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「本当によろしかったんですか…春日局様?」
「ああ…どうせ私たちが居なくても盛り上がっているようだしな」
星が瞬く夜空の下。
春日局はそう言って名無しを抱き寄せた。
名無しの手の中には酒瓶と杯が一つ握られていた。
先程まで名無しと春日局は、家光が突然言いだした花見に付き合っていた。
だが何処からその花見の話を聞き付けたのか、重臣達や大奥の人間も急遽参加することになり花見は宴へと変わっていった。
勿論、家光が言いだした花見はただ酒を飲む口実が欲しかっただけであり、花を愛でる気などさらさらなかった。
それを物語るように家光は酒ばかり飲み、何人もの大奥の者を酔い潰していた。
酒が強い者は未だ家光に挑み、酔ってしまった者は泣いたり愚痴をこぼしたりと我を忘れ絡んでくる者が居た。
それを見た春日局は酔った者共に絡まれぬようにと名無しを連れて、この天守へと逃げてきたのだ。
「でもまさか春日局様があの場を離れるなんて…思いもしませんでしたよ?」
「あの場には稲葉もお万の君も居るたからな…私がいなくても大丈夫だと判断したまでだ。それに…酔った勢いで名無しに近づいてくる者も中にはいるからな…」
酒を杯に注いでいた名無しが春日局の方へと顔を向けると、妖笑を浮かべて名無しの事を見ていた。
ほんの少し花見の場で春日局も酒を飲んでいたせいか、その笑みが艶めかしく、名無しの頬は思わず色づく。
色づいた頬を隠すかのように名無しは俯き、先ほど酒を注いだ杯を春日局の前に差し出す。
「あ、あの春日局様…どうぞ」
「ああ」
名無しが注いだ酒が入っている杯を受け取り、春日局は一口酒を飲む。
先ほど宴の場で飲んだものとは違い、ほんのりと甘い味が春日局の口に広がる。
普段あまり甘い味を好まない春日局にも飲みやすいものだった。
「悪くはないな。名無しも飲んでみたらどうだ?」
「私もですか?…お酒はあまり強くはないのですが…」
「安心しろ、名無しが酔ってしまっても私が責任をもって介抱してさしあげよう」
春日局はそう言って、名無しの腰を抱き寄せて杯を名無しの口元まで持っていく。
名無しはためらったものの、春日局には逆らえず「でしたら…一口だけいただきます…」と言って杯に口を付ける。
名無しの行動に満足そうに春日局は笑みを浮かべ、ほんの少し杯を傾ける。
一口酒を喉に通し、「…美味しいです」と、目をとろんとさせて先程から色づいている頬がさらに色づく。
「春日局様…」
「もう一口飲むか?」
「…いえ…お酒より…春日局様が欲しいです…」
そう言うと名無しは首を横に振り顔を春日局に近づかせ、ちゅっ…と、音を立てて口づけをする。
自然と首に腕を回し、潤んだ瞳で春日局を覗き込んだ。
名無しの行動に思わず息を飲むものの、こぼれない様に杯を側に置き、春日局も同じように口づけをし返した。
触れるだけの口づけではなく、舌を入れ、舌と舌とを絡ませて口内を犯す。
「んんっ…っ……」
くちゅっ…と淫らな音を立てながら、唇を離す。
名残惜しそうに唇を離された名無しは春日局の着物にしがみつき、息を整えようと身体を預ける。
そっと名無しの髪を梳きながら、春日局は目を細めた。
「酔っているのか…名無し?」
「……酔ってなんかいません…」
「本当にか?」
「……本当に…ですよ、春日局様…」
「なら、先ほどの言葉をもう一度私に言え、名無し」
声の質を少し落とし、命令するかのように名無しの耳元で囁くと、びくりと肩を揺らす。
今までに聞いたことのない声に怖いと思う反面、何処か期待してしまい、名無しの身体は自然と熱を帯び疼く。
「春日局様が、…欲しいです…お酒より、私は春日局様が欲しいです…」
「その言葉、しかと聞いたからな」
名無しの言葉を聞くと同時に春日局は荒々しく口づけをし、その場に名無しを押し倒した。
押し倒した弾みに、名無しの着物に着いていた桜の花弁はひらひらと舞いながら、側に置いてあった杯の上へと落ち、ゆらゆらと月の光に照らされながら揺れていた。
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