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「か、春日局様、降ろしてください…!」
「騒ぐな名無し」
自室へと続く廊下を、春日局は家光の補佐役である名無しを横抱きにし早足で歩いていた。
今の時間重臣達や家光は広間にて何時ものように公務をこなしているせいか、廊下には人の姿はどこにもなかった。
横抱きにされている名無しの身体は何時もより熱く、頬もほんのり赤くなっている。
「熱があるのに無理して公務を受ける必要などないだろう」
「で、でもこれくらいなら大丈夫ですし…」
心配をかけまいと名無しは慌てて元気そうな姿を見せるものの、春日局にとってその行動は逆効果であり、一層眉間に皺を寄せる。
そもそも、名無しが大丈夫と答えようが春日局にとっては大丈夫どころではなかった。
潤んだ瞳に紅潮した頬、はたから見れば誘っているように見える。
男しかいない謁見の最中、変な気を起こして名無しに迫る輩がいるかもしれないと、春日局は気が気ではなかった。
だから家光に後を任せ、春日局は名無しを連れて途中退室した。
退室する際に、家光がにやにやと笑っているのが目に付いたが…。
そんな事を思い出しながら、自室の襖を名無しを落とさないように開け、そっと畳の上に名無しを下ろす。
「春日局様、…本当に大丈夫ですから、だから広間に戻りましょう…?」
畳の上に下ろされた名無しはやはり公務が気にかかるのか広間へ戻ろうと催促する。
「『命令』だ、大人しく此処で緒方の診療を受けるんだ」
「で、でも春日局様っ…!」
「ほお…逆らうのであれば…無理にでも寝かしつけて差し上げるが…?」
声の質が何時もより低くなり、春日局は見下すように名無しを見下ろす。
見下ろされた刹那、ぞくりっと、背中に悪寒を感じ名無しは思わず肩をびくつかせた。
こうなった春日局に逆らうとどうなるか…名無しは嫌というほどその身体に教えられているのだから…。
「……大人しく寝ています…」
「懸命な判断だな、名無し」
名無しの返事に満足したのか、唇の端を上げ笑った。
勿論俯いていた名無しにはそんな春日局の表情は見えなかったが…。
俯いている名無しの額の口づけを落とし、春日局は緒方を呼びに自室を後にした。
タイトル提供:確かに恋だった様
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