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※絆END後のお話(ネタバレ)
「ごめん稲葉、遅くなっちゃった…」
勢い良く葵の間の襖を開け、名無しは息を整えながら辺りを見渡した。
見渡してみると座布団の上で正座をし、微笑を浮かべた稲葉が「大丈夫ですよ、名無し様」っと、言って名無しの傍へと歩み寄る。
稲葉の微笑みを見ると、先程まで疲れきっていた名無しの表情が段々と笑へと代わり、思わず稲葉に抱きついた。
急に抱きついた名無しに「名無し様っ?!」と驚き、顔を真っ赤にしながらも、そっと名無しの腰に腕を回し抱き寄せた。
ぎゅっと強く抱きしめ首筋に顔を埋めれば、甘い名無しの匂いが稲葉の鼻孔をくすぐる。
(久しぶりだな…稲葉に抱きしめられるの…)
(…久しぶり、ですね。名無し様をこうして抱きしめるのは…)
布越しに互いの体温を感じながら、二人の間に時が流れる。
ここ数週間名無しは謁見や書簡に追われ、休む間もなく公務をこなしていた。
世話役だった頃は公務が忙しくてもずっと傍に居る事は出来たが…大奥入りしてからはそうはいかず、二人の会える時間は極度に減ってしまった。
今だってこうして抱き締めあうのも数週間ぶりのことになる。
会えなかった日々の時間を埋めるかのように、強くお互いを抱きしめ合った。
一刻ほど、二人は無言のまま抱きしめ合っていたがつい力が入りすぎて苦しくなったのか、名無しは「い、稲葉苦しいよっ…」っとか細い声で呟いた。
慌てて稲葉は抱きしめていた腕の力を緩め、名無しに申し訳ないといわんばかりの表情を向ける。
「も、申し訳ありません、名無し様…」
「…ううん、気にしないで、稲葉」
稲葉の腕から解放された名無しはくすり、と笑いながら稲葉の方へ視線を向けた。
ふと稲葉の顔を見て、ある事を思い出しぐっと顔を稲葉に近づける。
近づけられた稲葉は驚きつつ「どうかなさいましたか?」と問う。
「あ、あのね、稲葉。お願いがあるんだけど…」
「お願い…ですか?私に出来ることであれば何でもいたしますよ」
にこっと微笑を浮かべた稲葉に、名無しは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「あのね、お願いはその…稲葉の名前呼んでもいい?」
「構いませんが…そのようなことでいいんですか名無し様?」
「…うん」
稲葉の承諾を得ると、名無しは後ろに向き、稲葉に寄りかかるように稲葉の胸板に身体を預ける。
稲葉は寄りかかる名無しを、後ろからそっと抱きしめた。
温かい稲葉の体温に包まれて、少し頬を赤らめつつも小さな声で「…稲葉」っと先ほどお願いした通り稲葉の名を呼んだ。
ただ名を呼ばれただけ、それだけのはずなのに―――…不思議と胸に内が暖かくなっていく。
もっと自分の名を、言の葉にして紡いで欲しいと…。
稲葉自身気づいていないが、その頬も緩み、赤みを帯びていた。
「はい、名無し様」
名無しの呼びかけに返すかのように、稲葉も同じように名無しの名を呼ぶ。
その声色を聞き、名無しも稲葉と同じように…もっと名を呼ばれたい、もっと声を聞いていたい…と言う想いが次から次へと溢れ出す。
数週間ぶりの稲葉の声はとても心地よく、名無しの心に溶けわたっていく。
「…稲葉」
「名無し様」
「稲葉」
「名無し様」
ただ名を呼び合う、それだけのはずなのに名無しも稲葉も嬉しさがこみ上げ、お互いを愛しく思う。
「稲葉」
「名無しっ…」
「稲葉…好き…だよっ」
「…っつ、不意打ちはいけませんよ、名無し様っつ…」
不意に告げられた言葉に、稲葉は赤面しつつ、後ろから抱きしめていた名無しを自分の方へと向かせ、そっと触れるだけの口づけを落とした。
急に口づけられた名無しは顔をいちごのように赤く染め、目を瞬かせながら瞳に稲葉の姿を映していた。
何処か悪戯に成功した嬉しそうな表情で「先ほどの仕返しです、名無し様」と微笑んだ。
「ごめん稲葉、遅くなっちゃった…」
勢い良く葵の間の襖を開け、名無しは息を整えながら辺りを見渡した。
見渡してみると座布団の上で正座をし、微笑を浮かべた稲葉が「大丈夫ですよ、名無し様」っと、言って名無しの傍へと歩み寄る。
稲葉の微笑みを見ると、先程まで疲れきっていた名無しの表情が段々と笑へと代わり、思わず稲葉に抱きついた。
急に抱きついた名無しに「名無し様っ?!」と驚き、顔を真っ赤にしながらも、そっと名無しの腰に腕を回し抱き寄せた。
ぎゅっと強く抱きしめ首筋に顔を埋めれば、甘い名無しの匂いが稲葉の鼻孔をくすぐる。
(久しぶりだな…稲葉に抱きしめられるの…)
(…久しぶり、ですね。名無し様をこうして抱きしめるのは…)
布越しに互いの体温を感じながら、二人の間に時が流れる。
ここ数週間名無しは謁見や書簡に追われ、休む間もなく公務をこなしていた。
世話役だった頃は公務が忙しくてもずっと傍に居る事は出来たが…大奥入りしてからはそうはいかず、二人の会える時間は極度に減ってしまった。
今だってこうして抱き締めあうのも数週間ぶりのことになる。
会えなかった日々の時間を埋めるかのように、強くお互いを抱きしめ合った。
一刻ほど、二人は無言のまま抱きしめ合っていたがつい力が入りすぎて苦しくなったのか、名無しは「い、稲葉苦しいよっ…」っとか細い声で呟いた。
慌てて稲葉は抱きしめていた腕の力を緩め、名無しに申し訳ないといわんばかりの表情を向ける。
「も、申し訳ありません、名無し様…」
「…ううん、気にしないで、稲葉」
稲葉の腕から解放された名無しはくすり、と笑いながら稲葉の方へ視線を向けた。
ふと稲葉の顔を見て、ある事を思い出しぐっと顔を稲葉に近づける。
近づけられた稲葉は驚きつつ「どうかなさいましたか?」と問う。
「あ、あのね、稲葉。お願いがあるんだけど…」
「お願い…ですか?私に出来ることであれば何でもいたしますよ」
にこっと微笑を浮かべた稲葉に、名無しは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「あのね、お願いはその…稲葉の名前呼んでもいい?」
「構いませんが…そのようなことでいいんですか名無し様?」
「…うん」
稲葉の承諾を得ると、名無しは後ろに向き、稲葉に寄りかかるように稲葉の胸板に身体を預ける。
稲葉は寄りかかる名無しを、後ろからそっと抱きしめた。
温かい稲葉の体温に包まれて、少し頬を赤らめつつも小さな声で「…稲葉」っと先ほどお願いした通り稲葉の名を呼んだ。
ただ名を呼ばれただけ、それだけのはずなのに―――…不思議と胸に内が暖かくなっていく。
もっと自分の名を、言の葉にして紡いで欲しいと…。
稲葉自身気づいていないが、その頬も緩み、赤みを帯びていた。
「はい、名無し様」
名無しの呼びかけに返すかのように、稲葉も同じように名無しの名を呼ぶ。
その声色を聞き、名無しも稲葉と同じように…もっと名を呼ばれたい、もっと声を聞いていたい…と言う想いが次から次へと溢れ出す。
数週間ぶりの稲葉の声はとても心地よく、名無しの心に溶けわたっていく。
「…稲葉」
「名無し様」
「稲葉」
「名無し様」
ただ名を呼び合う、それだけのはずなのに名無しも稲葉も嬉しさがこみ上げ、お互いを愛しく思う。
「稲葉」
「名無しっ…」
「稲葉…好き…だよっ」
「…っつ、不意打ちはいけませんよ、名無し様っつ…」
不意に告げられた言葉に、稲葉は赤面しつつ、後ろから抱きしめていた名無しを自分の方へと向かせ、そっと触れるだけの口づけを落とした。
急に口づけられた名無しは顔をいちごのように赤く染め、目を瞬かせながら瞳に稲葉の姿を映していた。
何処か悪戯に成功した嬉しそうな表情で「先ほどの仕返しです、名無し様」と微笑んだ。
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