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「あ…」
「どうかしたか、名無し?」
まだほんの少し肌寒い3月の終わり。
夕餉の最中名無しはある事を思いだし、煮物を摘む箸を止めた。
一緒に夕餉を食べていた日向は名無しの呟きに不思議そうな表情で視線を向けた。
「いえ、ちょっと緒形さんの所に行くのを忘れていて」
「緒形のところに…?どこか具合でも悪いのか?」
「はい。実は今朝から体調が優れなくて緒形さんに薬をお願いしていたんですけど、取りに行くのを忘れてしまってたんです」
苦笑する名無しに、日向は「今は大丈夫か?」と心配し駆け寄り、そっと名無しの頬に両手を添え、自分の額と名無しの額を重ねた。
重ねられた額は日向よりも名無しの方がほんの少し熱い事が感じられる。
「少し熱いな…」
真剣な表情でぽつりと日向が呟く。
それに対し、間近に見える日向の顔に思わず名無しの顔は赤く色づいていく。
「あのっ…」
「ん…どうかしたか?」
「…ち、近いです、日向様っつ」
「あ…すまない、こうした方が早いと思ってな…」
そっと日向が額を離すと、先ほど自分がとった行動に日向は照れくさそうにまた謝る。
「すまない…」
「いえ、そのっ…嬉しかったですし…。あ、今から緒形さんのところに薬を貰いに行って来ますね」
いたたまれない気持ちになり、名無しは立ち上がり薬を取りに行こうとするが、腕を日向が掴んだ。
思わずきょとんとした表情で名無しは首を傾げた。
「日向…様?」
「薬なら、俺が貰いに行ってくる」
「で、でも日向様に迷惑がかかってしまいますし…」
「迷惑だなんて思わない。寧ろお前の役に立てるなら本望だ」
日向は名無しを座らせて立ち上がり、くしゃっとひと撫で名無しの頭を撫でる。
「だから俺に行かせてくれ」
何時もの日向の微笑みを向けられた名無しの胸はとくんっ、と高鳴り、顔を赤く染めたまま、ただ頷くことしかできなかった。
丁度一刻が過ぎた頃、日向がゆっくりと襖を開け薬が入ってるであろう薬包紙を持って戻ってきた。
襖の前で何やら難しい表情をし、そこから動こうとしない。
名無しは不思議に思い、「日向様?」と一度名前を読んでみたものの、それに対する返事は帰ってこなかった。
「あの…日向様?」
「あ…ああ、緒形から貰ってきた」
はっと我に返った日向は慌てて名無しの傍へと歩き、腰を落とす。
部屋に戻ってきた時の難しそうな表情から、今度は頬を赤く染め、落ち着かないのか一向に名無しと視線を合わせようとしない。
(緒形さんと何かあったのかな…?)
名無しはふとそんな事を考えながら日向の事を凝視する。
「どうかなさいましたか?」
「な、何でもない…所で名無し」
どもりながら、日向は閉ざしていた口を開き言葉を紡ぐ。
「はい?」
「名無しは…薬はやっぱり苦手か…?」
「苦手といえば苦手ですね、やっぱり苦いです…飲みなれていませんからね」
「…そうか」
「日向様?」
「少しの間目を閉じていてくれないか、名無し」
「え、あ…分かりました」
日向に言われるがまま、名無しは目を閉じる。
それを確認すると、日向は先ほど緒方から貰って来た薬包紙を開き、湯呑の中へと粉薬を入れ、匙で粉薬が溶けるようにかき混ぜる。
混ぜ終えると日向はほんの少し湯呑の中のものを口の中に含み、名無しの顎を少し上に向け、そっと日向は唇を押し付ける。
「ん…っ…」
思わず名無しは目を開けると日向の顔が視界いっぱいに広がる。
日向の名前を呼ぶにも唇は塞がれていて、名前を呼ぶことは出来ず、ただ日向の着物の裾に縋る事しかできない。
唇を日向の舌で開けられ、少しずつ口の中に粉薬が混ざった白湯が流れ込む。
「んんっ…あ…っ…」
舌と舌とが絡み合い、つーっと口の端から粉薬の混ざった白湯が溢れ出る。
それでも溢れ出なかった、喉を粉薬の混ざった白湯が喉を通り、そっと日向の顔が名無しから離れた。
すると先ほどのように残りの粉薬が混ざった白湯を口に含み、また唇を押し付けられた。
息をする間もなく、朦朧とする意識の中、移りゆく水音と名無しの漏らす甘い声だけが部屋の中に響く。
何度も繰り返し口移しされているうちに、思わず倒れそうになる名無しを日向が抱き寄せた。
「ひゅ、日向様…っつ」
「あー…緒形が名無しはこの薬は凄く苦いと言って飲めないかもしれないと言っていたからこうして飲ませたのだが……嫌、だったか?」
頬を赤く染めたまま、日向は照れくさそうに目を逸らす。
「いえ…嫌ではありませんけど…」
「けど…?…もしかして苦かったか?」
また心配層に名無しの顔を覗き込む日向の顔が名無しの視界いっぱいに映り込む。
その刹那、先ほどの口移しを思い出してしまい、名無しは赤く染まった頬を見られないように「…苦く…なかったです」とうつむきながら伝えるので精一杯だった。
「どうかしたか、名無し?」
まだほんの少し肌寒い3月の終わり。
夕餉の最中名無しはある事を思いだし、煮物を摘む箸を止めた。
一緒に夕餉を食べていた日向は名無しの呟きに不思議そうな表情で視線を向けた。
「いえ、ちょっと緒形さんの所に行くのを忘れていて」
「緒形のところに…?どこか具合でも悪いのか?」
「はい。実は今朝から体調が優れなくて緒形さんに薬をお願いしていたんですけど、取りに行くのを忘れてしまってたんです」
苦笑する名無しに、日向は「今は大丈夫か?」と心配し駆け寄り、そっと名無しの頬に両手を添え、自分の額と名無しの額を重ねた。
重ねられた額は日向よりも名無しの方がほんの少し熱い事が感じられる。
「少し熱いな…」
真剣な表情でぽつりと日向が呟く。
それに対し、間近に見える日向の顔に思わず名無しの顔は赤く色づいていく。
「あのっ…」
「ん…どうかしたか?」
「…ち、近いです、日向様っつ」
「あ…すまない、こうした方が早いと思ってな…」
そっと日向が額を離すと、先ほど自分がとった行動に日向は照れくさそうにまた謝る。
「すまない…」
「いえ、そのっ…嬉しかったですし…。あ、今から緒形さんのところに薬を貰いに行って来ますね」
いたたまれない気持ちになり、名無しは立ち上がり薬を取りに行こうとするが、腕を日向が掴んだ。
思わずきょとんとした表情で名無しは首を傾げた。
「日向…様?」
「薬なら、俺が貰いに行ってくる」
「で、でも日向様に迷惑がかかってしまいますし…」
「迷惑だなんて思わない。寧ろお前の役に立てるなら本望だ」
日向は名無しを座らせて立ち上がり、くしゃっとひと撫で名無しの頭を撫でる。
「だから俺に行かせてくれ」
何時もの日向の微笑みを向けられた名無しの胸はとくんっ、と高鳴り、顔を赤く染めたまま、ただ頷くことしかできなかった。
丁度一刻が過ぎた頃、日向がゆっくりと襖を開け薬が入ってるであろう薬包紙を持って戻ってきた。
襖の前で何やら難しい表情をし、そこから動こうとしない。
名無しは不思議に思い、「日向様?」と一度名前を読んでみたものの、それに対する返事は帰ってこなかった。
「あの…日向様?」
「あ…ああ、緒形から貰ってきた」
はっと我に返った日向は慌てて名無しの傍へと歩き、腰を落とす。
部屋に戻ってきた時の難しそうな表情から、今度は頬を赤く染め、落ち着かないのか一向に名無しと視線を合わせようとしない。
(緒形さんと何かあったのかな…?)
名無しはふとそんな事を考えながら日向の事を凝視する。
「どうかなさいましたか?」
「な、何でもない…所で名無し」
どもりながら、日向は閉ざしていた口を開き言葉を紡ぐ。
「はい?」
「名無しは…薬はやっぱり苦手か…?」
「苦手といえば苦手ですね、やっぱり苦いです…飲みなれていませんからね」
「…そうか」
「日向様?」
「少しの間目を閉じていてくれないか、名無し」
「え、あ…分かりました」
日向に言われるがまま、名無しは目を閉じる。
それを確認すると、日向は先ほど緒方から貰って来た薬包紙を開き、湯呑の中へと粉薬を入れ、匙で粉薬が溶けるようにかき混ぜる。
混ぜ終えると日向はほんの少し湯呑の中のものを口の中に含み、名無しの顎を少し上に向け、そっと日向は唇を押し付ける。
「ん…っ…」
思わず名無しは目を開けると日向の顔が視界いっぱいに広がる。
日向の名前を呼ぶにも唇は塞がれていて、名前を呼ぶことは出来ず、ただ日向の着物の裾に縋る事しかできない。
唇を日向の舌で開けられ、少しずつ口の中に粉薬が混ざった白湯が流れ込む。
「んんっ…あ…っ…」
舌と舌とが絡み合い、つーっと口の端から粉薬の混ざった白湯が溢れ出る。
それでも溢れ出なかった、喉を粉薬の混ざった白湯が喉を通り、そっと日向の顔が名無しから離れた。
すると先ほどのように残りの粉薬が混ざった白湯を口に含み、また唇を押し付けられた。
息をする間もなく、朦朧とする意識の中、移りゆく水音と名無しの漏らす甘い声だけが部屋の中に響く。
何度も繰り返し口移しされているうちに、思わず倒れそうになる名無しを日向が抱き寄せた。
「ひゅ、日向様…っつ」
「あー…緒形が名無しはこの薬は凄く苦いと言って飲めないかもしれないと言っていたからこうして飲ませたのだが……嫌、だったか?」
頬を赤く染めたまま、日向は照れくさそうに目を逸らす。
「いえ…嫌ではありませんけど…」
「けど…?…もしかして苦かったか?」
また心配層に名無しの顔を覗き込む日向の顔が名無しの視界いっぱいに映り込む。
その刹那、先ほどの口移しを思い出してしまい、名無しは赤く染まった頬を見られないように「…苦く…なかったです」とうつむきながら伝えるので精一杯だった。
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