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「…んっ…寒い…」
4月も中頃へと差し掛かろうとしている朝方、名無しは肌寒さを感じそっと目を開けた。
辺りはまだ薄暗く、起きるにしてはまだ早い時間帯であることが分かる。
ここ数日、名無しは肌寒さを感じなかなか寝付けなかったり今のように起きるには早すぎる時間帯に目を覚ましたりしている。
幸い、公務には今のところ何の影響もないが、このまま続くと春日局や家光に迷惑をかけてしまう事は目に見えていた。
眠ろうと思っても、布団の中は冷たく、寝返りを打っても目が冴えていく一方でしかない。
(…眠らなきゃいけないのに…眠れない…)
はぁ、っと溜息一つこぼし名無しは隣の褥で寝ている春日局の方へと視線を向けた。
規則正しく呼吸をし、いつもかけている眼鏡を外して眠っている。
あまり春日局の寝顔を見たことがなかった名無しは、思わず自分の布団から身体を起こし、春日局の眠っている傍へと音を立てないように忍んだ。
「綺麗な寝顔…」
じっと春日局の顔を覗き込みながら、名無しは静かに呟いた。
勿論その呟きに対する返事は返ってくるはずもないし望んでもいなかったが…
「綺麗等という言葉を言われてもあまり嬉しくはないのだがな、名無し」
「…お、起きていらっしゃったんですか春日局様っつ…?!」
眠っていたはずの春日局は上半身を起こし名無しへと視線を向ける。
思わず声が上ずり、驚いた表情で後ろに下がろうとする名無しの腕を掴み、春日局は自分の方へと引き寄せた。
倒れこむように布団の上に身体が傾き、名無しはすぐさま春日局へと視線を移した。
「…いつから起きていらっしゃったんですか…?」
「名無しが起きるほんの少し前くらいに目が覚めただけだ」
あまり見なれない春日局様の眼鏡を外した顔に、ついつい名無しは魅入ってしまう。
それを知ってか知らずか、春日局は「どうした名無し?」と愉しげに問いかける。
「な、何でもありませんっ…春日局様っ…」
「本当にか?」
「本当に…です!」
顔を真っ赤にしながら答える名無しに、春日局はくくっと喉を鳴らして笑った。
そんな春日局から離れようとするものの、名無しの腕は春日局によって掴まれたままだった。
「あの…春日局様…?離していただきたいのですが…」
「何故だ?」
「何故って…」
「寒くて眠れずに私の顔を見ていたのにか?」
「うっ…」
図星をつかれてしまい、名無しは口ごもる。
「貴方に公務中倒れられては私が困るからな」
そっと名無しの腰に手を回し抱き寄せて、自分の布団の中へと名無しを連れ込み抱き寄せる。
名無しは春日局の胸板に顔を埋めながら、春日局の体温をその身で感じた。
温かい春日局の体温が、名無しの冷え切った身体を包込む。
「まだ起きるには少し早い。名無しもまだ眠いなら眠ればいい」
愛おしそうに乱れた髪を手櫛で梳きながら、邪魔な髪を耳にかけ甘噛みする。
名無しは肩を揺らし、顔を真っ赤にしたまま春日局の着物の裾を握り締めた。
そんな名無しの反応を愉しみながら…
「こうして抱き締めて差し上げているのだから…眠れるだろう?」
妖笑を浮かべ、春日局は静かに名無しの耳元で囁いた。
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