不器用な恋
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※【ディーノside】
「ったく、俺も男なんだからちょっと位意識しろよな…」
幸せそうにディーノの肩によりかかり寝息を立てるマリアを見ながら、ディーノは溜息を一つつく。
いくら“幼馴染”と言えど、気持ちをマリアにバレないように隠して接しているが流石に意識されなさ過ぎでは?とディーノは思う。
片思いだと分かっているが流石に意識して欲しい。
この関係を壊したくない、それなのに意識して欲しいと思う矛盾。
ディーノ自身どうしたらいいかなんて最初から分かっている。
だが言い出せないのだ。
関係を壊してしまったらマリアが離れてしまうのではないかと…また、マリアが居ない日々を過ごすのではないかと。
―――「ディーノ坊っちゃん、お嬢を探すのはいいが飯くらいちゃんと食わねえと坊っちゃんがダメにっちまうぜ?」
―――「分かってる、分かってるよロマーリオ…。でもマリアが居ないと俺…俺っ…」
まるで自分の半身を失ったような、それほど大事な存在だと思い知らされた四年間。
マリアが居ない四年間は本当に辛く悲しい四年間だったと子供ながらはっきりと覚えている。
今思い出しただけでも気が滅入るほどだ。
あんな思いを、あれに似た思いをする位ならまだこの“幼馴染”の関係で傍に居られる方がマシだ。
(情けねぇーよなぁ…ほんと)
自分自身が情けない事なんて承知の上で、ディーノは自分の中の葛藤から目を背けるように…肩に寄り掛かって寝息を立てているマリアをディーノはそっと自分の膝の上に乗せた。
(これくらいなら…別いいよな…?)
そう思いながらマリアの頭を撫でた。
赤色の綺麗な髪はサラサラで絡まる事なくすっと、ディーノの指先が通る。
『んっ…』と身じろぎをするマリアに、ディーノは頬を緩ませながら髪を撫で続けた。
「ボス、ちょっといいか?」
「どうしたロマーリオ?」
パタンっと音を立てながら先程電話の為、席を外したロマーリオが戻ってくる。
「トマゾから連絡があったんだが…って、マリアお嬢寝ちまったのか?」
「ん、あぁ…疲れてたみたいだからな」
ディーノは膝の上ですやすやと寝息を立てているマリアの髪を撫でる。
気持ちよさそうに眠るマリアの表情にディーノの頬が緩みきっているのを見ればロマーリオは何時もの表情で「ボス顔がニヤついていますぜ?」と揶揄う。
無論ディーノ自身も自分が緩み切った表情をしている事の自覚はある。
好きな女性に触れているのだ、それ位仕方ないだろうと自分に言い聞かせながら言葉を紡ぐ。
「…で、どうしたんだよ?トマゾから連絡なんて珍しいな?」
トマゾとは現在イタリアに居るディーノの部下だ。
どこかのファミリーの名前もトマゾが付いているが、それを口に出すと銃を向けられるので誰も何も言わない。
ロマーリオと同期であり、小さい頃からマリアとディーノの面倒を見てきたうちの1人である。
普段日本に来る際は決まってロマーリオがディーノに着いて行き、トマゾがイタリアのキャバッローネのシマを守ると言う人員配置で何かとフォローをしてもらう事が多い。
ディーノが日本に滞在する際はトマゾから連絡が来る事は滅多にない、緊急事態を除けば。
何かあったのだろうと思いディーノは不思議そうにロマーリオに問う。
「…まぁ、お嬢が寝てるからいいか」
ロマーリオは頭を掻きながら眠っているマリアの方を見た。
トマゾから連絡があったのならそれはキャバッローネファミリーに関しての話だ。
流石に無関係のマリアに聞かせられる内容ではないと思っていたが、口ぶりからしてどうやらマリアに聞かせたくない内容なのだと感じる。
「他のマフィアがウチのシマにどうやら出入りしてるみたいなんだ」
「俺が居ない間に攻め込んでるって事か?」
「否…何もせずにうろついてるらしいんだが…」
「だが?」
歯切れの悪そうにロマーリオは口を噤む。
普段ならはっきりと言葉にするはずなのだが、言い出しずらいのかロマーリオは眉間に皺を寄せる。
「……どうやらお嬢の家の方なんだよ、そいつらがうろついてたのが」
「マリアの家?」
(…まさか、な)
一瞬過った可能性を脳裏から消し去り、ロマーリオの言葉にディーノの表情が強張る。
今まで他のマフィアがキャバッローネ・ファミリーのシマに攻め込んでくることは多々合った。
年若いボスだからとあなどり、次々と攻め込んで来たマフィアを撃退したのは数知れず。
だが、今回のように何もせずにキャバッローネ・ファミリーと関係ないマリアの家をうろついていたと言う言葉にディーノは引っ掛かる。
マフィアから依頼があれば引き受けるが、マリアは何処のファミリーにも属していない、言うなればただの一般人だ。
何故マフィアがマリアの家の周りをうろついていたのかは分からない。
知名度は低いとしても腕は確かだ、それに目を付けて誰かがファミリーの一員に加えようと企てているのかもしれないが…マリアはそんな事望まないだろう。
望んでいたらフリーの道等選ばないのだから―――…
「今の所何もせずうろついているだけなんだが…ボスどうする?」
「…念のためマリアの家の方に見張り置いてもらえるように言ってもらっていいか?」
「あぁ、分かったぜボス」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、ロマーリオは「トマゾに電話してくるぜ」とドアに手をかけた。
「なぁ、ロマーリオ」
が、再びトマゾに電話をしに出て行こうとするロマーリオに、ディーノは声をかける。
何だ?と言わんばかりにロマーリオがディーノの方を見れば、強張った表情のままマリアを見ていた。
先程と変わらず気持ちよさそうに眠っているマリア。
そんなマリアの髪に触れたまま、ディーノの手は動かないままだ。
「どうしたボス?」
「これって職権乱用になっちまうか?」
キャバッローネのシマ内での出来事と言えど、マリアの事が心配であるディーノ個人の事情だ。
果たして部下にそんな事を命じていいのだろうか?と、キャバッローネ・ファミリーのボスであるディーノは問う。
「自分のシマの話と言えど、俺個人の事情でしかないからな…マリアに関しては」
「まぁ、傍から見れば職権乱用と言われたらそうかもしれねぇーが…」
「やっぱりか」
「…けどな、俺らからしたらボスが惚れた女だ。俺らにとってもお嬢は大事な存在だから別に職権乱用でもなんでもねぇさ」
キャバッローネ・ファミリーにとって、マリアはロマーリオが言った通り大事な存在なのだ。
幼い頃からディーノと一緒に面倒を見てきた…自分たちのボスが惚れた女の事だ。
他人事ではない、大事な存在だとディーノの部下全員が思っている。
にっと笑いながら、「トマゾなんか喜んでボスからの指示を引き受けると思うぞ」と茶化すようにディーノに言う。
そんなロマーリオの言葉にディーノは安心しながら「そうか」と釣られて笑った。
2024/09/04
「ったく、俺も男なんだからちょっと位意識しろよな…」
幸せそうにディーノの肩によりかかり寝息を立てるマリアを見ながら、ディーノは溜息を一つつく。
いくら“幼馴染”と言えど、気持ちをマリアにバレないように隠して接しているが流石に意識されなさ過ぎでは?とディーノは思う。
片思いだと分かっているが流石に意識して欲しい。
この関係を壊したくない、それなのに意識して欲しいと思う矛盾。
ディーノ自身どうしたらいいかなんて最初から分かっている。
だが言い出せないのだ。
関係を壊してしまったらマリアが離れてしまうのではないかと…また、マリアが居ない日々を過ごすのではないかと。
―――「ディーノ坊っちゃん、お嬢を探すのはいいが飯くらいちゃんと食わねえと坊っちゃんがダメにっちまうぜ?」
―――「分かってる、分かってるよロマーリオ…。でもマリアが居ないと俺…俺っ…」
まるで自分の半身を失ったような、それほど大事な存在だと思い知らされた四年間。
マリアが居ない四年間は本当に辛く悲しい四年間だったと子供ながらはっきりと覚えている。
今思い出しただけでも気が滅入るほどだ。
あんな思いを、あれに似た思いをする位ならまだこの“幼馴染”の関係で傍に居られる方がマシだ。
(情けねぇーよなぁ…ほんと)
自分自身が情けない事なんて承知の上で、ディーノは自分の中の葛藤から目を背けるように…肩に寄り掛かって寝息を立てているマリアをディーノはそっと自分の膝の上に乗せた。
(これくらいなら…別いいよな…?)
そう思いながらマリアの頭を撫でた。
赤色の綺麗な髪はサラサラで絡まる事なくすっと、ディーノの指先が通る。
『んっ…』と身じろぎをするマリアに、ディーノは頬を緩ませながら髪を撫で続けた。
「ボス、ちょっといいか?」
「どうしたロマーリオ?」
パタンっと音を立てながら先程電話の為、席を外したロマーリオが戻ってくる。
「トマゾから連絡があったんだが…って、マリアお嬢寝ちまったのか?」
「ん、あぁ…疲れてたみたいだからな」
ディーノは膝の上ですやすやと寝息を立てているマリアの髪を撫でる。
気持ちよさそうに眠るマリアの表情にディーノの頬が緩みきっているのを見ればロマーリオは何時もの表情で「ボス顔がニヤついていますぜ?」と揶揄う。
無論ディーノ自身も自分が緩み切った表情をしている事の自覚はある。
好きな女性に触れているのだ、それ位仕方ないだろうと自分に言い聞かせながら言葉を紡ぐ。
「…で、どうしたんだよ?トマゾから連絡なんて珍しいな?」
トマゾとは現在イタリアに居るディーノの部下だ。
どこかのファミリーの名前もトマゾが付いているが、それを口に出すと銃を向けられるので誰も何も言わない。
ロマーリオと同期であり、小さい頃からマリアとディーノの面倒を見てきたうちの1人である。
普段日本に来る際は決まってロマーリオがディーノに着いて行き、トマゾがイタリアのキャバッローネのシマを守ると言う人員配置で何かとフォローをしてもらう事が多い。
ディーノが日本に滞在する際はトマゾから連絡が来る事は滅多にない、緊急事態を除けば。
何かあったのだろうと思いディーノは不思議そうにロマーリオに問う。
「…まぁ、お嬢が寝てるからいいか」
ロマーリオは頭を掻きながら眠っているマリアの方を見た。
トマゾから連絡があったのならそれはキャバッローネファミリーに関しての話だ。
流石に無関係のマリアに聞かせられる内容ではないと思っていたが、口ぶりからしてどうやらマリアに聞かせたくない内容なのだと感じる。
「他のマフィアがウチのシマにどうやら出入りしてるみたいなんだ」
「俺が居ない間に攻め込んでるって事か?」
「否…何もせずにうろついてるらしいんだが…」
「だが?」
歯切れの悪そうにロマーリオは口を噤む。
普段ならはっきりと言葉にするはずなのだが、言い出しずらいのかロマーリオは眉間に皺を寄せる。
「……どうやらお嬢の家の方なんだよ、そいつらがうろついてたのが」
「マリアの家?」
(…まさか、な)
一瞬過った可能性を脳裏から消し去り、ロマーリオの言葉にディーノの表情が強張る。
今まで他のマフィアがキャバッローネ・ファミリーのシマに攻め込んでくることは多々合った。
年若いボスだからとあなどり、次々と攻め込んで来たマフィアを撃退したのは数知れず。
だが、今回のように何もせずにキャバッローネ・ファミリーと関係ないマリアの家をうろついていたと言う言葉にディーノは引っ掛かる。
マフィアから依頼があれば引き受けるが、マリアは何処のファミリーにも属していない、言うなればただの一般人だ。
何故マフィアがマリアの家の周りをうろついていたのかは分からない。
知名度は低いとしても腕は確かだ、それに目を付けて誰かがファミリーの一員に加えようと企てているのかもしれないが…マリアはそんな事望まないだろう。
望んでいたらフリーの道等選ばないのだから―――…
「今の所何もせずうろついているだけなんだが…ボスどうする?」
「…念のためマリアの家の方に見張り置いてもらえるように言ってもらっていいか?」
「あぁ、分かったぜボス」
その言葉を待っていたと言わんばかりに、ロマーリオは「トマゾに電話してくるぜ」とドアに手をかけた。
「なぁ、ロマーリオ」
が、再びトマゾに電話をしに出て行こうとするロマーリオに、ディーノは声をかける。
何だ?と言わんばかりにロマーリオがディーノの方を見れば、強張った表情のままマリアを見ていた。
先程と変わらず気持ちよさそうに眠っているマリア。
そんなマリアの髪に触れたまま、ディーノの手は動かないままだ。
「どうしたボス?」
「これって職権乱用になっちまうか?」
キャバッローネのシマ内での出来事と言えど、マリアの事が心配であるディーノ個人の事情だ。
果たして部下にそんな事を命じていいのだろうか?と、キャバッローネ・ファミリーのボスであるディーノは問う。
「自分のシマの話と言えど、俺個人の事情でしかないからな…マリアに関しては」
「まぁ、傍から見れば職権乱用と言われたらそうかもしれねぇーが…」
「やっぱりか」
「…けどな、俺らからしたらボスが惚れた女だ。俺らにとってもお嬢は大事な存在だから別に職権乱用でもなんでもねぇさ」
キャバッローネ・ファミリーにとって、マリアはロマーリオが言った通り大事な存在なのだ。
幼い頃からディーノと一緒に面倒を見てきた…自分たちのボスが惚れた女の事だ。
他人事ではない、大事な存在だとディーノの部下全員が思っている。
にっと笑いながら、「トマゾなんか喜んでボスからの指示を引き受けると思うぞ」と茶化すようにディーノに言う。
そんなロマーリオの言葉にディーノは安心しながら「そうか」と釣られて笑った。
2024/09/04
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