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「名無し」
「ユアン?」
冬の寒さが増し始めた11月下旬。
辺りはすっかり闇夜に染まり、街灯のほのかな光がちらほらと灯っている。
何時ものようにティーサロン『ブルーベル』での仕事を終え、帰ろうとしていた名無しの前には恋人であるユアンの姿があった。
恋人と言っても、お互いの仕事が忙しく毎日会っているわけではない。
まして名無しは偽りとは言えリングランド二大貴族のうちのクロムウェル家の人間であり、ユアンはもう片方の貴族、ブラッドレイ家の人間だ。
対立している家柄の人間がそう頻繁に会えるわけでもなく、誰にも知られてはならない秘密の関係。
めったに会える事のないユアンが何故こんな所にいるのだろう?と思う反面、久々に見た彼の姿に名無しの胸は高鳴る。
「どうしてユアンが此処に?」
「名無しのことが心配だったから」
いつもと同じように表情をくずさずに、ユアンは淡々と名無しの問いに答える。
だが何が“心配”だったのか分からず、名無しは首を傾げた。
「…最近、名無しが帰り道に通ってる道に変質者が出るから…名無しのことが心配で迎えに来た」
「変質者?」
「そう、冬先はよく出るってアレクが言ってたから」
ユアンの言葉にレネはふと『ブルーベル』の常連であるノエルの言葉を思い出した。
数日前、ノエルに紅茶のおかわりを淹れている時に、「最近この辺りで変質者がうろついているみたいだから、暗くなるうちに帰ったほうがいいよ。名無しちゃんみたいに可愛い子はすぐ狙われちゃうからね」と、忠告を受けていた。
だがノエルにそう言われたものの、ここ数日いつもより遅い時間帯に帰っているが変質者に出くわしていなかったため、その忠告を名無しはすっかり忘れていた。
そんな名無しに対し、ユアンは自分の手を名無しに差し出した。
「ユアン?」
差し出された手の意味が分からずに、きょとんとした表情で名無しはユアンを見つめる。
「…送ってく」
「送ってくれるの?」
「そのために待ってたから…それとも名無しは俺に送られるのは嫌?」
「嫌じゃないよ、ユアン。寧ろユアンと一緒に居れて嬉しい」
名無しは差し出されたユアンの手にそっと自分の手を重ねた。
お題サイト:ひよこ屋様
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