※現パロ


土曜日のまだ朝早い時間帯。
がたん、がたんと音を立てる電車に揺られながら、鷹司と名無しは学校指定の制服を着て座席に座っていた。
名無し達の学校が進学校のためか、普通の学生が休みである土曜日も半日ではあるが登校しなければならない。
電車内は土曜日であるせいか空いており、時たまにしか座れない名無しもこの日ばかりはゆっくりと電車内での時間を過ごしていたのだが…

「………」
「………」

名無しと鷹司の間には会話はなく、名無しは白色のスマートフォンでTwitterを開きフォローしている家光と楽しそうにTwitterでの会話をしていた。
昨日の番組で何が面白かっただの、今日の授業はやる気が起きない等…学校に行けば話せるような会話を、名無しと家光はTwitterでしていたのだ。
クラスが同じである上に名無しの隣の席でもある家光。
それに比べ鷹司は名無しと同じクラスでもなく選択授業でも同じクラスになる事はなかった。
鷹司が名無しと一緒に居られる時間といえば、この朝の通学時間と部活での休憩時間、帰りの時間くらいだろう。

(はぁ…何で俺と居る時に家光なんかと話してんだよ…)

内心ため息をつきながら楽しそうに文字を入力する名無しの方へと目を向けた。
何時もならこの時間帯は鷹司とたわいない会話をしているはずだった。
平日は電車内が混んでいるのもあり名無しをぎゅっと抱き寄せて会話をすることが多く、土曜日は座ったた、のんびりと会話をいつもならしているのだが…

(家光のやろう…後で覚えとけよ…俺の名無しを独占しやがって…)

家光のことを考えるとイライラと腸が煮えくり返る上に「ははは、ざまあみろ鷹司」とでも言わんばかりに高笑いしている家光のの幻聴が頭の中に思い浮かぶ。

「なぁ…」
「うん?どうかしたの鷹司?…ちょっと待ってて…」

何時もの名無しならどんなに話が弾んでいても鷹司の方へ目を向け首を傾げ問うのだが…鷹司の方を見ずに液晶画面に触れながら答えた。
そんな名無しにイラついた鷹司は千影の手からスマートフォンを奪い、自分のポケットへと名無しのスマートフォンを隠した。

「あ、鷹司私のスマホ返してよ」

スマートフォンを取られてしまった名無しはばっと鷹司の方へと顔を向けた。
電車内に入って初めてまともに見る名無しの顔。
名無しの顔を見ると思わず素直にスマートフォンを差し出しそうになってしまったが、そこはグッと堪える。

「嫌に決まってるだろ…俺が隣にいるのに何で家光ばっかに構ってんだよ」
「だ、だって…」
「だってじゃねえよ…俺がお前の隣に居るんだから俺にだけ構えよ…っつ、ばか名無しっつ」

行き場をなくしていた名無しの手を取り、ぎゅっと握りながら、鷹司は窓の外へと顔を逸らした。

「で、電車内だよ?」
「知るかよ…んな事…」

手を握られた名無しは思わず頬を赤く染め鷹司の顔を覗き込もうとするものの、鷹司の顔を見ることはできなかった。
ただ名無しからは見えなかったが、窓ガラスに映る鷹司の頬はほんのり赤く染まっていた―――…