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※微裏
3年A組の教室で、名無しは一人席に座り窓の外を眺めていた。
窓は開けっぱなしのせいか心地よい風が吹き、校庭に咲いている金木犀の甘く爽やかな香りが名無しの鼻孔を擽る。
授業は既に終わり放課後のせいか部活動に参加していない者は帰路に着き、部活動に参加している者はそれぞれ部室がある方へと歩いていく。
既に部活動が始まっている部活はそれこそウォーミングアップと称してグラウンドを集団で走っていた。
そんな集団を見ながらコロン、コロン…っと名無しは口の中で飴玉を転がす。
程よい甘酸っぱさが名無しの口内に広がっている。
机の上には先程から舐めている飴が入った袋と飴が入っていた包みの残骸が散らばっている。
パッケージがハロウィン仕様になっており、愉快なおばけやパンプキンのイラストがプリントされているが中身の飴は普段から売っている飴のままだ。
先程まで名無しは友達と教室内で話していたが、友達は委員会の仕事があるのを忘れていたせいか同じ委員会の人に連行され名無しはその友達が帰ってくるのを一人教室で待っていた。
「すぐ終わると思うから名無し待ってて~!」と言ったきり、早30分が経とうとしている。
『…すぐ終わるって言ったのに…』
友達の言葉を思い出せば、名無しは溜息を付く。
待っている間に結構な量の飴を舐めてしまったなと思いながらも、名無しはまた一つ袋から飴の入った包みを取り出してはコロン、コロン…と口内で飴を転がす。
友達を待っている間、名無しは何もする事が無いのだ。
ついつい口が寂しくなり飴がなくなったら新しい飴を口内に放り込む…その作業すること以外何もない。
ただただ運動部がグラウンドを走る掛け声を聞きながら、名無しは友達が帰ってくるのを待った。
―――コツ、コツ、コツ
すると少し硬めの靴の足音が名無しの耳に聞こえる。
足音は丁度名無しが居る3年A組の教室の前で止まったのだ。
きっと友達が委員会を終えて帰って来たのだと名無しは思い、視線を扉の方へと向けた。
ガラッと音を立て扉が開くのを見れば『遅いよ~、30分も待たされたんだけど』と、名無しが文句を言おうとするがその言葉を慌てて飲み込む。
何故なら名無しが待っている友達…ではなく、「アーン、まだ残ってたのか名無し」と言う跡部景吾の姿が名無しの目に映ったのだ。
『あれ、景吾じゃん。どうしたの?』
不思議そうに名無しは跡部に問う。
テニス部に所属している跡部もこの時間は部活動に参加しているはずだ。
今日は10月31日、木曜日。
木曜日は確かテニス部は全体練習だったと、前に跡部が言っていた事を名無しは記憶している。
テニス部に所属してはいるが、生徒会長も務めているのが跡部 景吾だ。
もしかしたら生徒会の仕事をしているのかもしれないと思ったがそれなら何故教室に来るのか疑問に思う。
「俺様はちょっと忘れ物取りに来ただけだ」
『景吾でも忘れ物することあるんだね?』
「たまには…な」
スタスタと自分の座席で机の中を探ればすぐ忘れていた物を跡部は取り出す。
どうやら跡部はリップクリームを忘れていた様だ。
乾燥してくるこの時期にリップクリームは必須になってくるが、季節問わず跡部はリップクリームを持参している。
(私より女子力高いな~)
なんて思っていると、跡部は溜め息をつきながら名無しの座っている座席へと歩み寄る。
「…何食べてるんだ名無し?」
『飴ちゃん。今日ハロウィンだし悪戯されないようにと思って』
名無しはそう言いながら跡部に笑う。
中学3年生と言えど、そう言った行事事を嫌いな人間はいないだろう。
何時クラスメイトから「Trick or Treat」と言われても良いように名無しは飴を買い持参していたのだ。
だが思いのほか今日がハロウィンだと言うのを皆忘れていたせいか誰も名無しに「Trick or Treat」と言って来るクラスメイトはいなかった。
友達ですら「え、今日ハロウィンだっけ?」と忘れていたのだ。
折角買ったのにと思っていたが、最後の最後に友達に「Trick or Treat」と言われて二人仲良く飴を食べていたのだ。
「そういや今日ハロウィンか」
『皆ハロウィンって事忘れてて悲しい…せっかく飴ちゃん買って来たのにさ…』
「中間考査が終わったばっかで浮かれてるんだろ」
『それはそうかもだけど』
跡部の言った言葉にも一理あるなと思い、名無しは『流石跡部』と言いながらコロンと口内で飴を転がす。
そんな名無しに、跡部は右手を差し出した。
何だろう?と思いながら跡部を見上げると「Treat me or I'll trick you」と跡部は言葉にする。
『?何それ?』
「何で通じねえんだよ」
名無しでも分かるだろうと言葉にしたが、通じない名無しに跡部は思わず呆れる。
先程からその話をしていただろうと思うものの、「あぁ…こっちの方が馴染みがあるか…」と考え直し跡部は再び言葉にした。
「Trick or Treat」
帰国子女であるせいか、跡部の英語の発音は良い。
そう跡部に言われたら、ようやく名無しは跡部が何を言ったのかを理解する。
“Trick or Treat”と言う言葉が広く使われているが、本来は“Treat me or I'll trick you”が正しいフレーズだ。
『ちょっと待ってね~』と、名無しは机の上に置いてある飴玉の入った袋から飴を取り出そうとするが…いくら袋の中を漁っても飴玉が見つかることは無かった。
(あれ?)
不思議に思い名無しは袋の中を覗くが、中身は既に空だ。
いくら手を入れ袋の中を漁っても無い物は無い。
『あー…ごめん景吾、全部食べ切っちゃったみたい』
「アーン?まだあるだろ」
『え、何処に?』
再度袋の中を覗くも、袋の中は空っぽだ。
机の上にでもまだ入っている物があっただろうかと思うが、机の上には何も入っていない包みしかないのだ。
跡部の言うように飴が入っている包みを名無しは見つけることが出来ない。
『?え、何処?全部空の包みだよこれ?』
「何処見てんだ名無し?…此処にあるじゃねぇーか」
名無しの座席の前にいる跡部がクイッと名無しの顎を持ち上げ、次の瞬間跡部は名無しと唇を合わせた。
触れるだけの口付けかと思えば、名無しの唇を自身の舌で跡部はこじ開け舌を押し入れる。
『っ?!…ん…っ、ぁ…っ』
舌と舌とが絡み合い、突然の行為に名無しは自分が何をされているか頭が追い付かずただただ跡部にされるがままだ。
そんな名無しを跡部は愉しそうに見ながら舌を絡ませる。
舌をなぞられればビクッと名無しの身体が跳ねるが、跡部は気にせず行為を続けた。
生暖かい跡部の舌が、名無しの舌をなぞっては愉しそうに絡ませる。
が、跡部の舌がようやくお目当ての物を見つければ、跡部は奪うようにそれを自分の口内へと移す。
「…甘い…」
ゆっくりと唇が離れれば、跡部は「苺味か…」と名無しから奪った飴を口の中で転がし飴を味わう。
跡部の言う「此処にある」はどうやら名無しの口の中を指していたのだ。
その事を理解するまで数分かかってしまったが、自分が跡部に何をされたのかと理解すると名無しはガタッと音を立てて椅子から立ち上がる。
顔を真っ赤にし、まるで名無しが舐めていた苺味の飴の様に頬を真っ赤にしては間の抜けた表情で跡部を指す。
『なっ!?な、…なっ、なななっ』
「日本語で喋れ名無し、アホっぽいぞ」
『け、けけけ、け、景吾っ…今何してっ…?!』
「アーン?俺様は言葉通り名無しからお菓子を貰ったまでだぜ?」
悪びれる事もなく、跡部は妖笑を浮かべた。
跡部「Trick or Treat」と言った言葉通り、“お菓子をくれなきゃいたずらするぞ”と言った。
名無しだってそれは分かっている、分かっているのだが今の名無しはお菓子を奪われた挙句いたずらもされてしまったのだ。
お菓子をあげた…否、正確には奪われたにも関わらずその上悪戯までされてしまったら本末転倒である。
「何だ?返して欲しいのか?」
妖笑を浮かべたまま、跡部は言う。
此処でもし名無しが頷けばきっと跡部は言った言葉の通り名無しに飴を返すだろう。
先程と同じ行為を嬉々としてするに違いない。
『っつ~~~~~、いいですっ!!!』
跡部の言葉に名無しは顔を真っ赤にしながらそう叫んだ。
そんな名無しを見ながら跡部はくくくと喉を鳴らし「帰るの遅くなるんじゃねぇーぞ」と言いながら跡部は教室を出ていった。
教室に一人残された名無しはただただ、顔を真っ赤にしたまま跡部が出て行った扉の方から視線が離せなかった―――…
強奪するキャンディー
(ごめん名無しお待たせ~…ってあれ、どうしたの?顔赤いよ?)
(あ、あ、ああああ赤くないもん!!!!)
(いやいや、挙動もおかしいし絶対何かあったよね?お姉さんに話してみなさいよ~!)
(何もないです!!!!)
2024/10/19
お題提供:子猫恋様
3年A組の教室で、名無しは一人席に座り窓の外を眺めていた。
窓は開けっぱなしのせいか心地よい風が吹き、校庭に咲いている金木犀の甘く爽やかな香りが名無しの鼻孔を擽る。
授業は既に終わり放課後のせいか部活動に参加していない者は帰路に着き、部活動に参加している者はそれぞれ部室がある方へと歩いていく。
既に部活動が始まっている部活はそれこそウォーミングアップと称してグラウンドを集団で走っていた。
そんな集団を見ながらコロン、コロン…っと名無しは口の中で飴玉を転がす。
程よい甘酸っぱさが名無しの口内に広がっている。
机の上には先程から舐めている飴が入った袋と飴が入っていた包みの残骸が散らばっている。
パッケージがハロウィン仕様になっており、愉快なおばけやパンプキンのイラストがプリントされているが中身の飴は普段から売っている飴のままだ。
先程まで名無しは友達と教室内で話していたが、友達は委員会の仕事があるのを忘れていたせいか同じ委員会の人に連行され名無しはその友達が帰ってくるのを一人教室で待っていた。
「すぐ終わると思うから名無し待ってて~!」と言ったきり、早30分が経とうとしている。
『…すぐ終わるって言ったのに…』
友達の言葉を思い出せば、名無しは溜息を付く。
待っている間に結構な量の飴を舐めてしまったなと思いながらも、名無しはまた一つ袋から飴の入った包みを取り出してはコロン、コロン…と口内で飴を転がす。
友達を待っている間、名無しは何もする事が無いのだ。
ついつい口が寂しくなり飴がなくなったら新しい飴を口内に放り込む…その作業すること以外何もない。
ただただ運動部がグラウンドを走る掛け声を聞きながら、名無しは友達が帰ってくるのを待った。
―――コツ、コツ、コツ
すると少し硬めの靴の足音が名無しの耳に聞こえる。
足音は丁度名無しが居る3年A組の教室の前で止まったのだ。
きっと友達が委員会を終えて帰って来たのだと名無しは思い、視線を扉の方へと向けた。
ガラッと音を立て扉が開くのを見れば『遅いよ~、30分も待たされたんだけど』と、名無しが文句を言おうとするがその言葉を慌てて飲み込む。
何故なら名無しが待っている友達…ではなく、「アーン、まだ残ってたのか名無し」と言う跡部景吾の姿が名無しの目に映ったのだ。
『あれ、景吾じゃん。どうしたの?』
不思議そうに名無しは跡部に問う。
テニス部に所属している跡部もこの時間は部活動に参加しているはずだ。
今日は10月31日、木曜日。
木曜日は確かテニス部は全体練習だったと、前に跡部が言っていた事を名無しは記憶している。
テニス部に所属してはいるが、生徒会長も務めているのが跡部 景吾だ。
もしかしたら生徒会の仕事をしているのかもしれないと思ったがそれなら何故教室に来るのか疑問に思う。
「俺様はちょっと忘れ物取りに来ただけだ」
『景吾でも忘れ物することあるんだね?』
「たまには…な」
スタスタと自分の座席で机の中を探ればすぐ忘れていた物を跡部は取り出す。
どうやら跡部はリップクリームを忘れていた様だ。
乾燥してくるこの時期にリップクリームは必須になってくるが、季節問わず跡部はリップクリームを持参している。
(私より女子力高いな~)
なんて思っていると、跡部は溜め息をつきながら名無しの座っている座席へと歩み寄る。
「…何食べてるんだ名無し?」
『飴ちゃん。今日ハロウィンだし悪戯されないようにと思って』
名無しはそう言いながら跡部に笑う。
中学3年生と言えど、そう言った行事事を嫌いな人間はいないだろう。
何時クラスメイトから「Trick or Treat」と言われても良いように名無しは飴を買い持参していたのだ。
だが思いのほか今日がハロウィンだと言うのを皆忘れていたせいか誰も名無しに「Trick or Treat」と言って来るクラスメイトはいなかった。
友達ですら「え、今日ハロウィンだっけ?」と忘れていたのだ。
折角買ったのにと思っていたが、最後の最後に友達に「Trick or Treat」と言われて二人仲良く飴を食べていたのだ。
「そういや今日ハロウィンか」
『皆ハロウィンって事忘れてて悲しい…せっかく飴ちゃん買って来たのにさ…』
「中間考査が終わったばっかで浮かれてるんだろ」
『それはそうかもだけど』
跡部の言った言葉にも一理あるなと思い、名無しは『流石跡部』と言いながらコロンと口内で飴を転がす。
そんな名無しに、跡部は右手を差し出した。
何だろう?と思いながら跡部を見上げると「Treat me or I'll trick you」と跡部は言葉にする。
『?何それ?』
「何で通じねえんだよ」
名無しでも分かるだろうと言葉にしたが、通じない名無しに跡部は思わず呆れる。
先程からその話をしていただろうと思うものの、「あぁ…こっちの方が馴染みがあるか…」と考え直し跡部は再び言葉にした。
「Trick or Treat」
帰国子女であるせいか、跡部の英語の発音は良い。
そう跡部に言われたら、ようやく名無しは跡部が何を言ったのかを理解する。
“Trick or Treat”と言う言葉が広く使われているが、本来は“Treat me or I'll trick you”が正しいフレーズだ。
『ちょっと待ってね~』と、名無しは机の上に置いてある飴玉の入った袋から飴を取り出そうとするが…いくら袋の中を漁っても飴玉が見つかることは無かった。
(あれ?)
不思議に思い名無しは袋の中を覗くが、中身は既に空だ。
いくら手を入れ袋の中を漁っても無い物は無い。
『あー…ごめん景吾、全部食べ切っちゃったみたい』
「アーン?まだあるだろ」
『え、何処に?』
再度袋の中を覗くも、袋の中は空っぽだ。
机の上にでもまだ入っている物があっただろうかと思うが、机の上には何も入っていない包みしかないのだ。
跡部の言うように飴が入っている包みを名無しは見つけることが出来ない。
『?え、何処?全部空の包みだよこれ?』
「何処見てんだ名無し?…此処にあるじゃねぇーか」
名無しの座席の前にいる跡部がクイッと名無しの顎を持ち上げ、次の瞬間跡部は名無しと唇を合わせた。
触れるだけの口付けかと思えば、名無しの唇を自身の舌で跡部はこじ開け舌を押し入れる。
『っ?!…ん…っ、ぁ…っ』
舌と舌とが絡み合い、突然の行為に名無しは自分が何をされているか頭が追い付かずただただ跡部にされるがままだ。
そんな名無しを跡部は愉しそうに見ながら舌を絡ませる。
舌をなぞられればビクッと名無しの身体が跳ねるが、跡部は気にせず行為を続けた。
生暖かい跡部の舌が、名無しの舌をなぞっては愉しそうに絡ませる。
が、跡部の舌がようやくお目当ての物を見つければ、跡部は奪うようにそれを自分の口内へと移す。
「…甘い…」
ゆっくりと唇が離れれば、跡部は「苺味か…」と名無しから奪った飴を口の中で転がし飴を味わう。
跡部の言う「此処にある」はどうやら名無しの口の中を指していたのだ。
その事を理解するまで数分かかってしまったが、自分が跡部に何をされたのかと理解すると名無しはガタッと音を立てて椅子から立ち上がる。
顔を真っ赤にし、まるで名無しが舐めていた苺味の飴の様に頬を真っ赤にしては間の抜けた表情で跡部を指す。
『なっ!?な、…なっ、なななっ』
「日本語で喋れ名無し、アホっぽいぞ」
『け、けけけ、け、景吾っ…今何してっ…?!』
「アーン?俺様は言葉通り名無しからお菓子を貰ったまでだぜ?」
悪びれる事もなく、跡部は妖笑を浮かべた。
跡部「Trick or Treat」と言った言葉通り、“お菓子をくれなきゃいたずらするぞ”と言った。
名無しだってそれは分かっている、分かっているのだが今の名無しはお菓子を奪われた挙句いたずらもされてしまったのだ。
お菓子をあげた…否、正確には奪われたにも関わらずその上悪戯までされてしまったら本末転倒である。
「何だ?返して欲しいのか?」
妖笑を浮かべたまま、跡部は言う。
此処でもし名無しが頷けばきっと跡部は言った言葉の通り名無しに飴を返すだろう。
先程と同じ行為を嬉々としてするに違いない。
『っつ~~~~~、いいですっ!!!』
跡部の言葉に名無しは顔を真っ赤にしながらそう叫んだ。
そんな名無しを見ながら跡部はくくくと喉を鳴らし「帰るの遅くなるんじゃねぇーぞ」と言いながら跡部は教室を出ていった。
教室に一人残された名無しはただただ、顔を真っ赤にしたまま跡部が出て行った扉の方から視線が離せなかった―――…
強奪するキャンディー
(ごめん名無しお待たせ~…ってあれ、どうしたの?顔赤いよ?)
(あ、あ、ああああ赤くないもん!!!!)
(いやいや、挙動もおかしいし絶対何かあったよね?お姉さんに話してみなさいよ~!)
(何もないです!!!!)
2024/10/19
お題提供:子猫恋様
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