦戦もするような任務ではなかったのだが…タイミングが悪かった。
一緒に参加するはずのパートナーが見つからないと言う不測の事態。
ヴァリアー内にも女性は居るのだが、皆他の任務で駆り出されていたためスクアーロのパートナーとして参加する事はできなかった。
フリーの殺し屋に依頼するにも実力が伴っていないため依頼する事すら出来ない。
男性の場合は同伴が居ないとパーティーに参加できないと言う謎のルールが合ったため、スクアーロは任務どうこうよりもパーティー自体に参加できないと言う不測の事態に陥った。
「確か、ブラックリストに載っているマフィアのパーティーに潜入しての任務だったかしら?」
「…そうだ」
「結局あの時の任務ってパートナー見つかったの?」
「否…」
「任務自体取り下げたのかしら?」
「否…ちゃんと任務は終わらせた…」
「?じゃああの任務どうやって終わらせたのよ?」
先程から歯切れの悪いスクアーロにルッスーリアの疑問が募る。
パートナーが見つからなければ任務自体遂行できないはずだ。
だがスクアーロは任務は終わらせたとはっきり言葉にしている…一体どうやって?とルッスーリアは思うが、結論を話さない…否、話したくないスクアーロは言葉に詰まる。
そんなスクアーロを見兼ねて、マリアは『パートナーが居なくても、そのパーティーには参加出来るでしょ?』と言葉を紡いだ。
「でもそれって…」
マリアの言った言葉の意味を理解し、ルッスーリアは口を噤む。
確かにあのパーティーにはパートナーが居なくても参加できる方法がある。
あるのだが…普通に考えて、スクアーロでは相当難易度が高いのでは?と心の中でルッスーリアは思った。
『抜け道案としてスクアーロが女になって一人で任務遂行したって事』
「女になる…?」
マリアの言葉にルッスーリアの想像していた言葉が返って来て思考が一度停止する。
そもそもスクアーロの性別は男だ。
女装でもしてパーティーに参加したと言う事だろうかとルッスーリアは思ったが、背が高く割と体系も良いスクアーロが女装した所で1発でバレるだろう。
そもそも女装していたら“女になる”とは言わない。
無言のままのルッスーリアに、マリアは見せた方が早いかと思いマリアはバッグから赤色の携帯を取り出した。
カチカチと操作するとルッスーリアに見えるように携帯の画面を見せる。
その画面には美人な女性の姿が写っている。
青色のパーティードレスに身を包み、サラサラの銀色の髪は編み込まれ、ハーフアップで纏められている。
出る所は出て引き締まる所は引き締まっており、身長は女性にしては高い170㎝と言った所だろうか。
切れ長の鋭い灰色の瞳が、彼女の美しさを引き立てていた。
ナチュラルメイクを施されているが…その女性には確かにスクアーロの面影がある。
『これがその時の証拠写真』
「あっら~、美人さんになってるじゃないスクアーロ」
「ゔお゙ぉぉぉおおおおおい!!??マリア何でんなもん持ってんだ?!」
『何でって…記念に?あ、違ったスクアーロに実験台になってもらう時の脅し用にだったわ』
「尚更質が悪いなおい!!!!!」
再度ダンっとテーブルを叩き恥ずかしいのか顔を真っ赤に染めている。
2度もテーブルを叩けば流石のルッスーリアも我慢できなく、「スクアーロ大人しくしなさい!」とスクアーロを諭す。
『良いじゃん、同級生のよしみで手伝ってあげたんだからさ』
「それについては感謝してるがあんな写真があるなんて知らなかったぞマリア!!!後普通に同級生って言え!同級生って!」
『言ってなかったっけ?』
「言ってねぇ―ぞ!!!!」
マリアの言葉にルッスーリアは“なるほど”と言わんばかりマリアとスクアーロを見た。
同級生と言われれば確かに納得してしまう。
普段であれば面倒見がよく気配りの出来るスクアーロのはずなのに、マリアと話している時は何処にも普段の彼の姿はない。
ノリがまさしく同級生とつるむそれ、なのだ。
勿論ルッスーリアは同級生とつるむそれ以外にもあるのだろうとひっそりと察する。
「ふふ、マリアちゃんって面白いわね~」
『そう?お褒め頂き光栄だわ』
「それにしても女にするって普通思い浮かばないわよ?なんなら身長とか顔つきや体系も違うし、どうなってるのこれ?」
『薬の力でスクアーロを言葉通り女にしただけだよ?一応これでも科学者だからね』
「科学者?!」
マリアの言葉に、今度はルッスーリアが席を立つ。
きっとスクアーロと同じように科学者であるルーナ・ブルを探しているのだろう。
サングラス越しのはずなのに期待の眼差しを向けられているがマリアは素直に『ルッスーリア達が知っている事意外知らないから…』と申し訳なさそうに呟いた。
案の定落胆するのが分かり、「いいのよ…ごめんなさい、騒いじゃって…」と謝るルッスーリアが気の毒ではあったが『ごめんね?』と言う以外マリアはどうする事も出来ない。
「はぁ…また地道に探すしかないのね…」
「あぁ…」
落胆するルッスーリアとスクアーロを見ながら、マリアは再度心の中でごめんねと呟いた。
本当は全部知っている、知っていてマリアは嘘を付く。
誰に何と言われようが、その嘘だけはを突き通さなければならないのだ。
それが先生との、ルーナ・ブルとの約束だから――――…
2024/09/11
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