不器用な恋
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「あの…マリアさん」
『何?ツナ?』
ひょんな事から始まったツナの期間限定家庭教師生活。
最初のうちは“ボンゴレ十代目”とマリアはツナを呼ぶ時に呼んでいたのだが、ツナが「名前ツナでいいです」と言ったのでマリアはその言葉に甘えツナと呼んでいる。
徹夜して作った問題や資料は一度寝て起きてから印刷をし、それぞれの科目事にホッチキスで止めツナに渡してある。
流石に徹夜をした事に関してはディーノに怒られたが達成感のあるマリアにとってはディーノの説教など痛くも痒くもなかった。
そして時間になりこうして学校が終わって帰宅したツナに対してマンツーマンでマリアは教えている。
「此処分からないんですけど…」
『あー…そこはね』
初日と言う事もあり取りあえず一番点数の悪かった数学からマリアはツナに教えていた。
分からない所があれば都度聞くようにしてもらい、また資料を見ながら一通り一緒に解く。
ある程度進めたら問題を挟み、理解できているかどうかの確認の意味で解かせている。
勿論この時も資料を見ながら解いても構わないし、それでも分からなければ聞いてもらって構わないと言っているので、ツナは遠慮しつつもマリアに聞いている。
勿論ツナの理解度に合わせてマリアも説明をしたりかみ砕いて教えているため、どうしても解くペースが落ちてしまっているがそれは許容範囲のうちだ。
マリアが教えればツナはすんなりと飲み込み、恐る恐る「こうですか?」と解いては聞いてくる。
『そうそう、偉いわね。ちゃんと理解してるじゃない』
そう言いながらマリアはツナの頭を撫でた。
つい食堂で子供達に教えるノリでツナの頭を撫でてしまったが…ツナは嫌がる事が無かったため、マリアはこのままでいっかと撫でる手を止めなかった。
子供たちに教えるのと同じようにツナが出来ていればきちんと褒め、間違っていたら指摘してまた一緒に解いたり説明したりとツナのペースに合わせて問題を解いていく。
そうやっているうちに問題を解き終わればシャーペンを握ったままツナは「マリアさんって凄いんですね」と呟いた。
『ん?何が?』
突然の言葉にマリアはきょとんと首を傾げながらツナを見る。
ツナは問題用紙から目を離すわけではなく、じっと問題用紙を見ながら言葉を続ける。
「滅茶苦茶分かりやすいって言うか…俺、授業中の先生の言葉ってほんと何言ってるのか分かんなくて…。でもマリアさんが教えてくれるのは凄く分かりやすいんです。同じ範囲で同じ事言ってるはずなのに、不思議とマリアさんが教えてくれると分かってくるっていうか…頭に入ってくるっていうか」
言葉にしたいが上手くまとまらないのだろう。
ツナはうーんうーんっと悩みながらどう表現したらいいのか分からず頭を抱える。
だがマリアはツナが言わんとしている事を察し、自然と頬が緩む。
子供達にもツナにも、そう言う風に伝えられるとやはりマリアは嬉しい。
それが勉強を教える事でも自分が依頼で作った物が誰かの役に立つ事さえもだ。
『おだてたって問題用紙しか出ないからね?』
「それはちょっと…」
マリアの言葉にツナはぶんぶんと首を横に振る。
今ですら使い慣れない頭をフルで使っているのだ、これ以上問題用紙が出されれば流石にキャパオーバーになってしまうとツナは思う。
『遠慮しなくていいのに…残念』
「…俺ほんと勉強も運動もダメダメなんですけど…初日なのにマリアさんのおかげで勉強ちょっと楽しいなって思えて…」
『あら、嬉しいわねそう言ってもらえると』
「勉強嫌いだったのにほんと何でだろ?」
『それはきっと…ツナは躓いただけだからよ』
「躓いた…?」
マリアの言葉にツナは首を傾げる。
躓いたとはどういう事だろう?そう思いながら不思議そうにマリアの顔を見た。
『本当にダメな人間ならまずこの場に居ないもの。嫌々でも受けようとするならまだやろうとする気がある。やってても分からないものはどうしようもないけど、ツナはきちんとここが分からないと質問だってしてくれる。理解しようとあたしの言葉に耳を傾けてどうやって解くかとか問題の横にこの方程式使って~とか書いてるじゃない?』
「…あ」
マリアの言葉にツナは解いていた問題用紙を見る。
確かにマリアからこの方程式を使えばいいと説明を受けた際に忘れずに問題の横にメモしたのだ。
勉強を教える最中でそんな細かな動作すら見ているマリアにツナは驚く。
『躓いた場合って頑張ろうとは思うけどただその頑張りに躓いた時間が長いからどうしてもついていけないのよね。躓いた間に授業はどんどん先に進んでいく、マンツーマンじゃないから待ってももらえない。質問しようにも躓いた所の質問がどこを躓いたのか分からなくて質問できない…そんな所だと思うのよね、ツナの場合』
マリアの言葉にツナは口を噤む。
きっとマリアが言った言葉はまさに正解なのだろう。
学校というものはそう言うものだ。
誰かが躓いても待ってはくれない、一人を相手に授業をしているわけではないのだから。
生徒側もそれは分かっている。
だが分からない箇所がどう分からないのかも分からないままでは質問のしようが無い。
躓いて迷っている間でも授業は先へ先へと進んでいく。
分からないなりに授業には参加しても、分からない箇所が広がっていくだけなのだ。
『だからツナはダメダメなんかじゃないよ、少なくとも勉強面ではね』
マリアはそう言ってツナに微笑んだ。
運動面に関してはマリアは知らないのだから何も言えない。
見たのは数時間と言えど勉強のみなのだから。
それでもマリアは言葉にする、ダメダメなんかじゃないよと。
幼い日の自分と重ねながら…マリアは言葉を切り出す。
『ツナ』
「は、はいっ!」
『数学は此処までにして他の教科もやっていきましょうか?』
どの教科がいい?と問うマリアに、ツナは口を開き次の教科を選んだ―――…
2024/09/03
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