不器用な恋
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アベーレにコインランドリーに連れて行ってもらってから、マリアはお目当てのカフェの前に居た。
カフェの前で降ろしてもらえば「食べ終わったらご連絡してください、お迎えにあがりますので」とだけ残し、アベーレは去って行く。
流石に仕事があるのだろうと思い、マリアも『分かったわ』と伝えるだけでアベーレの仕事には何も触れずにルンルン気分でカフェへと向かったのだ。
それなりにカフェの敷地は広く、オープンしてそこまで経っていないのだろうか?まだ建物自体真新しく清潔感溢れる。
カフェの周りには適度に木々が植えられており、季節の花々も咲いていた。
テラス席もあり過ごしやすい気候の為か何人かはテラス席にて食事をしている。
カフェの入り口にはウェルカムボードが設置されており、ウェルカムボードの黒板にはチョークで“本日のおすすめメニュー”が書かれている。
具だくさんのサンドイッチセットにもっちりフォカッチャセット、並盛カフェ特製フルーツ&パンケーキモーニングの3種類が本日のおすすめメニューと書かれていた。
『あった、あたしのパンケーキ!!!』
パンケーキの文字を見るなり、マリアは瞳を輝かせ食い入るように黒板を見る。
トッピングでカスタードクリームと生クリームを増量出来る事も書いており、マリアはこれにしようと嬉しそうにカフェの扉を開け中に入った。
扉を開ければカランカランとベルが鳴り、店員が「いらっしゃいませ~」と挨拶をする。
店内へ入店すると、中には平日と言う事もあり数名の客が各々頼んだ食べ物を食べていた。
読書をする者も居れば、美味しそうに食事をする者、またカフェでおしゃべりをする者がマリアの目に映る。
注文カウンターの方を見れば数名ほど並んでいた。
(さてと、飲み物は何にしようかしら?)
メインで頼むパンケーキは先程決めてきたが、飲み物についてはまだ何も決めていない。
注文カウンターの最後尾に並んでいるお客の後ろに並び、自分の順番が来るまでマリアは掲示されているドリンクメニューへと視線を向けた。
掲示されているメニューには定番のコーヒーから紅茶、ジュース系に炭酸飲料と言った飲み物が書かれている。
ざっと見てアイスとホットのメニュー含め23種類だ。
(…どれにしようかな~?)
メニューを見ながらマリアは悩む。
安定のカフェオレにするか、はたまた別の物を頼むか…折角のパンケーキだ。
飲み物だってついつい悩んでしまう。
悩んでいる間に一人、また一人と注文する客が注文を終え気が付けばマリアが注文するまで後1人となった。
「ゔお゙ぉい!!マグロのカルパッチョはねぇーのかぁ!?」
「大変申し訳ございません、当店カルパッチョの扱いはございません」
ふと、メニューを見ながら悩むマリアの耳に店員と客の会話が聞こえた。
ドリンクメニューに気を取られ前の人を良く見ていなかったマリアは自然と注文カウンターで注文する目の前の客に思わず視線を向ける。
マリアよりも高い身長に、長い銀髪がマリアの目に映る。
聞いた事のあるけたたましい大きな声に独特な叫び声。
昔よく聞いた事のある叫び声に、マリアはポツリと思い当たる人物の名を呼んだ―――…
『……スクアーロ…?』
マリアの言葉に、目の前で注文していた男がピクリと反応し即座に振り向く。
振り向くと同時に長いサラサラの銀髪が揺れ動く。
鋭い青色の瞳が、マリアの翡翠色の瞳と視線がぶつかり合いお互いの姿をその瞳に写し出す。
「あ?誰だ…って、お前…マリアか…」
マリアの姿を見るなり、大きく見開かれた瞳。
それもそのはずだ。
お互い本来であればイタリアではなく日本に居るなんて誰が予想出来ただろうか。
学生時代の同級生であり、現在はボンゴレの暗殺部隊ヴァリアーに勤めているスクアーロがそこに居た。
カフェのテラス席にてスクアーロと向かい合うように座り、マリアはアイスカフェラテを一口飲む。
追加で砂糖を沢山淹れてもらえば、マリアの好むカフェラテの味に満足する。
目の前に座るスクアーロはアイスコーヒーが置かれており、カランとコップの中に入っている氷が音を鳴らした。
あの後マリアも自分が食べるメニューとドリンクを注文し、今現在ドリンクだけ先に受け取りスクアーロと同じ席に座っている。
『それにしてもスクアーロ久しぶりね…半年ぶり位かしら?』
「もうそんなに経つのか」
『最後にスクアーロに会ったのはあんたがあたしに依頼してきた時でしょ』
「……そうか」
マリアの言葉にスクアーロは一瞬口を噤む。
マリアの言う通り半年ほど前、スクアーロは確かにマリアに不本意ながらではあるが依頼をした。
だがその依頼内容を思い出したくないのかスクアーロはマリアから視線を逸らし、アイスコーヒーを一口口に含む。
冷たいアイスコーヒーが喉の渇きを潤し、カランとまた音を立てる。
『所で何であんたが日本に居るのよ?』
「それはこっちの台詞だマリア、お前こそ何で日本にいるんだよ…それにその恰好…」
『…格好には触れないで…』
今度はスクアーロの言葉にマリアが死んだ魚のような目で訴えかける。
好き好んでこんな服装をしているわけではないのだ。
アベーレだけならともかく、ディーノやロマーリオ、知り合いには絶対に見られたくない。
そう思っていた矢先にまさか同級生であるスクアーロに見られると思わなかったのだ。
断じて自分で選んで似合ってもいないのに好き好んで着ているわけではない…それだけは理解して欲しいとマリアは思う。
「そいつは悪かったな…」
『…こっちに居るのはリボーンに頼まれてたもの持ってきたついでに…家庭教師してるからよ』
「家庭教師だぁ?」
不思議そうに首を傾げるスクアーロに、マリアはまた一口カフェラテを飲みながら『…あんたも知ってるんじゃないの?リボーンが家庭教師してるボンゴレ十代目のツナって子』と答えた。
流石にその言葉に「あぁ…」と呟いた。
スクアーロもボンゴレの、独立暗殺部隊ヴァリアーの一員だ。
ボンゴレ十代目ともなれば流石に知っているようだった。
「にしてもだ、マリアよく一人で日本に来れたな…」
『あたしが一人で日本に来れるわけないじゃない、ディーノに連れてきて貰ったに決まってるでしょ』
「…つー事は跳ね馬の野郎も日本に来てんのか…」
『そうよ、…で、スクアーロはどうして日本に居るの?』
「俺は…」
そうスクアーロが言葉を続けようとした瞬間。
「お待たせいたしましたー!並盛カフェ特製フルーツ&パンケーキモーニングカスタードと生クリーム増量と、サーモンのサンドイッチセットです!」
と、店員が両手にマリアとスクアーロが頼んだ料理を持ってきた。
コトリッと音を立てマリアの目の前に置かれたのはトッピングでカスタードと生クリームを増量しているせいか通常の物よりももりもりに盛られている。
パンケーキにかかっているメープルシロップがキラキラと輝き、季節のフルーツが添えられていた。
待ちに待ったパンケーキを目の前に、マリアは目を輝かせながらフォークとナイフを手に取り切り分ける。
ナイフを通せばふわふわの生地がゆっくりと分けられカスタードクリームと生クリームをパンケーキにつけ恐る恐る口へ運ぶ。
ぱくっと一口食べれば、マリアが求めていた味そのものに頬が緩む。
(甘い物…美味しい、パンケーキ美味しいっ)
昨夜から欲していた糖分を思う存分摂取すれば脳内に染み渡る。
一口、また一口と食べ進め幸せそうに食べるマリアを見てスクアーロも、目の前に置かれているサーモンのサンドイッチを手に取り一口かじった。
2024/09/06
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